質問通告書はどこまで書く?答弁の質が変わる書き方の実例
通告を出して三日後の、本会議の朝。
自分の番が来て、一問目を読み上げる。執行部から答弁が返ってくる。
……その答弁が、自分の通告文とほぼ同じ順番で、同じ論点を隙間なく埋めるように組み上がっている。
用意してきた再質問を出そうとしても、もう先回りして答えられている。手元の原稿と持ち時間だけが、静かに減っていく。
席に戻りながら、「今日も、読み合わせで終わったな」と思ったこと。ありませんか。
細かく書けば朗読会、粗く書けば空振り
逆のパターンもあります。
前回が朗読会だったから、今度こそ議場でやり取りしようと、通告をわざとざっくり書く。
「本市の子育て支援について」
すると議場で返ってきたのは、「議員御指摘の点につきましては、現在さまざまな観点から検討しているところでございます」。
何も引き出せないまま、座る。
細かく書けば、執行部が答弁原稿を整えやすくなり、こちらが何を聞いても読み上げを聞く展開になりやすい。
粗く書けば、「その趣旨では」「手元に資料を持ち合わせておりません」とかわされる。
この二つの間で、毎議会「どこまで書けばいいのか」を手探りしている方は少なくないはずです。
通告を書く夜のことも、たぶん似ています。
Wordの前で、同じ段落を書いては消す。
「ここまで書いたら、手の内を全部見せることにならないか」
かと思えば、
「でも、これだけだと趣旨が伝わらないんじゃないか」
一時間かけて、結局どこを削ったのかも曖昧なまま、締切に押されて送信する。
ベテランに「どのくらい書くものですか」と聞いても、返ってくるのは「まあ、感覚だな」。
その感覚が、こちらには一番ほしいのに。
本当の問題は、文章力ではない
ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。
通告がうまく書けないのは、あなたの文章力の問題ではありません。
「通告に何を書き、何を議場に残すのか」
その線引きの基準を、誰も教えてくれなかっただけです。
多くの議会には、質問通告書や発言通告書の様式があります。件名を書く欄、質問要旨を書く欄、答弁者を書く欄などです。
ただし、「どの程度まで具体的に書くのか」について、全国共通のルールがあるわけではありません。具体的な記載方法を申合せで定めている議会もあれば、議員ごとの判断に委ねられている議会もあります。
そのため、何度も質問を重ねながら、自分の議会に合う粒度をつかんでいくことになります。中堅になっても迷うのは、むしろ自然なことです。
本当の問題は、単純な「書きすぎか、書かなすぎか」ではありません。
通告の中身を、
執行部に準備してもらう情報
議場で答弁を受けて深掘りする部分
に切り分けられていないことです。
この二つが混ざったまま書くと、すべての展開を先に見せてしまうか、必要な情報まで伏せてしまうかの両極端になりやすくなります。
覚えておきたい目安は、次の一文です。
論点と、答弁してほしい範囲は具体的に。再質問の筋書きは、書き込みすぎない。
聞きたいことの入り口は明確にする。
一方で、想定答弁への反論や、二問目、三問目でどう展開するかまでは、通告書にすべて書かない。
これだけでも、朗読会にも空振りにもなりにくくなります。
ただし、具体的な制度の導入や予算化について、正面から見解を問いたい場合は別です。
「〇〇制度を導入すべきと考えるが、市の見解を問う」
という質問であれば、提案内容を通告に明示する必要があります。
隠すべきなのは提案そのものではありません。答弁を予想したうえで用意している反論や、再質問の全展開です。
その前に、たたき台づくりがしんどい方へ
具体的な型は、このあと紹介します。
その前に一つだけ。
「線引きは分かった。でも、ゼロから通告文を起こすのが毎回しんどい」という方へ。
私たちが作っているセンタイは、地方議員の日々の活動を一つにまとめるクラウドの仕事場です。
過去の住民相談や自治体の計画資料などをもとに、政策案や一般質問のたたき台をAIで下書きする機能があります。
ただし、AIが出すのはあくまで下書きです。
どこまで通告に書き、どこからを議場でのやり取りに残すのか。最後の調整は、この記事の基準を持った議員自身の仕事になります。
むしろ、たたき台が目の前にあるほうが、
「ここは結論まで書きすぎている」
「この数字は出典が足りない」
「何を答えてほしいのかが曖昧だ」
と判断しやすくなります。
白紙から悩むより、たたき台を削り、整えるほうが速いのです。
通告は「件名・要旨・質問項目」の3層で整理する
ここからは、道具を使わなくても今日から実践できる書き方です。
正式な様式や欄の名称は議会によって異なりますが、通告文を考えるときは、次の3層に分けると整理しやすくなります。

たとえば、次のような形です。
【件名】
本市の学童保育の待機児童対策について
【要旨】
直近の利用申込状況と待機児童の発生状況を踏まえ、特に待機が集中している地域における需要の把握方法と、今後の受入れ体制の考え方を問う。
【質問項目】
地域別・学年別の利用申込数と待機児童数
将来需要を見込む際に用いている指標
施設、定員、送迎などの課題に対する今後の方針
質問項目は、まず三つ程度に整理してみると、全体像が見えやすくなります。
ただし、三つという数はルールではありません。質問方式、持ち時間、再質問の回数、答弁時間の扱いに合わせて調整してください。
通告に書くもの、書き込みすぎないもの
通告に入れたいのは、執行部が答弁を準備するために必要な情報です。
一方、すべての議論の展開を書く必要はありません。

大切なのは、「結論を書かないこと」ではありません。
執行部に何を答えてほしいのかは書く。答弁を受けて、どう切り返すかは書き込みすぎない。
この線引きです。
実例で見る「粗い・書き込みすぎ・ちょうどいい」
テーマを「通学路の安全対策」として、三つの例を比べてみます。
粗い通告
通学路の安全対策について
これだけでは、対象となる学校や場所、期間、問題意識、求めている答弁が分かりません。
執行部としては広い範囲を一般論で答えるしかなく、
「関係機関と連携し、適切に対応してまいります」
という答弁で終わる可能性があります。
展開まで書き込みすぎた通告
〇〇小学校東門前の横断歩道は塗装が薄くなっており、昨年度には接触事故が一件発生している。市は今年度中に横断歩道を再塗装し、ガードレールを設置するとともに、登下校時の見守り員を二名配置すべきと考えるが、見解を問う。
具体性はあります。
一方で、再塗装、ガードレール、見守り員という三つの対策と、実施時期、人数まで一度に示しています。
この三つの採否を最初から正面に据えて問うことが目的なら、この書き方でも問題ありません。
ただ、現状認識や優先順位の考え方を確認したうえで、議場で具体策を提案したいのであれば、展開を先まで書き込みすぎています。
執行部は、
再塗装は予定している
ガードレールは構造上または予算上難しい
見守り員は今後検討する
という答弁を、最初から用意できます。
答弁後に何を深掘りするかという余白が、ほとんど残りません。
議場での余白を残した通告
【件名】
通学路の安全対策について
【要旨】
市内小学校の通学路のうち、過去三年度に事故、ヒヤリハットまたは危険箇所の報告があった場所について、市の把握状況、対策の優先順位および今年度の対応方針を問う。特に、〇〇小学校東門前の安全対策を取り上げる。
【質問項目】
過去三年度に報告された事故、ヒヤリハットおよび危険箇所の把握状況
危険箇所への対策の優先順位を決める基準
〇〇小学校東門前を含む、今年度の点検・改修予定
この通告では、対象期間、確認したい情報、具体的に取り上げる場所を示しています。
一方で、最終的にどの対策を求めるのかまでは固定していません。
そのため、議場では答弁を受けて、
東門前は、現在の優先順位で何番目に位置づけられているのか
事故件数だけでなく、児童数や交通量を判断材料に入れているのか
再塗装だけでは不十分な場合、どの機関と協議するのか
今年度中に実施できる対策はどこまでか
と踏み込めます。
なお、特定の場所を中心に質問する予定なら、その場所は通告の段階で示しておくほうが安全です。
通告では市全体の話しかしていないのに、本番で突然、一つの施設や地点に絞ると、議会によっては通告範囲との関係が問題になることがあります。
根拠データは、出典・時点・定義までそろえる
数字を質問に使うなら、通告にも一定程度示しておくことをおすすめします。
特に、執行部に数値での答弁を求める場合は、
何年度の数字か
どの資料の数字か
何を一件と数えているのか
全市の合計か、特定地域の数字か
まで示すと、答弁の前提がそろいやすくなります。
たとえば、
令和7年度の通学路合同点検で危険箇所とされた地点について、その後の対応状況を問う。
よりも、
令和7年度通学路合同点検の公表資料に掲載された危険箇所について、対策済み、対応中、未対応の件数と、未対応箇所の今後の予定を問う。
のほうが、何を答えてほしいのかが明確です。
ただし、数字を載せたからといって、必ず同じ認識で答弁が返ってくるとは限りません。
集計方法が違う、基準日が違う、担当課がその区分では集計していない、ということもあります。
だからこそ、数字には次の三つを添えます。
出典:決算資料、計画書、監査報告、国や自治体の統計など
時点:年度、基準日、集計期間
定義:「相談件数」「待機児童」「危険箇所」などの数え方
数字が食い違った場合にも、
「どちらが正しいか」
だけで終わらず、
「市はどの定義で把握しているのか」
という次の論点につなげられます。
提出前に確認したい6項目
通告書を書き終えたら、提出前に次の六つを確認してみてください。
第三者が読んでも、「何を」「なぜ」聞くのか分かるか
対象となる地域、施設、世代、期間が絞れているか
数字の出典、時点、定義を説明できるか
現状、評価、判断基準、方針など、何を答えてほしいか明確か
持ち時間の中で、すべての項目を扱えるか
自分の議会の会議規則、申合せ、様式に合っているか
特に見落としやすいのが、「何を答えてほしいか」です。
背景説明が長くても、最後に何を聞いているのか分からなければ、噛み合う答弁は得にくくなります。
背景を一度隠して、質問文だけを読んでみる。
それでも答弁してほしい内容が分かるか。
この確認だけでも、通告の精度は上がります。
最後に、議会事務局へ一本確認を
ここまで紹介したのは、あくまで一般的な整理方法です。
実際の扱いは、各議会の会議規則、議会運営上の申合せ、質問方式、議長の運用によって異なります。
確認したいのは、たとえば次の項目です。
通告の締切
指定様式と文字数
質問項目の追加や変更ができる時期
数値や固有名詞をどこまで記載する必要があるか
再質問が認められる範囲
通告後の聞き取りや答弁調整の進め方
通告書がそのまま公開されるか
最も早いのは、議会事務局に、
「一般質問通告書を作る際の申合せや記載例はありますか」
と確認することです。
過去の通告書が議会サイトで公開されている場合は、自分の議会の例を数件見比べてみてください。
ただし、先輩議員の書き方をそのまま正解にする必要はありません。
型は借りてよい。
そのうえで、答弁を受けて議場で議論するための余白を残す。
それだけでも、次の一問は変わります。
よくある質問
Q. 通告と違うことを、議場で聞いてもいい?
原則として、通告した事項や質問要旨の範囲内で質問します。
最初の答弁を受けて同じ論点を深掘りする再質問は認められる場合が多い一方、関係のない新しい政策分野や、通告にない施設・事業を突然追加すると、通告外と判断される可能性があります。
どこまでが同じ論点に含まれるかは、各議会のルールや議長の判断によって異なります。
判断に迷う場合は、事前に議会事務局へ確認してください。
Q. 通告後に執行部から聞き取りの連絡が来た。どこまで話す?
少なくとも、次の点は明確に伝えます。
何を問題と考えているのか
どの資料や数字を使うのか
どの範囲について答弁を求めているのか
固有名詞や専門用語が何を指すのか
一方で、想定答弁を聞いたうえで用意している再質問や、すべての切り返しまで共有する必要があるとは限りません。
ただし、聞き取りの方法や求められる説明の範囲も議会によって異なります。自分の議会の運用を優先してください。
Q. 通告は長く書くほど、熱意が伝わる?
長さと熱意は別ものです。
背景説明が長くなりすぎると、何を答えてほしいのかが埋もれることがあります。
まずは、
問題意識
対象範囲
根拠
答弁を求める項目
が読み取れるかを優先してください。
背景資料を別紙で提出できるかどうかも、議会事務局に確認するとよいでしょう。
Q. 自分の結論や政策提案は、通告に書かないほうがいい?
一律に書かないほうがよい、ということではありません。
制度の導入、予算化、条例改正など、具体的な提案に対する見解を求めるのであれば、その提案は通告に明示します。
書き込みすぎないほうがよいのは、提案に対して想定される答弁、その反論、次の再質問までを一つの通告文に詰め込むことです。
質問そのものは明確に。答弁を受けた後の展開には余白を。
この区別が大切です。
※本記事は、一般質問通告書を作成する際の一般的な実務上の考え方を整理したものです。最終的な取扱いは、所属議会の会議規則、申合せ、議長の判断および議会事務局の案内をご確認ください。
出典・確認先
通告の型づくりや、質問のたたき台から議会準備までを一つの場所でまとめたい方は、こちらもどうぞ。
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