名簿の名寄せのやり方。同じ人が3回出てくるExcelを直す
統合したばかりの名簿で「中村」を検索したら、3行出てきました。
どれも「中村 幸一」。住所は2行が同じで、1行だけ番地の後ろが違う。電話番号は、1行目が固定電話、2行目が携帯電話、3行目は空欄です。
このうち、何行があの中村さんなのか。
しばらく画面を見たまま、手が止まりました。
「先生、うち2通来てるで」
総会の案内を出した数日後の電話でした。
「会費も2口いるんかいな」と笑ってくださって、その場は「すみません、こちらのミスです」で済みました。笑ってくれる方でよかった、と思いました。
ただ、電話を切ったあとに残るものがあります。
切手代の話ではありません。
同じ人に2通届くというのは、こちらの帳簿の上で、その方が2人になっているということです。
ずっと支えてくださっている方を、こちらは一人として数えられていなかった。そういう事実が、2つの封筒になって届いてしまった。
そのあと、名簿を開いて「中村」を検索しました。3行ありました。
もう一度、別の名前でも試しました。やはり2行ありました。
色は付けた。でも、そこで止まる
重複している行に印を付けるところまでは、比較的簡単です。
Excelの条件付き書式を使えば、同じ氏名が入力されているセルに色を付けられます。名簿によっては、重複候補として数百行に色が付くこともあります。
問題は、その次です。
色の付いた行を上から見ていき、10行目くらいで手が止まる。マウスを行番号の上に置いたまま、動かなくなる。
もし、これが別人だったら。
Excelが教えてくれるのは、あくまで「同じ文字列がある」ということです。
「同じ人物である」とまでは判断してくれません。
同姓同名、親子、旧姓。同じ名前には理由がある
地方の名簿では、同じ名字が何十人も並ぶことがあります。
同姓同名の方もいます。親子で似た名前の方もいます。結婚して姓が変わり、実家の名簿と嫁ぎ先の名簿の両方に載っている方もいます。
消す作業が面倒なのではありません。
消してよいかどうかが、分からないのです。
一度やってしまった、という記憶
これは、実際に相談を受けた事務所での話です。
同じ住所、同じ固定電話で、「山本 和子」さんと「山本 和代」さんの2行がありました。一文字違いです。
入力ミスだと判断して、片方を消しました。
しかし、お二人は嫁と姑でした。
気づいたのは、翌年の総会の出欠はがきが1通しか返ってこなかったときです。ずっと2人で来てくださっていたのに、名簿の上では1人になっていました。
こういうことが一度あると、次から手が止まります。
当然だと思います。
そして、名簿を開かなくなる
名簿を開けば、色の付いた重複候補が目に入ります。
目に入ると、片づいていないことを思い出す。だから、だんだん名簿を開かなくなります。
新しく聞いた連絡先は、スマートフォンのメモに書く。名刺は机の引き出しに置く。年賀状の戻りは、別のExcelに入力する。
情報が散らばり、名簿はまた少し現実からずれていきます。
締切のある仕事ではないので、誰にも怒られません。
誰にも怒られないまま、去年の名簿の状態で、次の選挙が近づいてきます。
本当の問題は、名簿が汚いことではありません
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
作業が止まる原因は、名簿の汚さでも、あなたの性格でも、Excelが苦手なことでもありません。
1行ずつ、その場で判断しようとしているからです。
判断基準が決まっていない状態で、何百回もの判断を連続して行う。途中で基準がぶれるのは、当然です。
50行目あたりで、「この条件なら統合してよかったのだろうか」と不安になる。
100行目になると、「さっきの人は、どう決めたのだったか」が分からなくなる。
そこでExcelを閉じます。
だから、順番を逆にします。
名寄せとは、同じ人らしい行を感覚でまとめる作業ではありません。
「同じ人だと言い切れる条件」を先に決め、その条件に当てはまる行だけをまとめる作業です。
条件が足りない行は、まとめません。
「要確認」のまま残します。それで構いません。
完璧な名簿を一度につくろうとしないでください。
まず目指すのは、同じ人に案内状を二重に送る事故を減らすことです。
手順の前に、私たちの道具の話を少しだけ
Excelでの具体的な手順は、このあとすべて説明します。
その前に、ひとつだけ。
私たちは、地方議員と候補予定者のためのクラウド仕事場をつくっています。**センタイ(sentai)**といいます。
後援会名簿、住民相談の記録、議会の準備、広報の下書きなどをつなげて管理する、インターネット上の事務所のようなサービスです。
この記事に関係するのは、名簿の取り込み機能です。
手元のExcelやCSVを読み込ませると、取り込みを確定する前に、すでに登録されている名簿との照合結果が1行ずつ表示されます。
一致する情報が十分にある行は「更新」の候補
一致する人が見つからない行は「新規」の候補
同じ人か判断しにくい行は、自動で決めずに確認
別人であれば「スキップ」へ変更
判定は、行ごとに手で変えられます。内容を確認したうえで、まとめて取り込みを確定する仕組みです。
正直に、できないことも書いておきます。
電話番号やメールアドレスが空欄の行、旧姓のまま入っている行、表記が大きく異なる行は、機械による判定だけでは拾い切れません。
「全部きれいにしてくれる魔法」ではなく、人が確認しなければならない行を減らす道具だと考えていただくのが近いです。
取り込んだ名簿は、必要なときにCSV形式で書き出し、Excelで開くこともできます。
Excelだけで名寄せする手順
ここからは、新しい道具を入れず、Excelだけで進める方法です。
大切なのは、いきなり削除を始めないことです。
準備|作業用コピーと、6つの列をつくる
まず、元のExcelファイルをコピーし、別名で保存してください。
元のファイルは触りません。
作業用のファイルには個人情報が含まれます。保存先や共有設定を確認し、関係のない人がアクセスできる場所には置かないようにします。
次に、名簿の右端へ、次の6列を追加します。

最初に、変わらない管理IDを付ける
行番号は、並べ替えると変わります。
そのため、「統合済→28行目」のように行番号で記録すると、あとから参照できなくなることがあります。
各行に、変わらない管理IDを付けてください。
1行目が見出しで、2行目からデータが始まる場合は、管理ID列の2行目に次の式を入れます。
="M"&TEXT(ROW()-1,"0000")下までコピーすると、M0001、M0002のような番号が付きます。
番号を付け終えたら、管理ID列をコピーし、「値のみ貼り付け」で固定してください。
数式のままにすると、並べ替えたときに番号が変わってしまいます。
順番1|電話番号で重複候補を集める
最初に見るのは、電話番号です。
ただし、電話番号が一致したからといって、すぐに同一人物と決めるわけではありません。
夫婦や親子が同じ固定電話を使っている場合があるためです。
電話番号は、同じ人かもしれない行を近くに集めるための有力な手がかりとして使います。
電話番号から空白や記号を除く
電話番号がD列にある場合、「キー電話」列の2行目に、次の式を入れます。
=IF(D2="","",SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(D2,"-",""),"-",""),"ー","")," ","")," ",""),"(",""),")",""),"(",""),")",""))この式では、次の文字を取り除いています。
半角ハイフン
全角ハイフン
長音記号
半角スペース
全角スペース
半角・全角の括弧
これで、次の電話番号を同じ値として比較できます。
090-1234-5678
090 1234 5678
09012345678
ほかの記号が混ざっている場合は、Ctrl+Hの「検索と置換」で取り除くか、SUBSTITUTEを追加してください。
同じ番号が何件あるか数える
「キー電話」がN列、「電話重複数」がO列の場合、O2へ次の式を入れます。
=IF(N2="","",COUNTIF($N$2:$N$1200,N2))1200は、名簿の最終行より少し大きい数字に読み替えてください。
最初のIFが重要です。
これがないと、電話番号が空欄の行まで同じグループとして扱われることがあります。
式を下までコピーしたら、「電話重複数」が2以上の行だけを絞り込み、「キー電話」の順に並べ替えます。
同じ電話番号の行が上下に並びます。
電話番号が一致したときの判断
次のように判断します。

電話番号の一致は、統合の候補を見つけるためのものです。
電話番号だけを理由に行を削除しないでください。
先頭の「0」が消えている場合
電話番号を数字として入力すると、Excelが先頭の0を削除することがあります。
電話番号を入力・貼り付けする前に、元の電話番号列を選択し、セルの表示形式を「文字列」にしてください。
すでに09012345678が9012345678になっている場合、あとから表示形式を文字列に変えても、消えた0は戻りません。
その場合は、元の名簿、名刺、連絡先などを確認して復元します。
順番2|ふりがなで重複候補を集める
電話番号で拾えなかった行を、次はふりがなで見ます。
漢字では「渡辺」「渡邊」「渡邉」が別の文字列になりますが、ふりがなが正しく入力されていれば、いずれも「ワタナベ」として比較できます。
ふりがながB列、「キーかな」がP列の場合、P2に次の式を入れます。
=IF(B2="","",SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(B2," ","")," ",""))半角スペースと全角スペースを取り除く式です。
次に、「かな重複数」がQ列の場合、Q2へ次の式を入れます。
=IF(P2="","",COUNTIF($P$2:$P$1200,P2))式を下までコピーし、「かな重複数」が2以上の行を絞り込みます。
ふりがなで分かること、分からないこと
氏名全体のふりがなを使えば、異体字や漢字の表記ゆれを見つけやすくなります。
ただし、旧姓と現在の姓では、氏名全体のふりがなが異なります。
たとえば、「タナカ ハナコ」と「ヤマダ ハナコ」は、この方法では一致しません。
旧姓と思われる行は、下の名前、電話番号、住所、所属、過去の記録などを組み合わせ、人の目で確認してください。
ふりがなが空欄の行が多い場合、この工程は飛ばして構いません。
「先に全員分のふりがなを埋めよう」とすると、そこで作業が止まります。
順番3|住所は、最後の確認材料として使う
ここまでで残った行を、住所で見ます。
ただし、住所は単独では決め手になりません。
1-2-3と一丁目2番3号が別の文字列になる
夫婦や親子は同じ住所になる
引っ越した人は、古い住所と新しい住所が残る
事務所と自宅の両方が登録されている場合がある
住所は、同じ人かもしれない2行を確かめるための補助材料として使います。
「住所が同じだから同一人物」とは判断しないでください。
残す1行を、どう決めるか
同じ人だと確認できたら、どの行を残すか決めます。
優先順位は、次のとおりです。
本人や家族に最近確認した情報が入っている行
現在つながる電話番号やメールアドレスが入っている行
現在の住所が番地まで入っている行
所属、紹介者、相談履歴などの情報が多い行
最も新しく、信頼できる行を土台にします。
そして大事なのが、消す側の情報を、残す側へ移してから統合することです。
残す行に携帯電話があり、消す側の行に勤務先や紹介者が入っているなら、その情報を残す行へコピーします。
この作業をせずに削除すると、あとから「どこかに書いてあったはずなのに」が起こります。
すぐには削除しない。「統合済」と記録する
確認が終わっても、行をすぐには削除しません。
「判定」列に、次のように記録します。
統合候補
別人
要確認
統合済→M0123
M0123は、情報を集約した先の管理IDです。
「統合済」とした行は、案内状や宛名印刷の対象から除外します。
見た目は少し複雑になりますが、あとから「この人はなぜ1行になったのか」を確認できます。
完全に削除するのは、動作確認とバックアップが終わってからで十分です。
最後に、10件だけ抜き取り確認をする
作業を終えたら、最低10件を検索して確認します。
よく知っている支援者を5人選び、不要な重複が残っていないか
同じ名字が多い地区から3人選び、家族を一人にまとめていないか
最近、住所や電話番号が変わった方を2人選び、新しい情報が残っているか
10件の確認だけで、すべての間違いがないとは言い切れません。
ただし、判断ルールそのものが間違っている場合、ここで気づける可能性が高くなります。
案内状を印刷する前には、もう一度、出力対象の氏名と住所で重複がないか確認してください。
つまずきやすいところ
夫婦・親子が同じ住所、同じ固定電話
名字、住所、電話番号がすべて同じでも、下の名前が違えば別人です。
家族を一人にまとめないようにしてください。
携帯電話と固定電話で別の行になっている
同じ人でも、一方には携帯電話、もう一方には固定電話だけが入っていることがあります。
電話番号だけでは一致しないため、ふりがな、住所、所属などで確認します。
法人と個人が混ざっている
「○○建設 山田太郎」と「山田太郎」があっても、すぐに統合してはいけません。
会社宛と自宅宛で、案内状を分けるべき場合があります。
送付先の目的を確認してから判断します。
旧姓と現在の姓が混ざっている
電話番号、メールアドレス、下の名前、過去の住所などを組み合わせて確認します。
姓が違うという理由だけで、別人とも同一人物とも決められません。
よくある質問
Q. 何件くらいから、手作業では厳しくなりますか
一律に「何件以上」とは決められません。
件数が多くても、電話番号やふりがなが揃っていれば、候補の絞り込みは比較的進めやすくなります。
反対に、数百件でも空欄が多く、複数の人が別々に更新している名簿は、判断に時間がかかります。
次の状態が続いているなら、取り込み時に重複を照合できる道具を検討する目安です。
毎年、同じ名寄せ作業を繰り返している
複数人が別々のExcelを更新している
名簿を追加するたびに重複が増える
どのファイルが最新か分からない
判断経緯を記録できていない
Q. 名寄せの途中で、亡くなった方が見つかりました。行を消してよいですか
削除せず、「故人」「送付停止」などの状態を残すことをおすすめします。
削除すると、翌年、別の名簿から同じ方の情報が再び入ってくる可能性があります。
案内状や差し込み印刷を行うときに、「故人」「送付停止」の行を除外する運用にしてください。
冒頭の「中村」の3行に戻ります。
あのときお手伝いした事務所では、電話番号で並べ替えたところ、3行のうち2行が同じ携帯電話番号だと分かりました。
残る1行は、番地の枝番だけが異なり、電話番号は空欄でした。
確認すると、息子さんでした。
3行は、2行になりました。
1行ではありません。
それで正解でした。
名寄せは、名簿を短くするための作業ではありません。
「この行とこの行は同じ人だ」と、根拠を持って言える状態にする作業です。
言い切れないものは、「要確認」のまま置いて構いません。
まずは、電話番号の列だけで大丈夫です。
30分だけ時間を取り、どれだけの重複候補があるかを確認するところから始めてみてください。
登録は約3分。初期費用0円、カード登録不要です。全機能込みで月額5,000円(税別)です。
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