イランのインフレがヤバすぎる
2025年末から2026年初頭にかけて、
イランで激しい抗議デモが発生している。
その直接的な引き金となったのが、
史上最悪レベルに達した
インフレと通貨安だ。
テヘランのグランドバザールで
商人たちが一斉に店を閉め、
「もはや商売が成り立たない」
と訴える光景は、
イラン経済がいかに
深刻な状況にあるかを物語っている。
深刻化するインフレの実態
2024年12月から
2025年1月のインフレ率は
前年同月比31.8%を記録し、
その後さらに悪化を続けている。
2025年7月時点では41.2%にまで上昇し、
直近の2025年12月の
インフレ率は42.2%に達した。
特に深刻なのが
食料品価格の高騰だ。
食料品価格は前年同月比で72%も上昇し、
保健・医療関連品も50%上昇している。
これは一般家庭の
生活を直撃する数値だ。
さらに品目別に見ると、
パン・穀類の価格が
前年同月比81.8%上昇、
水道、電気、ガス類も55.7%増加するなど、
生活に不可欠な基礎的品目の価格が
軒並み急騰している状況だ。
通貨リアルの歴史的暴落
インフレと並行して進行しているのが、
イランの通貨リアルの記録的な暴落である。
2025年末には為替相場が
前例のない水準で急騰し、
米ドルに対するイラン・リアルは
約142万リアルに達した。
これは史上最安値を更新する水準だ。
2025年12月28日には、
市場での対ドルレートが
1ドル=142万リアルにまで低下し、
その後も1月6日にはリアルは
再び過去最安値を更新し、
1ドル=150万リアルを記録している。
長期的に見ると、
この通貨安の進行は驚異的だ。
2018年4月時点では
1ドル4万7730リアルだったものが、
2020年10月には1ドル30万8500リアルになり、
約2年半の間に6分の1以下の価値になった。
そこからさらに価値が下落し続け、
現在に至っている。
なぜこれほど深刻なのか?
■ 1. 経済制裁の長期化
イランのインフレが
深刻化している最大の要因は、
アメリカを中心とした
経済制裁の長期化だ。
2018年にトランプ政権(第1次)が
イラン核合意から離脱し、
「最大限の圧力」政策を開始して以来、
制裁は継続している。
2025年2月上旬には、
トランプ政権が第1次政権で採用した
「最大限の圧力」をかける政策を
復活させる大統領覚書に署名し、
イランの原油輸出をゼロにすることを
目指す方針を打ち出した。
これにより、
かつてイラン政府の歳入の半分を
占めた原油輸出が大幅に制限され、
外貨獲得手段が著しく限定されている。
外貨の流入が減少すれば、
当然ながら自国通貨の価値は下落し、
輸入品の価格は高騰する。
(経済制裁は『秀吉の兵糧攻め』に似ています)
■ 2. 輸入依存経済の脆弱性
イラン経済は石油輸出に
大きく依存する一方で、
多くの商品を輸入に頼っている。
自国の通貨が暴落すれば、
輸入品の値段は上がる。
また、国外で商品を販売すれば
高く売れることから、
自国で作られた商品の国内値段も
上がるという悪循環に陥っている。
特に医薬品や食料品など、
生活に不可欠な品目の多くが
輸入に依存しているため、
通貨安の影響が直接的に家計を圧迫している。
■ 3. 国際金融システムからの孤立
イランは国際的な経済制裁により、
国際金融システムから事実上孤立している。
国際的なクレジットカードは
イランでは使用できず、
国際送金も非常に困難な状況だ。
この孤立により、
貿易決済や資本取引が著しく制限され、
経済活動全体が停滞している。
企業は外国企業との取引が困難になり、
技術や設備の導入も滞っている。
■ 4. 通貨の二重レート制の歪み
イランでは公式レートと
市場レートという二重レート制が存在し、
これが経済の歪みを生んでいる。
2025年4月時点で、
1米ドルは約4万2002リアル
(市場レート)だが、
公式レートは約104万2000リアルという
大きな乖離が存在する。
この制度は政府による
補助金政策と結びついているが、
同時に腐敗の温床ともなり、
経済の非効率性を助長している。
国民生活への影響
■ 購買力の激減
イランの平均月収は
2025年で約250万円程度と
推定されているが、
ハイパーインフレーションの影響で
実質的な価値が急速に目減りしている。
名目上の収入があっても、
物価上昇がそれを上回るため、
実質的な購買力は低下し続けている。
■ 社会階層間の格差拡大
インフレの影響は社会の中でも
特に貧困層に深刻だ。
政府の補助金政策により
基本的な食料品や公共交通機関は
比較的安価に抑えられているものの、
輸入品や高級品の価格は高騰しており、
平均的な給与では購入が困難になっている。
■ 抗議デモの拡大
抗議活動は当初テヘラン中心部で
電子機器を販売する店主らが
店舗を閉鎖したことから始まり、
その後グランドバザールを含む
全国に拡大した。
テヘランにある
大規模市場グランド・バザールで
商人による抗議活動が発生し、
通貨リアルの急落で食料価格が
押し上げられている。
大学生も含めた広範な層が
抗議活動に参加し、
経済的困難に対する不満が
政治的な抗議へと発展している。
解決の見通しは?
■ 構造的な問題の深刻さ
イランのインフレ問題は
単なる一時的な経済変動ではなく、
構造的な問題を抱えている。
経済制裁が続く限り、
外貨獲得手段は限定され、
通貨安とインフレの圧力は継続する。
政府は補助制度の見直しや
直接支援への転換を検討しているが、
短期的には食料品などの
さらなる値上がりを招く可能性がある。
治安面での取り締まりは
一時的に抗議を抑えられても、
根本的な経済問題の解決にはならない。
■ 国際情勢との連動
イランは米国との対立が一段と激化し、
ホルムズ海峡の封鎖懸念が高まる恐れもあり、
地政学的リスクが経済を
さらに悪化させる可能性がある。
一方で、
核合意への復帰交渉が進展すれば、
制裁解除による経済改善の可能性もあるが、
現時点では具体的な進展は見られない。
まとめ
イランのインフレ問題は、
42%を超えるインフレ率、
通貨リアルの史上最安値更新、
食料品価格の72%上昇という数値が示すように、
まさにヤバすぎる状況にある。
経済制裁の長期化、
輸入依存経済の脆弱性、
国際金融システムからの孤立という
構造的要因が複合的に作用し、
一般市民の生活を直撃している。
グランドバザールの商人から大学生まで、
広範な層が抗議活動に参加する事態は、
イラン社会全体が経済的限界に
達しつつあることを示している。
この問題の解決には、
国際的な制裁の緩和や核合意への復帰など、
政治的・外交的な進展が不可欠だが、
短期的な改善の見通しは立っていない。
イラン国民にとって、
厳しい経済状況はまだ当分続くことが予想される。
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