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再生を選んだ、その意味


「全部壊してしまうこともできたけど、今日この景色を見た時に初めて『再生』を選んでよかったなと思いました。」 ー 森田ひかる


5年前のあの瞬間に、「破壊」ではなく『再生』を選ぶこと。

その決意が何を意味するのかを感じた時、私は苦しくて、切なくて、そして何よりも嬉しさに包まれ、涙を流しました。


あの頃「欅坂46」を愛していた人間が、この言葉に勝手に感じた意味を、
少しだけあの頃の欅坂46を振り返りながら語らせてください。



・ 欅坂46

私が当時を振り返り、欅坂46を一言で表すとすれば、「平手友梨奈」と表現する。


これには批判も伴う意見だと理解しているし、私自身当時はそれを否定したい側の人間だったが、今振り返るとすると、これ以外に表現する言葉がないと思う。


メチャカリのCMで「サイレントマジョリティー」を聴き、そのままMVを見て、あの眼差しを見た時から、私も平手友梨奈の虜になった。


ファーストワンマンから従来のアイドルとは異なる表現にますます魅了され、その後は本当に全てのライブにいっていたのではと思うほど、沢山のライブに参加していた。

当時、平手友梨奈以外にも鈴本美愉や長濱ねる、のちに櫻坂46としても活動をしていた渡邉理佐や小林由依など、各方面に個性あふれるメンバーが在籍しており、まだ違うセンターが現れる可能性も十分に考えられた。


握手会での事件、楽曲による精神的な疲弊、過密なスケジュールによる肉体的な疲労、怪我。
当時の彼女の状況を鑑みれば、むしろセンター交代のタイミングはあったのだと思う。



でも、それらを全て物語に変えてしまうほど、平手友梨奈というアイドルはカリスマ性に溢れており、大人たちも「そう」であるように演出を重ねた。



2018年、欅坂46は武道館3daysを控える中で、センターの平手友梨奈が怪我をしてしまう。
そしてその結果、欅坂46は次の決断をすることになる。

平手友梨奈に関しまして、右腕の痛みを訴え、上腕三頭筋損傷で全治1ヵ月の怪我と診断されました。

日本武道館公演への出演に向けて治療を続けてまいりましたが、万全のパフォーマンスが困難だと判断いたしました。



運営で協議の結果、1/30(火)、1/31(水)、2/1(木)に予定されております欅坂46「日本武道館公演」に関しまして、欅坂46(漢字欅)の公演をけやき坂46(ひらがなけやき)公演に振り替え実施いたします。



漢字欅公演を楽しみにして下さっていたファンの皆様、関係者の皆様にはご心配をお掛けいたしますが、引き続き欅坂46の応援をよろしくお願い申し上げます。

https://www.keyakizaka46.com/s/k46o/news/detail/O00079?ima=0000


たとえば櫻坂46で山﨑天がライブに出られなかったとして、ライブそのものを取りやめることがあり得るだろうか?
きっと、いや間違いなくそんな選択はしないと思うし、今のBuddiesには考えもつかないような選択だと思う。


だが、それほどまでに、欅坂46というグループは平手友梨奈という存在なしには成り立たなくなっていたのだ。


それ以降、私の眼に見える欅坂46のパフォーマンスは、平手友梨奈の調子が全てと言えるものになっていた。

彼女の調子が悪ければグループ全体のパフォーマンスが重たくなり、
彼女が全開で踊ることができれば、そのライブは最高の熱狂を生み出す。



デビュー間も無く社会的なヒットを生み出し、それ以降ずっと「欅坂46」という大きすぎるものを背負い続けた少女は、全ての痛みを蓄積し続けた。


その年の終わり、欅坂にはのちに櫻坂の柱となる2期生が加入した。
そして2019年、初の選抜制度を導入した9th Singleの発売を発表した。


しかし同年、欅坂46として最初で最後となる東京ドーム。
Wアンコールで平手友梨奈は一人舞台に立ち、「角を曲がる」を披露する。


9th Singleはリリースの延期が発表され、最後までリリースされることはなかった。

デビューから全てのシングルでセンターを務めた平手友梨奈は、その翌年、グループからの「脱退」を表明した。


その半年後、配信ライブにて、欅坂46はその歴史に幕を下ろすことが発表された。



・ 再生を選ぶこと

欅坂46の時代を知らない方のために、その歴史のほんの一部をかいつまんで紹介したが、つまりは欅坂の歴史は平手友梨奈の歴史そのものであり、彼女が脱退したその時、欅坂として活動することが不可能になってしまうほどだったのである。


冒頭にあるように、森田ひかるは「再生を選んだ」と口にしていた。


森田ひかるをはじめとする2期生は、「欅坂46」への強い愛を持って加入してきた。
しかし、加入した時点でグループはすでに崩れかけており、いろいろな綻びが出ていた。

平手友梨奈はボロボロになっており、それにつられるように一部のメンバーもかつての笑顔を失い、冠番組は「お通夜」と揶揄されるほど、当時キャプテンであった菅井友香以外にだれも声を出さず、盛り上がることのないものになっていた。


そして幻の9th Singleでの選抜発表。
変革の象徴のように扱われた2期生。


当時の欅坂46ではこれまでの1期生の21人全員選抜を絶対とするファンが一定数おり、それは「21信」と呼ばれるほど絶対的な価値観として一部のファンの中に存在していた。


だからこそ、この選抜制度導入には反対意見も強かったし、その引き金となった2期生に対する厳しい意見もかなりの数が散見された。


そして、それほどまでに否定されたそのシングルもリリースされることはなく、2期生はついにシングルに参加しないまま、欅坂としての活動を終了することになる。

また、欅坂46の活動終了までの間も、1期生やスタッフなど、本当に様々なスキャンダルも飛び交う始末。


2期生は、坂道グループでも類を見ない逆境のなか、アイドル活動をスタートしていたのである。



櫻坂46としての活動開始にあたり、1st Singleのセンターには2期生である森田ひかるが選ばれた。


欅坂の影を残す中での1st Single発売。間違いなく比較される。

現に櫻坂46としての初期、欅坂と比較する声はかなり多かったように思う。
そしてその多くはネガティブなもので溢れていた。



先述の通り、欅坂46とは平手友梨奈によって形作られたアイドル像であり、その彼女がいなくなった後にグループを続けていくとするならば、
普通であれば全てを一旦リセットし、全く異なるアイドル像を築き上げる「破壊」の道以外に道はないと誰もが思うだろう。


少なくとも改名を発表した時、私は彼女たちがその道を歩んでいくのだと思っていた。



でも・・・

彼女たちはかつての世界観を捨てることなく、活動を続けた。


前を向き、幅を広げ、様々な傷を負いながらも、彼女たちは「再生」の道を歩み続けた。



あの局面で「再生」を選ぶこと。



その先がどれだけの荊に満ちているのか、どれだけの逆風に見舞われるのか、どれだけの険しい坂道を登らなければならないのか。

グループの”中”にいた彼女たちは、おそらく我々以上にそれがどれだけ厳しい選択なのかをわかっていたはず。

アイドルとしての自分たちのことだけを、未来のことだけを考えれば、「破壊」以外の道は決して得策とは言えない。

平手友梨奈が「脱退」を選んだ時に、もう手放してもよかった。
少なくとも、外から見ていた私は、それが最善だと信じていた。





それでも彼女たちはその道を選んだ。



そこには、全ての痛みに立ち向かう計り知れない「覚悟」と、そして不器用で、切ないまでの欅坂46への「愛」があったのだと、今になって思う。



何もないところから始まった1期生とは異なり、2期生は欅坂46を見て、欅坂46に憧れてグループに加入してきた。
外側から見ているグループは変わってしまっていたが、もしかしたら、中から見る欅坂46は、彼女たちにとって変わらず、もしくはそれ以上に愛すべきグループであったのかもしれない。


私は欅坂46が大好きだったが、だからこそ、その愛していたグループが変わっていく怖さから、私はあの頃の現状と未来に目を背けてしまった。

でも彼女たちは、その重たすぎる過去も、今の苦しみも、未来への希望も全て抱えたまま、未来へと一歩を踏み出し始めた。



櫻坂46は、かつての世界観を持ち続けながらも、そのパフォーマンスは欅坂46とは異なり外へ、そして前へ向いている。


その影を抱えながら、ここまでのグループとしてのアイデンティティを確立するまでに、どれだけの苦しみを抱え、どれだけの覚悟で進んできたのか。


かつて目を背けてしまった私は、彼女のこの言葉を聞いた時、胸に小さな後悔の痛みと、そして大きな感謝の温かさを感じて涙を流した。



・ 「左眼」


「再生を選んでよかったと、初めて思えた」


この国立競技場にたどり着くまでの櫻坂46の物語は、覚悟と愛に溢れた「再生」の道のりだったのかもしれない。

そしてようやく、かつてのグループが辿り着けなかったこの場所に立つことで、そして彼女自身がこの道を選んでよかったと思えたことで、本当の意味での「再生」が終わった。


もし、ここまでの飛躍的な上昇も「欅坂46からの再生」という序章に過ぎず、ここから本当の意味での「櫻坂46」として飛翔の物語が始まるのだとすると、櫻坂46はどこまでいくのだろうか。

かつて、険しい再生の道を見据えたその「左眼」には、今どんな景色が見えているのだろうか。

小さな身体で、大きすぎるものを抱えてここまでたどり着いた森田ひかるを始めとするメンバーに多大なる敬意を払いつつ、荊ではなく、”光”に満ち溢れたこのグループの未来を、我々もこの左眼で見つめる。



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