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豚肉の塊に、心を撃ち抜かれた——仙台駅東口、ヨドバシ6階のマロリーポークステーキへ行ってきた


ヨドバシカメラの6階というのは、たいてい家電売り場でも何でもなく、飲食フロアになっている。ヨドバシ仙台もそうだ。仙台駅東口から歩いて1分、榴岡の交差点に面したそのビルに入り、エレベーターで6階に上がると、そこにはいくつかの飲食店が並んでいる。

正直に言うと、用があったのは別の店だった。入口を探してフロアをぶらぶらしていたとき、ガラス越しに目に飛び込んできたのが、カウンター席に並んで黙々と肉を切っている人たちの姿だった。そして皿の上には、とんでもない厚みの、明らかに「塊」としか形容できない豚肉が乗っていた。

気づいたら入口の前に立っていた。

マロリーポークステーキ ヨドバシ仙台店




東北初上陸、そして「マロリー」とは何者か

マロリーポークステーキは、東京・横浜・大阪・名古屋などに20数店舗を展開するポークステーキ専門チェーンだ。2023年10月2日にヨドバシ仙台第1ビル6Fにオープンし、これが東北初出店となった。2026年現在、横須賀や大森にも出店予定が相次いでおり、全国的な勢いはとどまるところを知らない。

店名の「マロリー」は、世界最高峰エベレストへの初登頂を目指し、消息不明のまま消えた伝説のイギリス人登山家、ジョージ・マロリーに由来するとされている。「なぜそこに登るのか? 山がそこにあるからだ」という有名な言葉を遺した人物だ。その精神が、この店のメニュー設計にそのまま反映されている。

ポークステーキのメニューはすべて山の名前がついており、重さは200gから2,000gまで7段階。山が高くなるほど肉は重くなるという仕組みだ。一番小さいのが「日和山・天保山級(200g)」、そして「富士山(450g)」「マッターホルン(700g)」「キリマンジャロ(1kg)」「エベレスト(1.5kg)」「オリンポス(2kg)」と続く。オリンポスは火星にある太陽系最高峰の山で、標高は27,000m。2kgの塊肉を前に「山があるから食べるのだ」と言い切れる人だけが注文できる境地だ。




「日和山」が最小サイズなのには、ちゃんとわけがある

ここで少し笑えるのが、最小サイズの名前だ。

「日和山・天保山級」という山名には、日本で最も標高の低い山(日和山、仙台市・標高3.0m)と、大阪にある天保山が使われている。そして日和山は仙台市にある。つまり仙台の店のメニューで「最小サイズ=日和山」というのは、地元への愛着とユーモアが混じり合った、なかなか心憎い仕掛けだ。

「仙台に来たなら、まず日和山から登ってみてください」というわけでもあるまいが、そんな気持ちで最小サイズの肉をぺろっと平らげてから、次の山に挑む常連客が出てきてもおかしくない。実際、仙台市民にとって「日和山」は親しみのある場所で、ジョギングコースにもなっているほどだ。地元ならではのくすっとくる工夫が、初来店なのに妙な居心地のよさを与えてくれた。

この日は「蔵王山(270g)」のランチセットを注文することにした。




モバイルオーダーと、静かな店内の空気

席につくと、テーブルの上にQRコードがある。スマートフォンで読み込んで注文するモバイルオーダー制だ。店員さんを呼ぶ必要がないので、1人客でも気兼ねなく来れる雰囲気がある。実際、ランチタイムの店内には、1人でカウンターに腰掛けて黙々と肉と向き合っているサラリーマン風の人が何人もいた。

カウンター席は厨房側を向いており、焼き上げる音と香りがじかに伝わってくる。ジュウジュウという音と、鉄板から立ち上がる肉の香ばしい煙が、食欲をひどく刺激する。「早く来い」と体が主張し始める。

テーブル席は奥まった場所にあり、仲間と来た人や、ゆっくり話しながら食べたい人向けだ。キャッシュレス決済も対応済みで、現金不要でスムーズに会計できる。1人でふらりと来ても、友人と数人で来ても、どちらにも対応できる間口の広さがある。




72時間かけて作られる、大麦仕上三元豚

注文後、しばらく待っていると肉が運ばれてきた。

まず、その厚みに言葉を失う。

蔵王山270gというのは、数字で見るとそれほどでもないような気がするが、実物は違う。皿の上に鎮座する豚肉の塊は、明らかに「普通の豚肉」ではない。厚みが5センチほどあり、断面はローズピンク色で、しっとりと輝いている。表面は高温で焼き付けられて、カリッとした焦げ目がついている。その対比が、見ているだけで唾が出てくる。

マロリーポークステーキが使う豚は、国際味覚審査機構(iTi)で三つ星を受賞した大麦仕上三元豚という希少な品種だ。赤みが濃くきめ細かい肉質で、たっぷりの肉汁を含んでいる。大麦を飼料に混ぜることで豚の肉質が改善され、臭みが出にくくなる。そしてこの肉を、生の状態から完成品まで72時間かけて仕上げるのだという。

具体的には、真空パックで低温調理を行い、63℃以上の状態でじっくり4時間以上かけて火を通す。そうすることで肉の内部はしっとり柔らかなまま、旨みが逃げることなく閉じ込められる。仕上げに、提供直前に高火力のオーブンで表面だけをカリッと焼き上げて完成だ。外側の香ばしさと、中のジューシーさが完全に共存している、その一点に72時間が凝縮されている。




実食——蔵王山270g、撃沈

注文してから数分。カウンターの向こうで鉄板に肉が乗る音がした。じゅうっ、という短い爆発音のあとに、香ばしい煙が一筋立ち上がる。あの匂いが漂ってきた瞬間、「これはやばい」と確信した。

ナイフを入れる。

サクッ、という音がした。表面の焼き目を破ったとき、中から肉汁がじわりと染み出してくるのが見えた。断面のピンク色がなんとも美しい。豚肉なのに、まるでローストビーフのような断面だ。思わず少し眺めてしまった。

口に入れた瞬間、まず旨みが広がる。豚特有のうまさ、脂の甘さ、肉汁のコク。それが一気に来る。柔らかい。驚くほど柔らかい。噛み切ろうとするとスッと切れて、そのまま口の中でほどけていく感覚がある。脂身も思ったほどしつこくなく、後味がすっきりしている。270gという数字が信じられないくらい、体にスムーズに入っていく。

「豚肉ってこんなにおいしかったっけ」と、素直に思った。

付け合わせにはマッシュポテトと**クリームスピナッチ(ほうれん草のクリーム煮)**が添えられている。マッシュポテトはバターが効いていて、肉の合間に食べるとリセット感がある。クリームスピナッチは濃厚で、ステーキと合わせると味が深くなる。どちらも「ただの付け合わせ」ではなく、主役の豚肉と対話する設計になっている。




味変の沼——塩・わさび・粒マスタードという楽しみ

卓上には、ステーキソースの他に塩・わさび・粒マスタードが置かれている。これが地味にすごい。

最初はステーキソースで食べる。次に塩だけで食べてみると、肉そのものの味がよりクリアに感じられる。大麦仕上三元豚の素材の力がむき出しになる感じだ。そしてわさびを少量のせると、さわやかな辛みと豚のうまみが不思議なほどよく合う。粒マスタードは酸味と粒のプチプチ感が加わって、また別の料理を食べているような気分になる。

270gというボリュームがあるのに、途中で飽きない。むしろ「もっと食べたい」という気持ちが最後まで続いた。味変という概念があることで、一枚の肉が何通りにも楽しめる。これはポークステーキならではの懐の深さだと思う。

ライスは糖質・カロリー控えめの金芽米を使用しており、普通の白米より食べやすい。+200円でガーリックライスに変更することもできる。肉の香ばしさに、にんにくの風味が重なるのを想像すると……次は絶対それにしようと思いながら席を立った。




仙台限定のメニューもある

もう一つ、気になっていたのが**仙台限定メニューの「豚の仙台みそ煮込み」**だ。

仙台と言えば、みそ。辛みの中に深いコクがある仙台みそは、豚肉との相性が抜群だ。このローカルメニューは、東北初出店の仙台店ならではの一品で、県外店では食べられない。初来店では蔵王山のポークステーキで手が精一杯だったので食べられなかったが、次はこれも試してみたい。仙台ならではのひと皿を、ポークステーキ専門店でいただくというのは、考えれば考えるほど魅力的だ。ポーク×仙台みそという組み合わせ、絶対に間違いない。




コスパで言えば、ランチが圧倒的に狙い目

ランチタイム(11:00〜)は、通常価格からセット料金が300円引きになるサービスがある。

蔵王山(270g)のレギュラーセット(ライス+コンソメスープ付き)がランチ1,190円。ディナーは同じメニューで1,490円なので、300円の差は大きい。さらにバリューセットにすると、サラダとソフトドリンクまで付いてくる(こちらもランチ割引適用)。

平日の昼に仙台駅近辺でランチを取るなら、このコスパは相当高い部類に入る。普通の定食と同じ値段で、極厚ポークステーキが食べられるというのは、なんとも嬉しい話だ。休日・夜間も23時まで営業しているので、観光の締めくくりに立ち寄るのにも使えるし、仕事帰りに1人でふらっと来るのにも向いている。




豚肉の可能性を見せてくれる場所

食べ終わったあと、少し席でぼーっとしていた。

満腹感と満足感が同時にある。胃がいっぱいなのに、気持ちはどこか軽い。そういう食後感は、案外少ない。脂身の少ない赤身主体の豚肉だから胃もたれもなく、ただひたすら「美味しかった」という余韻だけが残った。

牛肉のステーキは、それなりに「特別感」を演出してくれる食事だ。値段が張る分、身構えながら食べることもある。でも豚肉のステーキは、牛とはまた違う種類の幸福感をくれる。コスパよく、気軽に来られて、それなのに食べた後は確かに「ちゃんとした肉を食べた」という充実感がある。素材の力と技術の結晶が、「豚肉って実はすごいんだよ」と静かに、しかし力強く主張している。

「牛でいいや」と思っていた仙台の夜に、選択肢がひとつ増えた気がする。

マロリーが名前を借りた登山家は、「なぜ山に登るのか? 山がそこにあるからだ」と言った。「なぜ270gの塊肉を食べるのか? 目の前にあるからだ」——そういうことでいいと思う。




アクセス・店舗情報

マロリーポークステーキ ヨドバシ仙台店 住所:宮城県仙台市宮城野区榴岡1丁目3-1 ヨドバシ仙台第1ビル6F TEL:022-200-2129 営業時間:11:00〜23:00 定休日:年中無休(施設に準ずる) 決済:キャッシュレス対応 注文方式:モバイルオーダー(QRコード)

アクセス:JR仙台駅東口より徒歩約1分

おすすめの選び方: 初挑戦なら蔵王山(270g)か富士山(450g)が食べ応えと達成感のバランスがいい。マッターホルン(700g)は2人シェアでも十分なボリューム。ランチなら蔵王山レギュラーセット1,190円が最もコスパ高。仙台限定「豚の仙台みそ煮込み」はぜひ一度。



豚肉の塊がカウンターの向こうに並んでいるあの光景を、今日も思い出している。エレベーターを6階に止めるたびに、なんとなくそっちに体が向きそうになる。次は仙台みそ煮込みと、ガーリックライスで行こうと決めている。仙台に来たら、ヨドバシ6階まで登ってみてほしい。エベレストには届かないが、その肉は確かに頂上級だ。



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