【特別展レポ】佐賀県立美術館「大浮世絵展」行ってみた
7月12日、佐賀県立美術館へ特別展「北斎・広重 大浮世絵展」を見に行ってきました!
というわけで、note再開一発目の本格的な記事はこの「大浮世絵展」の感想をまとめることとします。

もちろん、この浮世絵も展示されてます。
そもそもどんな展示?
-巨匠対決!夢の競演 北斎VS広重 あなたはどっち派?-
このキャッチコピーの通り、今回訪ねた「大浮世絵展」は、北斎と広重を様々なジャンルで「対決」させる構図で構成されていました。
対決は全部で6ラウンド。つまり、6つの観点から北斎と広重の浮世絵を展示・紹介しているわけですね。
「東海道五十三次」対決 ー旅・風物・グルメ
「歌舞伎」対決 ー役者絵・武者絵・忠臣蔵
「名所」対決 ー風景と江戸美人
「版元」対決 ー代表作とヒットメーカー
「ユーモア」対決 ー滑稽絵・妖怪・文学
「肉筆画」対決 ー卓越した描写力
で、私も含めた来場者はこの6つのラウンドを見届けたうえで、最後に「どっち派」かを丸シールで投票する…といった形です。
実際に私も投票したのですが、やはり投票ブースでは「お母さんどっち入れた?」「うわどうしよ…迷う…」「え、お前も北斎!?」といった会話も広がってました。
展示を見て感じたこと
さて、そんな展示を見てきての感想を大きく3つに分けて紹介します!
「音」が聞こえる広重、「声」が聞こえる北斎
肉眼で見る「からこそ」の感動
鷹の目に神視点!?構図の妙は浮世絵の妙
ちなみに、この「大浮世絵展」は全編通して写真撮影NGでした。
そのため展示会場の写真は出せておりません。あらかじめご了承ください。
というか、実際に来れる人は是非とも見に来てほしい!肉眼で見るからこその興奮ってあるから!!!本当に!!!!!
ではではそんなところで、さっそく参りましょ~。
1.「音」が聞こえる広重、「声」が聞こえる北斎
「広重は音、北斎は声が聞こえる」
そんなことを感じたのが、特別展の会場入ってすぐの「『東海道五十三次』対決」ブース。
ここでは広重の描いた「東海道五十三次(保永堂版)」55枚と、北斎の描いた「東海道五十三次 絵本驛路鈴」28枚を展示しています。
言わずもがなの名作「日本橋 朝之景」を筆頭に、教科書やテレビで見たことある超有名作をこれでもかこれでもかと出してくる広重。
対して、広重のそれに比べると知名度は少し控えめながらも、そこに描かれた人の魅力で見る人を魅了する北斎。……うん、初手から最大火力、満足感が高い!
で、トップバッターを飾る広重版「東海道五十三次」から聞こえてくるのは「音」。
これは海辺の波の音や風の音、雪の中を踏みしめる足音、激しく降る雨、馬の足音、熱のこもった人のざわめき…。
要するに、景色に重点を置いて描いているからこそ、その景色から聞こえてくる「音」がメインで聞こえてくる。人の声も聞こえては来るけれど、何を話しているかというよりは「話しているということ」がわかる音が聞こえてくる感じ…といえばわかるでしょうか。
対して、北斎版「東海道五十三次」から聞こえてくるのは「声」。
こちらは広重のものと比べて「そこにいる人、暮らす人」をクローズアップしているからこそ、そこに描かれた人の話し声が文字に起こせるくらいに鮮明に聞こえてくるような感じすらあるのです。
旅路で一休みする人たちの声、その街に住む人々の声、歩く人も立ち止まる人も、みんながちゃんと「声」をもって話している。
「あーーー疲れたぁ…」
「それでよお、俺の前を歩いてた兄ちゃんがすっ転んじまってさあ!」
「あらいらっしゃい、旅のお方?」
そんな声が、会話が、息遣いが全部聞こえる。
人をメインに据えているからこそ、その向こうの音が「話し声」として、聞こえる。
同じテーマなのに、同じ場所なのに。
描くときに「どこを見ているか」によって、それぞれの作品の色や印象はまるで違うもののように、四角いフレームの向こうに響く。
当たり前だろって言われればそれまでなんですが、その「当たり前」を実感として、ひしひしと迫ってくる感覚として感じられたことは、すごく得がたい経験だったなぁと感じています。
2.肉眼で見る「からこそ」の感動
先ほどもちょろっと話した通り、今回の「大浮世絵展」一番のポイントはほぼゼロ距離で見れるということ。
以下の佐賀新聞の記事でもわかるかと思うのですが、本っっっ当に近くまで寄って、ゼロ距離同然で見れるんです。
そして、この「ほぼゼロ距離」鑑賞、何がいいかって教科書やテレビ画面、さらにはスマホやPCの画面だけでは気づけなかった細かな美しさをより深く味わえるんです。
教科書の写真でも、4Kや8Kの映像でもかなわない。そんな「生」かつ「間近」で感じられる美しさ。そしてその凄まじさを特に感じたのが、展示後半の「『版元』対決」ブースでした。
事実、私はこの展示で「富嶽三十六計 神奈川沖浪裏」を初めて肉眼で見たのですが、肉眼で、間近で見たからこそそのすごさに気づけた部分がありまして。
それが、「神奈川沖浪裏」の細かな波飛沫なんです。
前提として、私はこの浮世絵を教科書やテレビでしか見たことがなくて。
実物をキュッと縮小していたり、こちらのペースより早いカメラ回しにつられて視線を動かしたり…といったことが多かっただけに、実は「じっくり、つぶさに見る」こととは無縁に等しかったんですね。
ですが実際、展示会場では一人一人じっくり、近くまで寄って見れるくらいの余裕がありまして。
その中でじっくり見て気付いたんです。
この作品……それぞれの波のうねりの端から、小さな飛沫を表す白点が、大小さまざまな大きさで飛び散ってるじゃないですか!!!
「え、ここって背景のベージュ1色じゃないの?」
「え、こんなに細かい所まで描いてる…というか彫ってる!?」
遠目からじゃ分からないくらいに、細かいのに。
なんなら近くで見ても、意識しないとちゃんと分からないくらいさり気ないレベルなのに。
それでも、「波を描く」という事象そのものにこだわっているからこそ、どれだけ小さくても波の飛沫の一つ一つまで細かく、本当に細かく描いた。
北斎のそんな職人魂に、またそれに応えて「先生が言うんなら俺らもやるか」と乗った彫り師、摺師の皆さんの職人魂に、思わず胸を打たれました。
「美は細部に宿る」なんて言うけど、あれって本当なんだなぁ…。
また、「美は細部に宿る」といえば、広重も負けていません。
展示されていた「江戸名所百景 猿わか町よるの景」では、街ゆくお兄さんお姉さん、さらにはわんこ達にも、しっっっかり影をつけてるんです。それも、「あ、この月の位置、この人の身長の感じとかならこうなるわ」ってくらい、リアルかつ印象的な影。
地面の影があるからこそ、一人一人がよりリアルに、命をもってざわめきと賑わいを生む「立体」として浮かび上がってくる。
浮世絵ってどちらかと言えば平面的なイメージがあっただけに、「こんなに細かく、一人一人にちゃんと影を与えてるなんて…しかも画一じゃなくて一人一人に合わせた形で……」と思わず、見入ってしまいました。
一点透視図法で描かれた街が月に照らされ、まるで舞台のワンシーンに見える「猿わか町よるの景」。
それをよりドラマチックに、美しく魅せるのはこのちょこっとした、でもリアルで繊細な「影」の美ゆえなんだろうな。
ほんと「美は細部に宿る」って誰です言い出したの…ゴリゴリの真理じゃない……と、一人大興奮!
それと同時に「人間のテクノロジーは、人間の『目』そのものの強さを追い抜けないのかもしれないな」とも思い、ふと「生きた人間として」この展示を見に行ったことの意味を考えさせられたりもしました。
美しいものは、時に思考を刺激するんだなぁ…。
3.鷹の目に神視点!?構図の妙は浮世絵の妙
今回の「大浮世絵展」を通じて、つくづく驚かされたのが、絵の視点の妙。
「あ、そう来ちゃう!?」と驚かされるものも多々…
やっぱり北斎も広重も只者じゃなかったんだなぁと、改めて見て思うわけです。というか、只者じゃなかったからこそ後世にこうして名前が残ってるわけなんですが。
で、特に驚かされたのが広重さん。
あなた……空飛べたの!!???
これ(名所江戸百景 深川洲崎十万坪)とか、
これ(名所江戸百景 大はしあたけの夕立)とか
飛べないと無理でしょ!!???
当時の日本ではまだ飛行機なんてなかったはずで。
無論、ドローンだって飛ばせなかった(というか、技術がそもそもまだ追いついてなかった)わけで。
空を飛ぶなんて…無論、できなかったわけで。
唯一可能性がある「物見やぐら的なやつ」説も怪しいというか…そんな易々と登れる場所じゃないでしょあれ???
どうやって描いたんだろう…どうやってこの構図思いついたんだろう……
そんな、つい「広重さん、タ○コプター持ってた説」まで頭をよぎるようなこの「鳥目線」「雲目線」の大胆オブ大胆な構図。たまらんですね〜。
ちなみに構図といえば、同じく名所江戸百景シリーズの「亀戸梅屋舗」もすごいなぁと。
「覗き見るような視点で臨場感アップ!」なんて、どこで思いつくんや広重兄さん………
ちなみに、この構図の妙ってのは北斎さんも負けてないなぁと思います。特に私の中でクリティカルヒットしたのはこの2枚。
樽の向こうに敢えて富士を配置し、覗き込むように視線を誘導することで奥行きを感じさせる「冨嶽三十六景 尾州不二見原」。
そして、補修工事中のお寺の屋根の視点から、雲に浮かぶ富士山の姿を描き、その高さをよりリアルに感じられる演出を施した「冨嶽三十六景 東都浅草本願寺」。……北斎さん、あなたこの技術どこで習ったの???
本当に、2人とも空飛べたのか何か特殊な技術校みたいなのを出たのか…そうじゃないと説明つかないけど史実では特に書いてないし……いや、私が知らないだけでひょっとしたら2人とも何か共通のものから影響受けてるのか……???
そんなことを思いたくなるような、構図の妙を感じる浮世絵。お見事でございました。
発見が多すぎて、何回も行きたい!
さて、こうして2人の浮世絵にしっっっかり触れられた「北斎・広重 大浮世絵展」。
ここまでの文章から感じられたかもしれませんが、本当に、本っっっ当に満足感が高い!!!
そして、本当に何度行っても絶えず新しい発見がありそうな展示だなぁと!
実は私、今回まだ上手く感想をまとめられず、泣く泣く今回の記事からはカットした部分があって……
それが、「北斎漫画」のことと、「広重おじさん」こと広重が描くユーモラスな街のおじさんたちの絵のことなんです!
ここも上手くまとめて入れたかったのに……っ!
くそうっ!何たる不覚!!!(膝を打つ音)
という訳で、次回行くときはこの2人のユーモアも味わい、またうまく言葉にまとめ、こうして記事にして紹介したいなと思っております!
こういう素敵な展示は、何回行ったっていいやつですからね!ええ!!!

という訳で、初手からなかなか長めになりましたが、ここらで私の「北斎・広重 大浮世絵展」レポは結びとさせていただきます。
皆さん、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!
【おまけ】特別展ショップもあるよ
実はこの「大浮世絵展」、ミュージアムショップならぬ特別展ショップもございまして……
思い出を振り返るのにうってつけのポストカードや、スマホの裏にちょうどいいステッカーもございましたので、併せてご報告。

もちろん、他にもクリアファイルとかメモパッドとか色々あったので、特別展見られた方は併せてご覧くださいまし〜♩
