【五つの唯美派詩群、その弐】
「霊告」
薔薇水を吸う蝶蝶に
妙音鳥の
重く透る佳き御聲が
死ねよ生きよ、と告げる
生きよ死ねよ、と唄う
心耳を澄ます蝶蝶の
吸い上げる薔薇水が
そして甘さを増すのである
「真像」
少年らしき、ぼくの真像を
とりかえす術のみつからなさよ。
嫩葉の翠に
また高旻の鮮碧に
ぼくはぼくの真像にふさわしい
絵の具の彩をみつけるのに。
「薔薇はうつむく」
黒瞳なにをみる
悲しいか
薔薇はうつむく
黒瞳に泪も
現代は涸れて
青い羽根だとか
星砂の夜だとか
丘を駈ける少女騎士
これら詠いたきことは
みな、うつむかずにいた薔薇たちのこと
黒瞳なにをさがす
悲しいか
もう
ぼくも、うつむいて
「櫻」
夭き櫻の意外な紅さ
女々しき壮士の怨みの凄さ
忘れられぬは
櫻の季よ
「乗客」
列車は白んだ海の方へ
やや傾いたまま
まるで頸をかしげるように
滑って行くのでした
車窓の外は、ただただ
紗のかかったような
海の面だけです
座席は硬くて
天鵞絨の匂いがしました
ぼくは
手の平に乗るほど
小さい棺の中に瞑る
小鳥のことを考えています
やさしいものが
どうして死ななければならないのかを
列車は無音で走りますので
白んだ海へと
まるで融けるように
かしいで走りますので
それはとても
似合うことなのです
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