農作物盗難と技能実習制度
丹精込めて育てたサクランボ・梨・シャインマスカットが、収穫直前に根こそぎ盗まれる——そんな被害が全国の農家を苦しめています。
背景にあるのが、外国人技能実習制度の構造的な歪みなのではないでしょうか。
「技能実習制度は必要?」と問われたとき、単純に「必要」・「不要」とも答えられない複雑な現実があります。
この記事では、犯罪統計・制度の問題・農家の被害を解説します。
外国人による窃盗は今、急増している

警察庁データが示す衝撃の数字
まず現実の数字を見てください。
警察庁が公表している来日外国人による窃盗犯の検挙件数は、ここ数年で急激に増加しています。
📊 2022年:5,048件
📊 2023年:6,149件(前年比+21.8%)
📊 2024年:9,103件(前年比+48.0%)
📊 2025年:12,226件(前年比+34.3%)
2022年から2025年のわずか3年間で、約2.4倍・142%増という衝撃的な伸びです。
2025年に来日外国人が関わった刑法犯17,614件のうち、窃盗犯は約69%を占めています。
(出典:令和7年における組織犯罪の情勢について 令和8年4月警察庁組織犯罪対策部)
注意すべき数字の読み方
「検挙件数」は発生件数ではなく、警察が処理した件数
⚠️ 同一グループの連続犯が複数件として計上される場合がある
⚠️ 統計上の「来日外国人」は永住者や特別永住者を含まない
⚠️ 大多数の技能実習生は適法に働き、地域と良好な関係を築いている
全体像と個別事例を分けて考えることが、問題の本質を見えやすくします。
技能実習制度はどんな制度なのか

建前と実態のズレがすべての根本
技能実習制度は1993年に「国際貢献・技術移転」を目的として創設されました。
つまり「日本の技術を途上国の人に習得させ、母国の発展を支援する」という趣旨です。
でも実態はどうでしょうか。
🏭 深刻な人手不足を補う安価な労働力として機能してきた
💴 時給399円で働かされた事例も確認されている
🚫 原則として転職(転籍)が認められない
😰 パワハラ・暴力・賃金未払いが横行する職場も存在する
🌍 国連や海外メディアから人権侵害として批判を受けてきた
「技術を学ぶための制度」が「安く使える労働力の調達手段」になっている——ここにすべての歪みの出発点があるというわけです。
技能実習生の実際の賃金水準
厚生労働省の最新統計(2026年7月時点)によると、技能実習生の賃金はこうなっています。
💰 所定内賃金(税引き前):月19万300円
📈 残業代込みの総支給:月21万円前後
🏠 寮費・光熱費・食費を差し引いた手取り:月12万〜16万円程度
金額だけ見ると悪くないように見えますが、問題はそこではありません。
来日前にブローカーへ支払う渡航費用や手数料が100万円前後にのぼるため、多くの実習生が借金を抱えてスタートするんです。
(出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)
なぜ犯罪に走ってしまうのか

失踪から不法滞在、そして犯罪へ
技能実習生の失踪者数は、2023年までは年間7,000人以上にのぼっていました(2025年は約3,950人に減少)。
失踪した実習生は在留資格を失い、合法的に働けなくなります。
その後の流れがこうです。
😰 多額の借金を抱えたまま仕事を失う
📱 SNSで母国語のコミュニティに引き込まれる
💬 「簡単に稼げる」と誘われて犯罪グループに接触する
🍇 農作物・家畜の窃盗、転売ネットワークへの加担
NPO法人・日越ともいき支援会によると、ベトナム人技能実習生の8割以上が借金を抱えて来日しています。
転職も禁じられ、監理団体も助けてくれない——そんな閉塞した状況が、一部の実習生を追い詰めているのが現実です。
組織化される農作物の窃盗
農作物の盗難は、個人の衝動的な犯行ではなく、組織的なビジネスとして機能しているケースがあります。
🍒 収穫直前の高級果実をターゲットに計画的に侵入
📱 FacebookやTelegramで在日ベトナム人の買い取り屋・運び屋に連絡
📦 宅配便で全国の同国人コミュニティへ転売
🌏 ベトナム国内の市場にも流通するルートが存在する
盗品は日本国内でも流通し、海外にまで渡るネットワークが形成されているというわけです。
窃盗グループの「元締め」には、日本語も堪能な定住歴の長い人物がいるとの証言もあります。
農家が受ける深刻なダメージ

狙われやすい農家の特徴
農林水産省の全国調査によると、盗難被害が起きた場所の48%が露地の畑です。
🌙 夜間・早朝は無人になり、侵入しやすい
🍑 収穫直前の果実は価値が最も高く、運びやすい
💰 シャインマスカット・サクランボなど単価の高い品種が集中して狙われる
😢 少額被害は届け出が少なく、検挙率はわずか11%
2025年6月には山形県上山市で「佐藤錦」約200キロ(約100万円相当)が一夜にして盗まれる被害がありました。
2025年の山形県内のサクランボ盗難は前年比で件数・被害金額ともに大幅増加。2016年以降の10年間で届け出があっただけで31件、約498万円相当にのぼります。

(出典:農林水産省「農作物盗難被害に関する実態調査」)
泣き寝入りが次の被害を生む悪循環
被害農家が被害届を出しにくい構造も問題です。
😔 収穫の繁忙期に届け出の手間がかかる
📉 被害額が50万円未満の少額ケースが約9割
🔍 未解決40%・不明49%で、解決済みはたった11%
届け出がなければ捜査は動きません。同じ農家や同じ地域が繰り返し狙われる悪循環が生まれています。
少額でも届け出ることが、地域全体を守る第一歩になります。
盗難被害で農業を止めるケースもあり
一生懸命育てた農作物を盗まれてしまった悲しみから、農業自体を辞めてしまうケースもあります。
実際に、「5,000個もの梨を盗まれ、続ける気力を失って農園を閉じることにした」という、とても胸の痛む声もあがっています。
制度の何が問題だったのか

監理団体が機能しなかった現実
技能実習制度では「監理団体」が受け入れ先を監督する役割を担っています。
でも、現実には機能していないケースが目立ちます。
🏢 全国に3,000以上存在する監理団体
👀 受け入れ先の検査・監理が形骸化している
❌ 問題があっても転職が認められず、実習生が我慢するしかない
📋 年間2,200件の指導・勧告が行われているが、不正はなくならない
外国人技能実習機構が設置されたのは5年前ですが、それでも失踪者が7,000人を超えていたという事実が、制度そのものの限界を示しています。
まとめ:制度の問題と人の問題を切り分けて考える
技能実習制度は必要?という問いの答えは、「現状のまま」ではノーです。
多額の借金・転職の禁止・監理団体の機能不全——この三重苦が一部の実習生を追い詰め、失踪・不法滞在・犯罪へと向かわせてきました。
農作物を盗まれた農家の痛みは当然のこと。
同時に、真面目に働く大多数の技能実習生が「外国人=危険」という偏見で見られることは違うと感じます。
しかし、引き続き注目していく必要があります。
本記事の情報は2026年7月時点のものです。最新情報は出入国在留管理庁・農林水産省の公式サイトをご確認ください。
