金曜17時、大量アラート。役職者が集まる緊急会議になった話
※この記事は、実際の業務で経験した出来事をもとに、会社や顧客が特定されないよう内容を一部変更・一般化して紹介しています。
セキュリティエンジニアの仕事というと、
「攻撃を見つけて対応する」というイメージを持つ方が多いかもしれません。
もちろんそれも大切な仕事ですが、実際には「攻撃だと思ったら違った」というケースも少なくありません。
今回は、私が印象に残っている出来事を紹介します。
金曜日の夕方、突然の大量アラート
ある金曜日の定時が近づいた頃のことです。
監視していたあるWebサービスで、短時間のうちに大量の認証失敗ログが検知されました。
認証失敗が急増すると、まず頭に浮かぶのはブルートフォース攻撃やパスワードスプレー攻撃です。
「もしかして、攻撃されているのではないか。」
現場の空気が一気に張り詰めました。
初めて見る規模の事象
これまでに見たことがない規模だったこともあり、関係者への連絡が始まり、役職者も含めた緊急会議が開かれました。
金曜日の夕方ということもあり、
「週末までに対応が必要かもしれない」
という緊張感が漂っていました。
ログを確認しながら、
・本当に攻撃なのか
・特定のアカウントだけが狙われているのか
・他にも異常は発生していないか
一つずつ確認を進めていきました。

原因は意外なところにあった
しかし、ログを追っていく中で、一つ気になる点がありました。
認証失敗が急増し始めた時刻を起点に、その数時間前まで時系列を遡って確認してみると、システム側で利用者向けの案内メールが一斉送信されていたことが分かったのです。
さらに、メール送信のログと認証失敗ログを時間軸で突き合わせると、送信直後ではなく、数時間後から認証失敗が増え始めていました。
これは、メールを見てすぐログインする人だけでなく、仕事や学校が終わってからログインを試みる人も多かったためだと考えられます。
その結果、パスワードを忘れていた人や入力を間違えた人が重なり、大量の認証失敗ログとして検知されていたのです。
つまり、攻撃ではなく、通常業務がきっかけで発生したアクセス集中でした。
この経験で学んだこと
この出来事を通して強く感じたのは、「ログだけを見て判断してはいけない」ということです。
ログだけを見ると攻撃のように見えても、システムの運用状況や社内で行われている作業まで含めて確認すると、正常な動作だったということは意外とあります。
逆に、「きっと通常業務だろう」と思い込んでしまうのも危険です。
この経験を踏まえて、実際に運用を一つ変えました。
利用者向けの一斉送信メールは毎月決まった日に送られる定期的なものだったため、その送信スケジュールを事前にセキュリティ担当側でも共有してもらうようにしたのです。
今では、その日に認証系のアラートが発生した場合は、まず一斉送信の有無を確認することが、最初のチェック項目になっています。
セキュリティ監視では、「怪しいものを疑う力」だけではなく、「怪しく見えるものを、事実を積み重ねて冷静に否定できる力」も同じくらい重要なのだと、この出来事で実感しました。
まとめ
セキュリティエンジニアの仕事は、「攻撃を見つけること」だけではありません。
本当に攻撃なのか、それとも正常な動作なのかを冷静に見極めることも重要な仕事の一つです。
派手なサイバー攻撃だけではなく、こうした一見地味な調査の積み重ねが、日々のセキュリティを支えています。
「怪しいログ=攻撃」と決めつけず、システム全体の状況や運用も含めて考える。この経験は、今でもインシデント対応を行う上での大切な教訓になっています。
