約束を守らない市政に、子どもたちの居場所を奪わせていいのか / 流山市 公立幼稚園廃園問題
流山市唯一の公立幼稚園をめぐる、いま市民が知るべきこと
流山市で、また大事なことが静かに進められようとしています。
それは、流山市唯一の公立幼稚園である「流山市幼児教育支援センター附属幼稚園」をめぐる問題です。
流山市の公式ページには、いまもはっきりと「流山市唯一の公立幼稚園です!」と書かれています。これは、ただの一つの園の話ではありません。流山市から「公立幼稚園」という選択肢そのものが消えるかもしれない問題です。
しかも今回、2026年6月2日に提出された市議会の資料の中に、議案第37号として「流山市幼児教育支援センター及び附属幼稚園の設置等に関する条例の一部を改正する条例の制定について」が出てきました。教育福祉委員会に付託される議案として掲載されています。
これは、単なる検討段階の話ではありません。
条例を変えるということは、制度を変えるということです。
つまり、市はまた一歩、廃園に向けた手続きを前に進めようとしているように見えます。
「子育てのまち」と言いながら、やっていることは逆ではないか
流山市は長年、「母になるなら、流山市。」「父になるなら、流山市。」という言葉を掲げ、子育て世代に選ばれるまちとして自らを発信してきました。市の公式ページでも、このキャッチコピーを掲げ、子育てだけでなく親自身の自己実現や新しいチャレンジを応援していると説明しています。
では、その流山市が、なぜ市内唯一の公立幼稚園をなくそうとしているのでしょうか。
子育てを応援するまちなら、まず守るべきは、民間では受け止めきれない子どもや家庭を支える公的な受け皿ではないのでしょうか。
私立幼稚園や保育園が悪いと言っているのではありません。
それぞれの園には、それぞれの良さがあります。
しかし、公立には公立の役割があります。
障害や発達に不安がある子。
集団生活に時間が必要な子。
家庭の事情で、より丁寧な相談や支援が必要な家庭。
民間の園では受け入れの判断が分かれるようなケース。
そうした子どもたちを、最後に公的に支える場所が必要です。
それが「唯一の公立幼稚園」であるなら、なくす前に徹底的に議論するのが当然です。
ところが、流山市の動きは、どう見ても「守る」方向ではなく、「なくす」方向に見えます。
市民はすでに声を上げている
この問題について、市民が無関心だったわけではありません。
流山市が実施したパブリックコメントでは、応募者数239人、提出意見437件が寄せられています。これは、市民がこの問題に強い関心を持っていることを示しています。
さらに、市議会には「流山市幼児教育支援センター附属幼稚園の廃園方針」の見直しを求める陳情が出されました。この陳情では、廃園方針の見直しを市議会で採択し、市長に送付するよう求めています。
そして実際に、市議会の表決結果一覧では、この陳情第16号は「採択」と記録されています。
つまり、市民は声を上げた。
議会も一度は「見直しを求める陳情」を採択した。
それなのに、今また条例改正の議案が出てくる。
これは、市民から見れば「約束を守っていない」と受け止められて当然です。
「見直す」と受け止めさせておいて、結局進めるのか
議会で陳情が採択されたということは、少なくとも市民にとっては「いったん立ち止まる」「廃園ありきではなく見直す」という意味を持ちます。
それを市民は信じたのです。
ところが、その後の市の説明を見ると、「廃園方針を決定している」という前提は維持されたままです。令和7年10月のタウンミーティング議事録でも、学校教育部長は、附属幼稚園について「廃園方針を決定している」と説明しつつ、廃園は延期し、来年度も新入生を募集すると述べています。
つまり、完全に白紙に戻したわけではない。
市民の声を受けて慎重に再検討しているように見せながら、基本方針は変えていないように見えます。
これを「丁寧な市政」と呼べるでしょうか。
私は、そうは思いません。
これは、市民に説明したふりをしながら、時間をかけてあきらめさせるやり方に見えます。
問われているのは、市長だけではない。議員も問われている
この問題で問われているのは、市長や教育委員会だけではありません。
議員も問われています。
選挙のときに「子育てを大切にします」「市民の声を聞きます」と言うのであれば、こういう時こそ行動で示すべきです。
市民が声を上げた。
陳情が出された。
議会で採択された。
それでも市が廃園へ進もうとするなら、議員は市民の側に立って止めるべきです。
それをしないなら、「市民の声を聞く」という言葉は何だったのでしょうか。
約束を守らない議員を、市民は見抜かなければなりません。
この問題は、幼稚園に通っている家庭だけの話ではありません。
これから子育てをする家庭の話です。
発達や教育に不安を抱える家庭の話です。
そして、行政が市民との約束を守るのかどうかという、民主主義の話です。
さらに危険なのは、市民の声の入口まで狭めようとしていること
今回の市議会資料には、もう一つ見過ごせない内容があります。
「陳情の取り扱い変更に伴う議会先例の追加について」です。
資料では、これまで流山市議会では、原則として窓口に提出されたすべての陳情を委員会及び本会議で議題としていたと説明されています。ところが、令和8年第3回定例会分からは、議会運営委員会で1人以上の賛同があった陳情のみを議題とし、賛同議員がいない陳情は参考配付にする運用へ変更するとされています。
これは非常に重大です。
市民が陳情を出しても、議員の誰かが賛同しなければ正式な議題にならない。
つまり、市民の声が議会の場に上がる前に、入口で止められる可能性があるということです。
附属幼稚園の問題で市民が声を上げ、陳情が採択された。
その後に、今度は陳情の扱いそのものを狭める。
この流れを偶然だと見てよいのでしょうか。
私は、強く警戒すべきだと思います。
市民が知らないうちに、まちは変えられていく
行政は、いつも大きな声で「悪いことをします」とは言いません。
資料の中では、きれいな言葉が並びます。
「見直し」
「連携」
「機能強化」
「支援体制」
「慎重に進める」
しかし、その言葉の裏で、実際には公立幼稚園が消えようとしている。
市は、附属幼稚園を廃園しても、幼児教育支援センターの機能を強化すると説明しています。市の廃園方針資料にも、附属幼稚園を廃園した場合でも、センター業務の見直しや改善、幼保小連携、特別な配慮を必要とする幼児への支援などを行うと書かれています。
しかし、ここで問うべきです。
実践の場である公立幼稚園をなくして、どうやって幼児教育の質を高めるのでしょうか。
現場をなくして、どうやって子どもの姿を見続けるのでしょうか。
公立の受け皿をなくして、どうやって「誰一人取り残さない」と言えるのでしょうか。
言葉だけの「機能強化」なら、いくらでも言えます。
問題は、実際に子どもたちが安心して通える場所が残るのかどうかです。
これは「子どもたちの居場所」を守る闘いです
私は、今回の動きを見て、流山市は悪い方向に動いていると感じています。
市民の声を聞くと言いながら、結局は廃園の方向へ進む。
議会で陳情が採択されても、その意味が十分に尊重されているようには見えない。
さらに、市民の陳情を議題にする入口まで狭めようとしている。
これは、流山市の子育て政策にとって大きな後退です。
「母になるなら、流山市。」
「父になるなら、流山市。」
そう言うなら、最後の公立幼稚園をなくす前に、市民に正面から説明してください。
なぜ唯一の公立幼稚園をなくすのか。
廃園後、本当に困る子どもはいないのか。
私立で受け入れられなかった子は、どこへ行くのか。
発達支援や教育相談を、誰がどの予算で担うのか。
陳情採択を、議会と市はどう受け止めたのか。
そして、過去に市民の前で語った言葉を、議員たちは本当に守る気があるのか。
市民は、見ています。
知らないうちに進められて、気づいた時にはもう決まっていた。
そんなことを、これ以上許してはいけません。
流山市唯一の公立幼稚園をなくすことは、単なる施設整理ではありません。
それは、子どもたちの選択肢を減らすことです。
公的支援の最後の受け皿を手放すことです。
「子育てのまち」という看板と、実際の市政との矛盾をさらけ出すことです。
約束を守らない市政に、子どもたちの居場所を奪わせてはいけません。
市民一人ひとりが、今この動きに目を向けるべきです。
この記事で確認した資料・出典
流山市議会「令和8年6月2日 議会運営委員会資料」
議案第37号として「流山市幼児教育支援センター及び附属幼稚園の設置等に関する条例の一部を改正する条例の制定について」が掲載されています。また、陳情の取り扱い変更に関する資料も同じPDF内に掲載されています。
https://www.nagareyamagikai.jp/doc/2022041200018/file_contents/R8_0602_giun_siryou.pdf?shem=rimspwouoe
流山市公式「幼稚園紹介」
流山市幼児教育支援センター附属幼稚園について、「流山市唯一の公立幼稚園です!」と明記されています。
https://www.city.nagareyama.chiba.jp/life/1001107/1001190/1001193/1001195.html
流山市「流山市幼児教育支援センター附属幼稚園の廃園方針」
市が附属幼稚園の廃園方針を決定した経緯、廃園時期、廃園後の幼児教育支援センターの機能について説明されています。
https://www.city.nagareyama.chiba.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/043/780/3haienhousin.pdf
流山市「流山市幼児教育支援センター附属幼稚園の廃園方針」パブリックコメント結果
応募者数239人、提出意見437件とされており、市民から多数の意見が寄せられたことが確認できます。
https://www.city.nagareyama.chiba.jp/information/1008466/1008474/1044677.html
流山市議会「陳情第16号『流山市幼児教育支援センター附属幼稚園の廃園方針』の見直しを求める陳情書」
廃園方針の見直しを求める陳情書の本文です。行政手続き上の問題、政策形成における現状分析の不足、附属幼稚園の実績などが指摘されています。
https://www.nagareyamagikai.jp/doc/2023112800021/file_contents/R5-4chinjo16.pdf
流山市議会「令和6年第1回定例会 議員別表決結果一覧」
陳情第16号が「採択」と記録されています。
https://www.nagareyamagikai.jp/doc/2024032200014/file_contents/R6-1_giketukekka.pdf
流山市公式「流山市ブランド推進」
流山市が「母になるなら、流山市。」「父になるなら、流山市。」というキャッチコピーを掲げ、子育てだけでなく、母・父自身の自己実現や新しいチャレンジを応援し続けていると説明しています。
https://www.city.nagareyama.chiba.jp/appeal/1032996.html
流山市「令和7年10月4日 北部地域 タウンミーティング議事録」
附属幼稚園について、学校教育部長が「廃園方針を決定している」と説明したうえで、廃園延期や新入生募集について述べています。
https://www.city.nagareyama.chiba.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/016/919/r7.10.04.hokubu.pdf
