「学校どうだった?」をやめてみたら。――高1の息子が語る「1時間13本の芸術」
「イエナプラン教育」の勉強を始めました。 その中で最も重視している基本活動が「対話」です。
「こちらが議題を提供するのは、対話ではない」
この言葉を読んだとき、真っ先に浮かんだのは、高校1年生になる息子の顔でした。
息子は、普段あまりおしゃべりな方ではありません。 親心として、学校での様子を知りたくて「今日、学校はどうだった?」と聞くのですが、返ってくるのは決まって「普通」「別に」という短い一言。
「なんかないの?もう少し詳しく教えてよ。なんならオチでもつけてさぁ」と重ねてみても、返ってくるのは「え〜1時間目が数学で、2時間目が・・・」事実の羅列。 (そんなもん時間割見たらわかるわい!)
そんな彼を見て、私は「この子のコミュ力、大丈夫?」と、勝手に不安を募らせていたのです。
彼が「心」を開くスイッチ
けれど、そんな彼が、まるで別人のように表情豊かになる瞬間があります。 それは、彼が大好きな「鉄道」の話題になったとき。
今夜の夕食時、彼が熱っぽく語り出したのは、間近に迫った3月14日の東海道新幹線ダイヤ改正についてでした。
「1時間に12本走ってる『のぞみ』が、ついに13本になるねんで」
「新幹線は乗客が7割いれば黒字やのに、今はもうそれを超える需要がある。だからこその増発やねん」
数字を交えた冷静な分析に、「よく知ってるねぇ」と驚く私をよそに、彼の勢いは止まりません。
「1時間に13本も出たら、東京駅はどうなると思う?」
「パンクするやろ?無理やろ?」
「だから、どうすると思う?……一部、品川止まりにするねん。」
「なんで品川やと思う?」
「品川から東京駅までのアクセスが抜群」
「それに何より、そこには車庫があるからやねん!」
身を乗り出して、生き生きとした目で語るその姿は、「1時間目は・・・」と語っていた彼と同じ人物だとは思えないほど、眩しく輝いて見えました。
300キロの「安全」を紡ぐ芸術
さらに、彼が深く感銘を受けていたのは、その「緻密さ」でした。
「300キロもの猛スピードで走ってる新幹線を、3分おきに次々と発車させるんやで。そんな超過密ダイヤを組めるJR東海って、ほんまに凄すぎると思わへん?」
「それを、一分の狂いもなく、安全に運用し続ける。あのダイヤは、もはや芸術作品やで」
彼が夢中で語る「13本のダイヤの裏側」に、ただ耳を傾ける。
「そうなんや、すごいんやな」と、彼の感動をそのまま受け取る。
気づけば、私も「へぇ〜!」の連続で、ちょっと物知りになった気分。 そのとき、彼の視野が広がるだけでなく、私自身の世界も、彼の瞳を通してぐんと広がっていくのを感じました。
問い詰めるのではなく、寄り添うこと
イエナプランが大切にする「対話」とは、一方的に質問をぶつけて情報を引き出す「事情聴取」ではありません。 自由に発言し、相手の思いを分かち合うなかで、お互いの視点をパズルのように持ち寄って、新しい気づきが生まれること。
思えば、私の方が「親として知っておくべきこと」という議題を彼に押し付けて、彼が本当に心を開いている場所に、私の方が歩み寄れていなかったのです。
これからの「我が家の対話」
大切なのは、話し上手になることではなく、自分の「好き」を誰かと分かち合えること。そして、相手の「好き」を、敬意を持って受け取れること。
彼の熱量に寄り添い、共に驚き、共に楽しむ。 そんな「食卓からの対話」を、学びの第一歩として大切に育んでいきたいです。
