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30年間、一度も老けない生き物の正体

「おい!!ハダカデバネズミ!!」


もし自分がそんな名前で呼ばれたら、
たぶん数日は立ち直れない。
そんな悪口を寄せ集めたような名前を、
大真面目な顔をした人間に名付けられた気の毒なネズミがいる。

ハダカデバネズミだ。



体毛はほとんどなく、ピンクの肌がむき出し。
地中生活に適応しすぎた前歯は、
もはや凶器のような堂々たる出っ歯。

ここまで読んで、「来世はこれになりたい」と願う人間は一人もいないだろう。

だが、侮ることなかれ。
彼らのスペックを知れば、
高級美容液を塗りたくる自分の手が、
ただの無駄な儀式に思えてくる。


彼らは地下に全長3キロ規模の巨大都市をつくる。
寝室があり、トイレがあり、
厳格な役割分担がある。

まさに、血も涙もない
**「ピンク色の独裁国家」**だ。

女王が一匹。
繁殖できる雄が数匹。
それ以外は、ただ働くためだけの労働担当。

上から女王、繁殖係、働きネズミである。
働きネズミは穴掘り、餌や土の輸送係など分業している

労働担当は、生殖機能すら物理的に抑えられる。

……なんだ、ただの私か。

上司という名の女王に体当たりされ、
毎日同じ穴を掘り続け、
子孫を残す余裕すら奪われている。
ハダカデバネズミの名前を
笑っている場合ではなかった。

だが、この「社畜ネズミ」たちには
逆転の目がある。

女王が死ねば、
静かだった地下で凄惨な覇権争いが始まる。

また、勇気を出してこのコロニーを脱走すれば、抑えられていた生殖機能が
みるみる回復するのだ。

敷かれたレールの上だけを歩く
「負けネズミ」かと思っていたが、
彼らは全員、虎視眈々と王の座を狙っている。


そして――
ここからが異常だ。


人間やマウスは、年齢とともに死亡率が
指数関数的に上がっていく。
だがハダカデバネズミは違う。
年を重ねても、死亡率はほぼ一定のままだ。
30歳(人間なら80歳超え)になっても、
血管も筋肉もピチピチ。

細胞レベルの防御力が、
完全にバグっているのである。

癌にもなりにくい。
2000個体以上を観察して、
確認された癌はわずか5例。

我々が「老化」という病に怯え、
高いサプリを飲み、健康診断の結果に
一喜一憂している間に、
彼らはシワシワの顔のまま、
悠々と永遠の若さを享受している。


老いに強く、病にも強い。

彼らは無敵ではないか。



否、結構あっさり死ぬ。 


肌が乾燥するストレスで死ぬらしい。

体温調節が絶望的に下手で、
乾燥にとても弱いのだ。

「老い」という概念を捨て去った代わりに、
彼らは「湿度」というあまりに細い糸に
命を預けている、


老化には耐える。
だが、環境には絶対服従。


ハダカデバネズミは、進化の過程で
「老化」というブレーキを自ら外した。
その代わり、特定の環境に縛られるという
「首輪」を甘んじて受け入れたのだ。

人間はどうだろう。

医療は進歩し、寿命は延び、ついには
「老いそのものを治療対象」と見なし始めた。
環境を制御し、寒さも暑さも、
湿度の変化すらエアコン一つで克服した。

もし、このまま「老い」という
最後のブレーキまで外してしまったら。
次に人間を止めるものは、
一体何になるのだろう。




ハダカデバネズミは、増えすぎた自分たちを
間引く「弱点」をあえて残した。
完璧な空調と無敵の肉体を
手に入れようとする人間は、
自分たちを間引くための「新しい地獄」を、
今まさに発明している最中なのかもしれない。


老いは、本当に欠陥なんだろうか。


この記事を読み終えた今も、
あなたの細胞は着実に死へと近づいている。
だが、地中のあいつらは、1ミリも変わらぬ若さで、今日も黙々と土を掘っている。

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