腰痛難民を救う、世界基準の内視鏡手術【ドクターズ・インサイト】
医療の最前線で活躍するドクターたちの素顔と、その信念に迫る『ドクターズ・インサイト』。今回は滋賀県にある【淡海せぼねクリニック】院長の倉石慶太先生にお話を伺いました。
長く続く腰痛で「どこに行っても良くならない」と感じている方や、手術や費用に不安を抱えている方はたくさんいます。
倉石先生が向き合ってきたのは、そうした「腰痛難民」と呼ばれる患者さんたちでした。その診療の軸にあるのが、「品質=クオリティ」という考え方です。
Q. 診療において「品質」とは何を指すとお考えですか?
倉石:患者さんにとって一番大切なのは、「ご自身の痛みが、どういう状態なのかをきちんと分かってもらえること」だと思っています。
そのためには、今、世界ではどのような治療や考え方が標準になっているのかを踏まえたうえで、日本の保険診療の中で何ができるのかを考える必要があります。昔の常識や限られた情報だけで判断するのではなく、最新の知見をもとに診ることが前提になります。
もう一つ大切なのは、診察したあとに、その方がどう経過していったのかを振り返りながら診療を重ねてきたことです。腰痛は同じ診断名でも、痛みの出方や治り方は人によって違います。
実際に多くの患者さんを診て、その後どうなったのかまで見ていないと、「この方にはどこまで治療が必要か」「今は何をすべきか」を判断することはできません。
そして最後は、今の自分にできることをすべて使って診療しているかどうかです。患者さんからは見えにくい部分ですが、検査、診察、説明、治療の選択まで含めて、「ここまでやった」と言えるところまで尽くす。
それが、私が考える品質の高い診療です。

Q. 「腰痛難民」とはどのような患者さんのことですか?
倉石:多いのは、「長く腰痛に悩んでいるけれど、原因がはっきりしないまま過ごしてきた方」です。いくつかの医療機関を受診しても、「年齢のせい」「検査画像では異常がない」と言われ、次の選択肢に進めずにいる方が少なくありません。
そうした方の多くは、必要な検査や診察が十分に行われていないケースがあります。腰痛の原因は一つではなく、レントゲンだけでは分からない病気も多く存在します。MRIを撮ることで初めて分かる病気もありますし、さらにMRI画像に異常がなくても、実際に触れてみて初めて診断できる痛みもあります。
また、痛みの出方や日常生活での困りごとを、詳しく聞かれないまま診察が終わっている方もいます。「歩くと悪くなるのか」「姿勢で変わるのか」といった違いを整理することで、見えてくる原因もあります。
必要な情報がそろわないまま、「問題はない」「仕方がない」と言われてしまう。そうした状態に置かれている方を、私は「腰痛難民」と呼んでいます。
Q. 診断や説明に力を入れている理由を教えてください。
倉石:腰の痛みで来られる患者さんの多くは、「自分の体がどうなっているのか分からない」という不安を抱えています。その状態で治療の話だけを進めても、納得して受け止めてもらうことは難しいと思っています。
実際に、診断や説明をきちんと行うだけで、気持ちが軽くなったり、症状が和らいだりする方も少なくありません。MRIで異常があることが分かって安心される方もいれば、逆に「大きな問題はない」と分かってホッとされる方もいます。
私は、診断や説明は治療の前段階ではなく、治療そのものの一部だと考えています。
なぜ痛みが出ているのか。何が分かっていて、何が分かっていないのか。そこをきちんと共有することで、患者さんは「次にどうするか」を自分で考えられるようになります。
説明を尽くすことは、時間も手間もかかりますが、それを省いてしまうと、患者さんはずっと不安なままになります。だからこそ、診断と説明を丁寧に行うことを何より大切にしています。

Q. 高度な内視鏡手術など、保険適応での提供にこだわる理由を教えてください
倉石:病気で困っている方は、年齢や生活環境もさまざまです。そうした中で、「治療の選択肢が現実的であること」は、とても大切だと感じています。
高度な内視鏡手術は、世界的にはすでに標準的な治療になりつつあります。問題は、それが日本の医療制度の中で、どう位置づけられるかです。
私は、医学的に有効で、安全性が確立されている治療であれば、できる限り保険診療の枠の中で提供されるべきだと考えています。
保険で行うからといって、治療の質を下げるという考えはありません。むしろ、限られた制度の中でどこまで質を高められるかを突き詰めることが、医師の役割だと思っています。
患者さんが「費用のことを理由に、必要な治療をあきらめなくていい」という状態をつくることが、保険適応での提供にこだわる一番の理由です。
Q. 治療全体はどのように組み立てているのでしょうか?
倉石:大切にしているのは、治療の前に診断をきちんとつけることです。
原因がはっきりすれば、どの治療を選ぶべきかは、ある程度見えてきます。
医学的に見て、早めに手術を考えたほうが良い方もいますし、保存的な治療で十分に改善が期待できる方もいます。ですから、治療の順番をあらかじめ決めているわけではありません。
一方で、手術に強い不安を感じている方や、すぐに手術を選ぶことに抵抗がある方もいらっしゃいます。そうした場合には、リハビリやブロック注射などを行いながら、病態や治療の方向性を共有していきます。
ブロック注射は、診断を踏まえたうえで用いることがあります。症状の変化を一緒に確認することで、納得して次の選択に進みやすくなるからです。
治療は、方法を当てはめるものではなく、診断と患者さんの気持ちに合わせて組み立てていくものだと考えています。

Q. 腰痛やせぼねの症状で悩む読者へ、メッセージをお願いします
倉石:腰やせぼねの症状で悩んでいる方の中には、これまで十分に診てもらえなかったと感じている方も少なくないと思います。
私が診療で大切にしているのは、何よりも「品質」です。
学術的な知識、これまでの臨床経験、そして今できることをすべて使って、一人ひとりの状態を丁寧に診断すること。その積み重ねが、診療の質につながると考えています。
きちんと診断を行えば、今の状態が整理され、次に何を考えるべきかが見えてくることもあります。それは必ずしも、すぐに手術を選ぶという意味ではありません。
一人ひとりを大切に診断し、今の状況に合った選択肢を一緒に考えていく。
そのことに、本気で向き合っています。
腰やせぼねの症状で悩んでいる方には、「もう仕方ない」と結論を出す前に、ぜひ一度相談してほしいと思います。
淡海せぼねクリニック
院長 倉石 慶太
