#zzzz:四季は巡る
葬儀の会場は、演技の舞台。
私は、両親が立派に育てた人間として振舞った。
子供の頃から続けていたことだった。
人を欺くことくらい、簡単なことはなかった。
いつもと違ったのは、
常に最前線で演じ続けたこと。
人前で演技を続けるのは、
疲れることを知っていた。
だから意図的に、
必ずひとりになれる時間をつくってきた。
通夜の夜、
母へ宛てた手紙を書いた。
母はもういない。
その実感が、今でもない。
それでも、伝えたいことがあった。
たった一通の便箋。
隙間だらけの手紙。
封はせずに、
そっと胸元に供えて、
一緒に送り出した。
忘れてはならないものがある。
病室で握った手のぬくもり。
膝に抱えたお骨のぬくもり。
母が与えてくれた、最期の愛。
四季は巡る。
今年も、春がきた。
母が好きだった、暖かい季節。
楽しみにしていた、花の写真。
ひとり旅は、これからもつづいていく。
多くの人たちに支えられ、見守られながら。
私は、私の人生を生き抜く。
それが、私に課された罰だ。
罪も愛も顧みず 春はゆく
(Aimerさんの歌う「春はゆく」より)
