【理科室のしくじり】シソの葉がキラキラ光るから「気孔」だと教えたら、まさかの〇〇だった話
中学校2年生の生物分野で行われる「気孔の観察」。
顕微鏡を使った観察では超定番ですよね。
ツユクサやムラサキツユクサを使うのが王道ですが、身近にあって手に入りやすい他の植物でも代用できないかな? と、いろいろ試したくなるのが理科教師の性(さが)ではないでしょうか。
実は数年前、私は身近な「シソ(紫蘇)」の葉を使って、授業で大迷走&大失敗をやらかしました。
全国の先生方に、自戒の念を込めてその「しくじり」と、顕微鏡が捉えたリアルな正体をシェアします。
🔬 「葉の裏がめちゃくちゃ光ってる!」という罠
当時の私は、ふと思ったのです。 「シソの葉って、裏側をめくってみると、なんかキラキラ光る丸い粒がいっぱいあるぞ。これ、もしかして気孔が密集してるんじゃないか!?」
さっそく顕微鏡にセットして覗いてみると、こんな視野が広がっていました。

全体が明るい黄緑色に光り、丸いクレーターのような粒がポコポコと並んでいます。
当時の私は大興奮。 「ほら、シソの葉の裏側には、こんなに綺麗に気孔が並んでるよ!」 と、子どもたちに自信満々に教えてしまったのです。
「やっぱり葉の裏側に多いんだね!」なんて、教科書の知識と結びつけてドヤ顔までしていました。
しかし、授業後に顕微鏡の倍率を上げ、よーーく観察し直したときに、私の背中に冷や汗が流れます。
「……あれ? 唇型の『孔辺細胞』がどこにも見当たらないぞ?」
💧 衝撃の種明かし:気孔ではなく「〇〇」だった
気になって徹底的に調べ直した結果、衝撃の事実が発覚しました。 私や子どもたちが顕微鏡で必死に見ていたあのキラキラした丸い粒の正体。それは気孔ではなく、シソの独特な香りの成分(精油)を蓄えている「腺鱗(せんりん)」、通称 「におい玉」だったのです……!
その証拠に、さらに鮮明に捉えた写真がこちらです。

ご覧ください。赤シソの鮮やかなピンク色の葉脈の間に、まるでガラス玉か水滴のような、ぷっくりとした美しいドーム状のカプセルが立体的に浮かび上がっています。
そう、私たちは気孔ではなく、「シソの香りのカプセル」を見て「気孔だ!」と大騒ぎしていたのです。子どもたち、本当にごめん……!
ちなみに、「葉の裏側に圧倒的に多い」という私の直感だけは合っていました。植物が虫に食べられないように、葉の裏側の守りを固めて香りの成分(忌避成分)を待ち伏せさせているという、シソの生存戦略だったようです。気孔の特徴と奇跡的に一致していたのが、また紛らわしい罠でした(笑)。
ここで、同じ理科の先生方に向けて、形態学的な違いを少しだけ補足しておきます。
そもそも「気孔」は、ご存知の通り2つの孔辺細胞に囲まれた「隙間(穴)」です。 対して、顕微鏡が捉えていた「腺鱗(せんりん)」は、表皮細胞が変化した分泌組織(毛の一種)であり、中に精油を溜め込んだ「立体的なドーム(カプセル)」。
つまり私は、「穴」を探すべき実験で、真逆の「突起物」を必死に観察していたわけです(笑)。そりゃあ、いくら探しても唇型の細胞が見つからないはずです。
さて、その失敗を経て、私は子どもたちの掴みとして、このシソのにおい玉(腺鱗)を授業での仕掛けにしました。
シソの葉を手のひらに乗せて、上から「パンッ!」と勢いよくたたくのです。
すると、一瞬でシソの爽やかな良い香りが広がります。子どもたちは「うおー!」「一瞬で匂いが変わった!」と大喜び。
シソの葉を何枚も用意して、シソの匂いが苦手じゃない子にそれぞれ渡して、「自分でたたいていいよ」と言うと、顕微鏡で観察する姿と、いたるところでパンッ、パンッ手をたたく音が聞こえて面白いです(笑)

これ、合理的に説明すると、手のひらでたたいた衝撃によって、葉の裏にある腺鱗のカプセルが一斉にパチンとはじけ、中の精油が一気に空気中に解き放たれているんですよね。 (当然、パンッとやった後の葉を顕微鏡で見ると、きれいにドーム状のにおい袋は潰れて消えてしまいます。まさに命がけのフレグランス……!)
こういう「五感を使ったリアルな体験」ができるのも、理科室の楽しさですよね。
👑 結論:いろいろ迷走したけれど、やっぱり王道が最強
この手痛いしくじりを経て、私は大いなる教訓を得ました。 「教科書がツユクサを激推しするのには、それなりの圧倒的な理由がある」と。
改めて、王道のツユクサを同じ顕微鏡で覗いた視野がこちらです。

……一目瞭然ですね(笑)。 表皮がペリペリとめくりやすく、細胞の並びもまっすぐで、何より唇型の孔辺細胞と気孔の「開閉」がここまでくっきりと均一に見える。やはりツユクサは王道にして最強の教材でした。
理科室での思い込みや迷走はヒヤッとしますが、高倍率で観察し直したときの「そういうことか!」というあのゾクゾク感(と猛省)は、理科教師だからこそ味わえる醍醐味だなとも感じています。
💬 全国の日々奮闘する先生方へ
教科書通りにいかないのが理科室のリアルですよね。今回の「シソのにおい玉事件」のような、先生方の「実はやらかしちゃった実験エピソード」や「迷走の歴史」がもしあれば、ぜひコメントで教えてください!
また、「うちはツユクサ以外ならこれでやってるよ!」といった、先生ならではの合理的で確実な気孔の観察テクニックのアドバイスもお待ちしております。
お互いの知恵を持ち寄って、授業をさらに楽しくアップデートしていきましょう!
