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ヘッドホン4.4mmバランス接続のその後/珍しい新端子から実用標準へ

 スマホからイヤホン端子が消え始めて、もう何年になるだろう。有線接続はこのまま静かに廃れていく。そう思っていた人も多いはずだ。

 ところが、その予想は半分が当たりで半分はハズレとも言える。スマホ本体から端子は消えた。けれど有線そのものは生き続けている。むしろ本体の「外側」で、進化を続けている。その主役が「4.4mmバランス接続」だ。

 以前、この端子について解説記事を書いた。4.4mmが単なる中間サイズのプラグではなく、JEITA規格 RC-8141Cに基づく5極のバランス接続端子であること。3.5mmステレオ端子の弱点:左右で帰り線(リターン)を共有してしまう構造、を避けられること。そしてDAP、DAC、ヘッドホンアンプの世界で採用が進んでいること。そんな話だった。

 では、その後どうなったのか。

 結論から言おう。4.4mmはもう、「一部の高級オーディオ好きだけが使う珍しい端子」ではなくなりつつある。もちろん、一般のスマホに4.4mm端子が載るようになったわけではない。それどころか、スマホ本体からはイヤホン端子そのものが消えていく流れが続いている。だが、その外側につなぐ小型DAC、Bluetooth DAC、ポータブルアンプ、DAPの世界では、4.4mmはかなり自然な選択肢になってきた。

 ここが、前回の記事から見ていちばん大きな変化である。

4.4mmは「特別な端子」ではなくなった

 以前は、4.4mmバランス端子と聞けば、高級DAPや据え置きのヘッドホンアンプ、本格的なオーディオ機器を思い浮かべる人が多かった。端子もケーブルも少し特別で、足を踏み入れるにはそれなりの覚悟がいる世界だった。

 ところが今は、手のひらに収まるほど小さなUSB Type-C DACにも、当たり前のように4.4mm端子が載る。

 これは小さいようで大きな変化だ。4.4mmバランス接続が、専用プレイヤーを買う一部の愛好家のものではなく、スマホやPCに小さなDACを挿して使う、ごく普通のリスナーにも開かれたということだから。

 スマホ本体に高音質を求めるのではなく、音の出口は外付けの小型DACに任せる。そのDACが3.5mmと4.4mmを両方備えている。こうなると4.4mmは「特殊な追加機能」ではなく、「もっと良い音で聴きたい人のために、最初から用意されている普通の選択肢」になる。

3.5mmは消えない。共存する

 ただ、4.4mmが広まったからといって、3.5mmがすぐ消えるわけではない。今の流れはむしろ、両者の併設だ。

 3.5mmの強みは、圧倒的な互換性にある。古くからのイヤホン、ヘッドホン、スピーカー、ゲーム機、PC周辺機器。以前からあるイヤホンを挿すにも、通話用ヘッドセットをつなぐにも、3.5mmは「便利」を通り越して「必須」の存在だ。これは簡単には無くならない。

 一方の4.4mmは、もっと高出力で鳴らしたいとき、左右の分離を上げたいとき、バランス対応ケーブルを活かしたいときに使う端子だ。

 つまり両者は、競争相手ではなく役割分担の関係にある。

・日常の汎用端子としての3.5mm。
・音質や駆動力のための4.4mm。

 この二本立てが、いちばん現実的な落としどころになっている。

2.5mmバランスは、静かに引退する

 かつてポータブルオーディオのバランス端子といえば、2.5mm 4極もよく使われていた。小ささは利点だったが、いかんせん細くて華奢で、「いつか折れるのでは」と不安を抱く人も少なくなかった。

 その点4.4mmは、2.5mmより太くて物理的な安定感がある。それでいて6.35mmほど大げさでもない。ポータブル機にも載せやすく、据え置き機にもなじむ、ちょうどいいサイズだ。結果として、これから新しくバランス接続を始めるなら、2.5mmより4.4mmを選ぶほうが自然になってきた。

 もちろん、すでに2.5mmのケーブルや機器を持っている人が、慌てて買い替える必要はない。ただ、これからケーブルを、DACを、ヘッドホンアンプを新調するなら、もう4.4mm対応を基準に選んでいい段階に入ったと思う。

Bluetooth DACに4.4mmが載るという面白さ

 最近の動きで個人的に面白いのは、Bluetooth DACにまで4.4mmバランス出力が載ってきたことだ。

 一見すると、ちぐはぐに思える。せっかく無線でつないでいるのに、最後は有線のイヤホンやヘッドホンを挿すのだから。けれど実際に使ってみると、この構成はかなり理にかなっている。

・スマホとはワイヤレスでつなぐ
・音の出口は手元の小型DACに任せる
・そのDACから、お気に入りの有線ヘッドホンを4.4mmで鳴らす

 こうすれば、スマホ本体に端子がなくても、有線ヘッドホンはちゃんと活きる。しかもスマホはポケットやバッグに入れたまま、手元のDACで音量まで操作できる。

 これは単に古い有線機器を延命する小細工ではない。有線の音質と、無線の身軽さを、一台で両取りする発想だ。

 完全ワイヤレスイヤホンは便利だが、バッテリーの寿命、音質、遅延、接続の安定性に、どこか不満が残ることもある。そう考えると、有線ヘッドホンを小型Bluetooth DACで鳴らすこの方式は、なかなか現実的な折衷案なのだ。

「4.4mm=高音質」ではない、という注意

 ただし、注意点もある。

 4.4mm端子があるからといって、その機器が必ず良い音を出すわけではない。音質を決めるのは端子の形ではなく、DACチップ、アンプ回路、電源設計、出力インピーダンス、ノイズ対策、そしてヘッドホンとの相性だ。

 しかも、見た目は同じ4.4mm端子でも、中身の回路は製品によってまるで違う。本当に左右独立のバランス出力として作り込まれたものもあれば、互換性や端子の都合を優先しただけのものもある。だから購入時は「4.4mm端子あり」の一行だけで判断せず、「バランス」「出力値」「対応インピーダンス」「クロストーク」あたりの仕様まで目を通したほうがいい。

 それともう一つ。3.5mm用の普通のケーブルを、安易な変換アダプタで4.4mmバランス出力に挿すのは避けたい。バランス出力は左右の+/−を独立して扱うため、配線が合わない変換をすると、音質が落ちるだけでなく、機器に負担をかけかねない。

 4.4mmを使うなら、ヘッドホン側もリケーブルできること、そして4.4mmバランス用として作られたケーブルを使うこと。ここは押さえておきたい。

これから買うなら、どう考えるか

 では、これからDACやヘッドホンアンプを買うとして、4.4mm対応は必要だろうか。

 私の考えはこうだ。少しでも音質や将来性が気になるなら、4.4mm対応機を選んでおく価値は高い。

 特に、PCで音楽を聴く、ゲームをする、動画を見る、編集作業をする、長時間ヘッドホンをつけている:そんな人ほど、外付けDACやヘッドホンアンプの効果はわかりやすい。そのとき3.5mmだけの機種より、3.5mmと4.4mmを両方備えた機種を選んでおけば、あとから周辺機器を更新するときに身軽だ。

 逆に、すでに3.5mmで十分満足している、使っているイヤホンがリケーブル非対応、音量にも不足を感じていない:そんなケースなら、急いで4.4mm化する必要はない。4.4mmは魔法の端子ではない。対応する機材を組み合わせて、はじめて力を発揮する規格だ。

 すぐ飛びつくものではない。けれど、これから環境を整える人が無視するには、もう惜しい存在になった。

まとめ

 イヤホン/ヘッドホン端子の歴史は、6.35mmから3.5mmへ、そして無線へ、という一本道だけではない。その傍らで、有線接続をもっと良くするための新しい標準として、4.4mmが静かに発展を遂げつつある。

 スマホから端子が消えても、有線の魅力は消えなかった。むしろ4.4mmという規格が落ち着いてきたことで、有線オーディオの未来は、もういちど面白くなってきた。そう言っていいと思う。


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