季節の果物ひとつで満たされる夜
禁欲主義というわけではないのだが、お酒はもう卒業した。お祝いなど、どうしてもの時に、少し頂く程度である。
なぜなら、身体が痒くなるからだ。
後頭部は、髪をむしりたくなるほど痒くなる。手も足の脛も痒い。アレルギーとは少し違う気がしているが、日々の服薬で肝臓がお疲れなのかもしれない。
とにかく、お酒を飲んで楽しい気持ちよりも、あの痒さとだるさのほうが勝ってしまう。だから、もう積極的に飲みたいとは思わなくなった。
アイスもほとんど食べない。
知覚過敏だから。そして身体が冷えるのが苦手だからだ。
それに、だんだん甘すぎるものが苦手になってきた。舌にまとわりつくような甘さが重たく感じる。チョコレートも最近は少しで十分だ。昔は「あほか」というほど食べていたのだから、人は変わるものである。
その代わり、だんだんと子どもの頃は苦手だったはずの和菓子を好むようになった。あんこ、黒糖花林糖、きなこ餅。信玄餅は特に好きだ。
コーヒーも最近は飲んでいない。
少し前までは、次男と一緒に豆を買い、ミルで挽いて淹れていたのに、すっかりご無沙汰になった。これは味というより、手間が面倒なだけだと思う。熱意がない。
ジュースはほとんど飲まない。甘い。たまに炭酸が恋しくなってコーラを飲むことはあるが、甘い。最初の数口の、のど越しで十分かもしれない。なぜか、ただの炭酸水には気が向かない。なぜだかはわからない。
その代わり、以前は少し苦手だった紅茶を、ときどき飲むようになった。あとは水と麦茶。シンプルだ。シンプルすぎて、カルシウムが足りなさそう。牛乳を飲め!と思うが……。
こうして並べてみると、生きる楽しみがどんどん減っているような気もする。
けれど、その代わりに最近復活したものがある。
果物だ。
思えば、実家住まいの時は毎食デザートに果物があった。リンゴやブドウ、桃。
我が家は子どもたちにそれぞれ果物アレルギーがあるのでなんとなく遠ざかっていた。しかし最近どうにも恋しくていろいろと買うようになった。桃アレルギーの次男は「いいなぁ」と羨ましそうに見ている。すまない、これは母の楽しみである。君はスイカを食べなさい。
今はもう梨が店頭に並び始めた。
お風呂上がりに食べる、よく冷えた梨。
昔より手放したものは、たしかに増えた。けれど、そのぶん季節の果物ひとつで満たされるようにもなった。
それだけで、「今日はいい一日だったな」と思えるのである。
