育児という分析 04 | 子供を生かすという話
人間として生きるうえで直面する死は大きく2つある。
生物的な死と社会的な死だ。
親として生物的な死から、大切な我が子を遠ざけることは当たり前に行うことだろう。
しかし、社会的な死にはどのくらい干渉するだろう。
子供は大人が思っているよりも、小さいコミュニティで生きている。
家族や友人や親戚、幼稚園や保育園、小学校、中学校、高校。
年齢に応じて広がりはすれど、どれも人間関係の檻の中にいることには変わりない。
そして、そこに親が直接干渉することは、なかなかに難しいものである。
まず、何事も問題が起きてから対処するのはかなり大変だ。
それならば、問題が起こる前にできることをやってみようというのが今回の話である。
まだ、身内と児童館という小さいコミュニティにしか属していない彼女に、私が教えられることは「可愛がられる術」しかない。
人の手を借りなければ何も成すことができない彼女が、その場所で楽しく過ごすためには『大人が彼女を手助けしたいと思うか』が最重要だ、と私は考える。
そこでまず教えられるのは「自分で助けを求められること」だ。
今の彼女が関わる大人は、基本的に彼女の味方である。
そして、か弱いものが味方に気にかけてもらうための最短ルートは、「助けて」「手伝って」のクリアなヘルプを出すことだ。
クリアなヘルプの具体例をいくつか挙げてみよう。
① 届かない位置にあるおもちゃを取ってほしい
② 他の子におもちゃを取られてしまった
③ 他の子が遊んでいるおもちゃが欲しい
④ 描いた絵を見てほしい
⑤ こんな事ができることを褒めてほしい
⑥ ただただ構ってほしい
①②③は分かりやすいと思う。
物理的に無理な困りごとについてのヘルプである。
④⑤⑥は承認欲求を満たすためのヘルプである。
私は、子供が自身を好きになり、大切にし、認めてあげるためには、まず周りが興味を示すことでその子を大切に思っていることを伝え、お互いにそれを認める必要があると思っている。
それを手伝ってもらう、精神的な補助を求めるためのヘルプなのだ。
これらを、私はあえて彼女にさせるようにしている。
人というものは、頼られることに存在意義を見出してしまう生き物だ。
それを上手く利用しようという考えである。
彼女に行動を起こしてもらうとき、今の私がやることは3つだけだ。
・今、誰を頼るのが最適であるかを見極める
・彼女が声をかけやすい環境を整える
・彼女の言葉を相手に通訳する
たったこれだけだ。
察して動いてあげるよりも何倍も楽であるのにも関わらず、彼女の「自分のお願いを聞いてもらえた」という成功体験もおまけで付いてきてしまう。
コスパが良い。
これから人間関係の檻の鍵を持てない立場になる彼女が、苦しみながら檻の外を覗くことがあるかもしれない。
その時に、檻の中から自分へ手を差し伸べてくれる人がいる方向を正しく指す方位磁石を持たせたいのだ。
これはきっと、実家から帰るとき、親が「あれいる?」「これ持って帰る?」と何かしらを持たせてくれる、それに近いのだと思う。
その持たせてあげるものが、形のあるものではなく、ただ見えないものであるだけだ。
この方位磁石が乱れるとき。
それは磁場である私たち親が、彼女に近づきすぎて主体性を奪ったり、離れすぎることで不安や不信感を与えるといったような「干渉」を始めたときだ。
磁場が乱れ、針がぐるぐると回ってしまったら。
それは方位磁石でなく、ただのルーレットなのである。
誰がルーレットで助けを呼びたいなどと思うのか、ましてや大切な大切な我が子に、そんなものを持たせるなど、論外であろう。
この方位磁石が狂ってしまわないように、等距離を保ちながら彼女にたくさんの愛情を注いでいくことが、子供を生かすことにつながっていくのかもしれない。
