マチアプ婚活4人目:「だで」を連発するアラフィフにフラれる
その日は土曜日だったが朝から仕事だった。前夜も帰ってくると11時を回っていて、当日も朝から人に会い、それから前夜終わらなかった仕事を終わらせると、もう待ち合わせに向かう時間だった。
マチアプデートの前夜は、ストレッチやマッサージ、パック、長い入浴などのルーティーンを行うことにしている。いつどんな人に出会うかわからないし、毎回一球入魂の精神で挑むようにしているからだ。しかしこの時はそんな余裕もなく、ヨレヨレのまま化粧だけをして待ち合わせに向かった。
彼はすでに店の前に立っていたのでその人だとわかったが、およそ50歳のはずがずいぶん若い。ふわふわパーマのポップな髪型がちゃんと似合っている。気の抜けたスウェットにおしゃれなハイテクスニーカー、オーバーサイズのダウンも若いが、浮いていない。写真よりも若いのは初めてのパターンである。
タモリや福山雅治も1日一食らしいが、同様の食生活をしているようだ。50に手が届く年齢なのに、30代後半にしか見えない。みなさん、1日一食は本当に若くいられるみたいです。
いわゆる塩顔で感じのいい顔立ちである。身長も低くない。某自動車メーカーの開発職。坂道系ではないアイドルの熱烈なファンらしいが、そのくらいは不問である。(友人曰く、坂道系は処女性を売りにしているが、そのグループはそうではないとのこと。初めて曲を聞いてみてなるほどと納得した)
楽しく話せるコミュ力も持ち合わせている。これでモテないわけがない。
マチアプをやっていての肌感、多くのアラフォー女性がお相手願いたいと思うであろう自分の年齢プラマイ5歳くらいの男性で、未婚子なし、見た目は30代で顔もよく、おまけに某世界的メーカーの研究職となると、もう珍獣の域である。それくらい、アラフォーからアラフィフの男性はみんな離婚歴があったり普通のおじさんだったりする。それでも彼のいいね数は30以下だった。これはまだ世の中に見つかっていないだけなのだろう。
普通初回のマチアプデートは、1時間程度である。それが彼とは二時間、お互いにいろんな話をした。やっと引きがきたと思った。
別れ際、その後について彼は特に何も言わなかった。今度はぜひお食事でもと私から言ってみたものの、それに対しての明確な返事はなく、おやと思った。ラインの交換もなく、別れた。
帰宅し夜になっても彼からの連絡はない。本格的におややである。ググってみると、初回のマチアプデートの後はたとえ無しでもお礼の連絡は礼儀だと出てきた。ならばこちらからとお礼の連絡をすると、そういえばラインの交換をしていませんでしたね!と返事が来た。
なんだ忘れてただけか〜♪と、安心してラインを交換したものの、その後2〜3回のやり取りで向こうから連絡が途絶えた。改めて彼のいいね数を見てみると、50以上に増えている。世界に発見されかけているようだ。あの見た目なら30代後半の女性でもいけそう。そりゃあ彼だって選べるなら、より若くてきれいな人を選びたいだろう。
ラインは気を遣って儀礼的に聞いてくれたに過ぎないみたいだった。だめな時はお互いに余計なことは言わず深入りせず、そのままフェードアウトが正解なのだと知った。
ただ一つ、ラインを交換してよかったことがある。彼と会って話す中で、自信がなくまだ作れずにいた副業用の名刺を作ろうと思ったのだ。彼と会った次の日、何の偶然かデザイナーをやっている友人に会う機会があり、今でしょと彼女に制作を頼んだ。彼のラインの温度感からして、これが最後になるであろうと思ったテキストで、そのことを彼に伝えた。名刺を作れずにいた私の背中を押してくれたのは、間違いなくあの時の会話だった。やはり彼からは返事がなかったが、お礼が言えてよかったと思った。
それだけの縁もある。
私が選ばないことがあるならば、当然選ばれないこともあると改めて知った。では、選ばれなかった私はどこがだめだっただろうか。
仕事の話をし過ぎて彼のママのように家庭的でないと思われたのか、そもそも私よりも若くてきれいな子とうまくいき始めていたのか。彼がその日何度も不思議な温度感でコメントした私のコンサバな服装が好きではなかったのか。(当日仕事で会った人から社会的な信頼を得る必要があったため、わざとシゴデキな印象を与える格好をしていた)
いろんな考えが何度も消えては浮かんだが、たどりついた結論はこうである。
「私がだめだった」のではなく、合わなかっただけ。同時に、私が選ばなかった人たちにも、合う人がきっといるのだろうとも思った。男女には合うか合わないかがあるだけで、普通のおじさんでも仕事でヨレたアラフォー独女も、決してだめではない。
私が選ばなかった人も、私を選ばなかった人も、私も、みんな幸せになれるはず。
モテないはずがない彼がなぜ未婚なのか。その答えは会話の中にあった気がしている。彼のトピックの大部分はアイドルとママだったのである。特にママの尊大な存在感は、話に聞くだけでゲップが出そうだった。
それから、彼が連発した方言が妙に耳に残った。だでだで、だで。濁音が二つ続く音は強い。めっちゃ言うやん、一緒にいることになればいつか私にもうつるんだろうか、と思った。
彼にフラれたと明確にわかったあと、私は美容課金を心に決めた。老けているだの歯が黒いだの整形疑惑だのと人に言うばかりの立場ではないのだと、実感したからだった。
さっそく友人におすすめの美容クリニックを教えてもらった。歯のホワイトニングも始めたし、来月のカードの利用額が心配だ。
