奥浜名日記⑨『雨のち晴れ。一日の、雨の終わりに』さやのもゆ
5月2日(金曜日)
予報通りの雨が、朝から降り続いている。
でも、夕方には止むとの事で、ひそかに期待していた。
そんなわけで、雨の降っている内から外出して用事をすませーコンビニ休憩していると、果たして西の空から光が差してきたので、いつもの田んぼに直行する。

止んだと思ったらー
いつもの景色を
すっかり変えていた。
車を降りて歩き始めると、さっきまでの曇り空がウソのような、一面の青空が見渡せる。
すでに、西の方から晴れていたのだろうが、いまだに風は残っておりーのみならず、過ぎ去った雨もまた、大きく景色を変えていた。
ここは、広い田園地帯なので、長い雨で冠水すると、大きな池になる。水面(みなも)には、顔を出した草花がツンツンと生えそろい、湿原の池塘(ちとう)を思わせるそれに、変っていたのだ。
初夏になって、日没は遅くなったけれどー雨上がりに出現した、今日限りの池ときたらーなんとまた、水の青が深いことだろう。
見れば、まだらに白いものが沈んでいる。何だろう?と、考えるより先に、ハッとして空を仰ぐーそうか、ちぎれ雲が水に映っていたんだと、気づいた。

田んぼの間を、細葉の生け垣に沿ってまっすぐ西へ進む。道はところどころで水溜まりの池を作っているので、浅いところを選んで歩いた。生け垣が囲む畑には、雑草に覆われた区画もあるのだけど、草花がが生い茂るなかから、頭ひとつ抜きん出ているものがそそり立っている。
それは、つい最近ウォーキング中に、母から通称で教わった「ギジギジスッパ」であった。
雑草というものは、不思議なものでー。
いちど顔と名前を知ったが最後、何故かは知らないがー知った途端、あちこちにピヨピヨと、
生えてくるものなのだ。
しかし、紅い花芽だった頃と比べると、穂先の増殖した姿には、さすがに可愛げがなくなった。が、西日を受けて風と揺れる草原のように見立てると、なかなかに風情がある。

ギジギジスッパ、再び。
知ったが最後、
ギジギジスッパが増えていく?
畑をすぎて、道の両側が田んぼになるとーこの辺りは、まだ草地が残っておりーあちこちの草むらから、何羽かのケリが飛び立っては空を旋回し、畑に降り立つのを繰り返していた。
時おり、向かい風の抵抗に仰向いては、全身にうけとめていてーその瞬間に羽を広げた、白い姿にはー思わず見とれてしまう。
川の土手に突き当たったところで、鉄橋を潜る道に降りていくと、長雨の割には道が冠水していなかったので、ホッとした。
もちろん、母のように川っぷちの縁石を渡る勇気が無いからだ。
鉄橋の先で土手の上に出ると、丈高い枯草の間から、遠く東から南へと、景色がひろがる。
奥浜名をめぐる、弓張(ゆばり)山系の山々。
その山肌を埋めるように、椎の花が咲いておりー。
初夏の残照をいま少し、留めているかのようだった。

