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リトル・ピィーティー / Little PT

Little PT(リトル・ピィーティー)は、フラット・シャッド・ベイツ(Flat Shad Baits)のソニー・マクファーランド(Sonny McFarland)による代表作であり、テネシー系フラットサイドを語る上で欠かせない伝説的ルアーの一つです。
本稿では、自分なりに調べた内容を整理してまとめます。

1. テネシー・バレーにおけるフラットサイドの文化的背景

Little PTの物語を理解するため、まず発祥の地とされるテネシー州東部の釣り文化を確認します。
Chickamauga、Douglas、Fort Loudoun、Watts barといった湖を擁するこの地域は、ハンドメイド・ウッドルアーの聖地として知られています。
1970年代から80年代にかけて、地域の多くのアングラーが、既存のプラスチックルアーでは攻略しにくい低水温期やハイプレッシャーの状況を打開するために、独自のルアーを削り始めました。

2. 「ムーンシャイン」と呼ばれたハンドメイドルアー

この地域におけるハンドメイドルアーの歴史を語るうえで欠かせない人物が、ジョン・モロウ(John Morrow)です。FLWの名手アンディ・モーガン(Andy Morgan)が、MLFの記事の中でその存在に触れています。
モロウはプラスチック製ルアー「Big-O」をバルサ材で削り出して自作し、実釣に用いていたとされます。そのルアーは多くのアングラーから高く評価され、やがて彼のコンセプトを踏襲したビルダーたちが各地で製作を始めるようになりました。そうした試行錯誤の積み重ねが、優秀なルアービルダーを育む土壌になったといいます。

そうしたビルダーのひとりに、モーガンが「ピート」と呼んでいた仲間がいました。記事の中でモーガンはこう語っています。
「みんな彼のルアーを『ピーティー』と呼んでいたんだ。丸いリップとフラットサイドのプラグで、そのルアーでトーナメントに何度も勝ったよ。一年のある時期は、ピーティーを使っている人間に勝てるやつはいなかった。」

この『ピーティー』が、ペイト・レイノルズ(Pete Reynolds)であり、そのルアーこそが、Little PTに大きな影響を与えた「Little Petey」でした。
当時、レイノルズのような優秀なビルダーのルアーを入手するのは容易ではなかったそうです。

これらのルアーは一般の釣具店に並ぶことは少なく、地元の限られたアングラーの間で「ムーンシャイン(密造酒)」のように取引されていたと言われています。
職人が住む山奥まで足を運び、さらに個人的なコネクションがなければ入手できないという、極めてアンダーグラウンドな存在だったとされます。
この「秘密のルアー」という属性が、のちにLittle PTが獲得していく伝説的ステータスの土台になりました。

3. ソニー・マクファーランドの「Little PT」

レイノルズの設計思想は、過度なアクションを抑えつつ、フラットな側面による視覚的な明滅効果を最大化することに重点が置かれていたとされます。
この思想は、のちにソニー・マクファーランドがLittle PTを設計する際の土台になったと考えられます。

ソニー・マクファーランドは、ペイト・レイノルズの「Petey」に強い影響を受けながらも、単なるコピーとしてではなく、自身のブランド「フラット・シャッド・ベイツ(Flat Shad Baits)」において、より洗練された実戦的ルアーへと昇華させました。それが「Little PT」です。

バルサ素材は高い浮力とレスポンスの良さからルアー素材として理想的である一方、極めて脆弱であるという欠点も抱えていました。
FLWツアープロのクレイグ・パワーズ(Craig Powers)はMLFの記事の中で、「従来のバルサ・ルアーは岩や障害物に当てると破損しやすく、そこから浸水してアクションが損なわれる事が常態化していた」と語っています。

マクファーランドはこの問題を解決するため、バルサ材のプラグをはるかに耐久性の高いものにする製法を開発しました。
ペイント前のバルサボディを特殊溶液に何度も浸す(ディッピング)ことでウッド内部まで浸透させ、表面を硬化させる手法を確立したとされます。
この工程により、バルサ特有のキレのあるアクションを維持したまま、リップラップや橋脚といった固いストラクチャーへの接触にも耐えうる耐久性を実現しました。

また、バルサよりも比重の重いシダー(杉)も取り入れ、最終的には、シダー製をオリジナル、バルサ製をクラシックとラインナップしました。

4. サーキットボードリップ(基盤リップ)の採用

マクファーランドのもう一つの大きな貢献は、リップ素材にサーキットボード(基盤材)を採用した点にあります。
当時、多くのルアーがプラスチックやポリカーボネイトのリップを使用していましたが、マクファーランドはより薄く、より強靭なサーキットボードを用いることで、ルアーの立ち上がりの速さと水中での微細な振動の伝達率を大きく向上させたとされます。

5. 突然の失踪と伝統の継承

ソニー・マクファーランドは長年にわたってクランクベイトを作り続け、Flat Shad Baitsというブランドを築き上げました。しかしある時期を境に表舞台から姿を消し、その消息は謎に包まれています。
雑誌『アウトドア・ライフ(Outdoor Life)』によれば、東テネシー州はかつて治安の悪さや閉鎖性で知られた地域であり、弟子たちも師の連絡先を頑なに明かさなかったといいます。幼少期から師事し、事実上マクファーランドの事業を継承したとされるロブ・コクラン(Jaw Jacker Lures)でさえ、電話には応じてもらえなかったと伝えられています。
コクランはバルサ材の選別眼、ディッピング溶液の調合、リップの取り付け角度の微調整など、数値や言葉では容易に伝えられないノウハウを含めて、師匠の技を継承しているとされます。

6. 影響を受けた派生モデル

Little PTの成功は、多くのアングラーやルアービルダーを刺激し、数多くの派生形やクローンモデルを生み出しました。
これらのモデルはLittle PTの基本設計を尊重しつつ、それぞれのビルダーの解釈や特定条件への最適化が加えられています。
ご参考までに、いくつかのブランドをご紹介します。

  • ジョー・ジャッカー・ルアーズ(Jaw Jacker Lures) /  PT

  • テネシー・タフィー(Tennessee Tuffy Baits Inc.) /  Little PT

  • バック・クリーク・ルアーズ(Buck Creek Lures) /  Dinky Donker

  • トリビュートルアーズ(Tribute Lures) /  Lil-Petey

7. 現在の市場での入手可能性

『秘密のクランクベイト』以降、日本のショップでも取扱いがあった為、ヤフオクやメルカリでも比較的よく見かけます。
派生モデルとして挙げたルアーの方が入手困難かもしれません。
ビルダーの高齢化により、新規入荷はあまり期待できませんが、日本のビルダーによるクランクベイトにもLittle PTの影響を受けた優れたプロダクトが多数存在します。

8. 終わりに

プラスチックの成形技術の向上により、量産品においてもPetty typeが多く登場し、「ムーンシャイン」のような取引を経ずとも、手軽にすばらしいルアーを入手できるようになりました。
そういったルアーを世に送り出す方々のおかげで、受け継がれてゆく作り手の精神に触れることができるのは、本当にありがたいことだと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。


引用・参考

Flat-Sided Crankbait History

Tournament Tested: Homemade crankbaits

Monky Brain Blog

本稿は、公開されているオンライン情報源、フォーラム投稿、eBay商品説明、追悼記事、そしてルアーコミュニティの証言をもとに作成しました。
二次的な証言も用いているため、不正確な情報が含まれている可能性があります。

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