The Lost Universe 古代の巨大陸性鳥類③巨大フォルスラコス類
前回の記事でご紹介したガストルニス類は植物食性の傾向が強く、積極的に他の動物を襲うことは少なかったと考えられています。ですが、古代の陸上鳥類の中には、俊敏かつ強力な恐ろしい捕食者たちも存在していました。
ものすごいスピードで地を駆け、鋭利なクチバシと爪で獲物を仕留める「フォルスラコス類」の勇姿は、祖先である肉食恐竜たちと重なります。当時の哺乳類を震え上がらせた最恐の鳥類の実像、先端研究を読み解きながら迫っていきたいと思います。
フォルスラコス類とは何者か?
スピードと攻撃力に秀でた「恐鳥類」
恐鳥類。またの名をテラーバード。古生物にお詳しい方ならば、その呼称に聞き覚えがあると思います。
新生代に栄えた陸性鳥類は、祖先である獣脚類と酷似した形態や生態を獲得します。彼らこそが恐鳥類であり、新生代を代表する捕食動物の一群です。なお、恐鳥類という呼称はあくまで俗名であり、正式な分類群の名前ではありません。

肉食性の陸性鳥類として新生代に名を馳せた種族は、「フォルスラコス類」という恐鳥類のグループです。本分類群は肉食性の傾向が強く、高速走行して獲物を捕らえる疾駆性のハンターです。フォルスラコス類の化石は大半が南アメリカ大陸から発見されており、約4300万~約2万5000年前(始新世中期~更新世後期)の永きにわたって繁栄していたと判明しています。分類不祥のやや疑わしい化石標本も含めれば、最古の種類の産出年代は約5300万年前(始新世前期)に遡り、最も新しい種類は約1万8000年前(更新世後期)に生きていた可能性があります。
大型フォルスラコス類は地面から頭までの高さが約3 mにも及び、サーベルタイガーなどの大型肉食動物とも十二分に渡り合いながら栄えていました。機動力と攻撃力では肉食哺乳類に勝るとも劣らず、フォルスラコス類は南アメリカ大陸の頂点捕食者であったと思われます。

スピードと攻撃力は一級品。フォルスラコス類は時速50 kmで走行可能という研究結果も発表されており、彼らに見つかったら最期、よほど俊足の動物でない限り逃げ切れません。その強靭な脚力は、狩りの際にも発揮されたと思われます。
現在の陸上鳥類ヒクイドリの脚の爪は極めて鋭く、必殺のキックで天敵の体を切り裂きます。はるかに強大な大型フォルスラコス類のキック、大型動物にも大ダメージを与えたと思われます。強靭な脚は斬撃を繰り出すのみならず、獲物を押さえつける際にも役立ったはずです。


フォルスラコス類のクチバシの骨は強く癒着していて、構造的に縦の動きに優れており、突っつく攻撃が得意だったと思われます。状況によってはキックと併用し、獲物にすさまじい打撃と斬撃を浴びせたことでしょう。必殺の凶器を装備し、大地を猛スピードで疾駆するフォルスラコス類は、生態系の上位捕食者にふさわしい戦闘力の持ち主なのです。


強力な陸上のハンターである恐鳥類。いったい、彼らは系統的にどの種類の現生鳥類と近いのでしょうか。実は、フォルスラコス類の近縁種族はかなり意外なグループなのです。
王者の道たるフォルスラコス類の進化
これまでに発見されたフォルスラコス類の化石標本の中には、保存状態の良好な骨格もあれば、断片的で本当にフォルスラコス類なのか疑わしい疑わしい標本もあります。現時点の古生物学において、確実な最古のフォルスラコス類とされる標本は、約4300万年前(始新世中期)のアルゼンチンから産出した後脚の骨の一部です。彼らの起源には謎が多いものの、膨大な調査と研究によってフォルスラコス類の進化系統は徐々に明らかになってきています。
実は、フォルスラコス類は現生鳥類ノガンモドキ類と近縁であり、「ノガンモドキ目」というグループにフォルスラコス科が含まれています。現生のノガンモドキは飛行能力を備えているものの、地上を駆け回って狩猟する習性があり、彼らの生態行動はフォルスラコス類を彷彿とさせます。


広い意味で言えば、ノガンモドキ類はハヤブサ類やスズメ類と近縁です。ノガンモドキ目にはフォルスラコス科を含めて複数のグループが存在していましたが、進化史の中で多くの種族は絶滅し、現存しているのはノガンモドキ科の1系統のみです。
前述の通り、フォルスラコス類は新生代の末期まで永く栄え続けました。南アメリカ大陸でサーベルタイガーなどの肉食哺乳類が現れても、フォルスラコス科は堂々と渡り合って、一歩もひかずに生態系の上位に立ち続けました。フォルスラコス類の衰退は決して他種の動物たちとの生存競争ではなく、複合的な環境要因があったと考えられ、より多くの調査と研究が必要になると思われます。

恐鳥類の名にふさわしく、それ以上の恐ろしさを発揮しつつ、大地を力強く駆け回るフォルスラコス類。かつてのティラノサウルスのように、巨大な陸鳥たちは生態系の上位に君臨していました。本グループの大型種ーー猛者中の猛者とは、どのような巨鳥だったのでしょうか。
巨大フォルスラコス類
デヴィンケンズィア ~圧倒的パワーで陸上動物を狩るヘビー級の恐鳥類~
フォルスラコス類の頭骨には大まかに見て2つの形態があり、原始的な形質を有するタイプと、頑丈で力強いクチバシを備えるタイプが知られています。後者の特徴は大型種で多く認められており、アルゼンチンとウルグアイで発見されたデヴィンケンズィア属(Devincenzia)においても、その形質が顕著に見られます。
デヴィンケンズィアは中新世前期~鮮新世前期の永い期間にわたって栄えていたと考えられており、さらには更新世前期の地層からも本属の化石の発見報告があります。上記の情報を統合すると、少なくとも約2300万~約500万年前までデヴィンケンズィアの栄華が南アメリカにて継続していたと思われます(約258万年前よりも新しい時代にも生息していた可能性あり?)。哺乳類たちが急速に進化している時代においても、フォルスラコス類は見事に生態系の上位捕食者の座を守り続けたのです。
デヴィンケンズィアの推定体高(地面から頭までの高さ)は約2.5 m以上。大型個体では体重が約350 kgにも達したと産出されており、ライオンやトラよりもはるかに巨大です。強靭な脚とクチバシから繰り出される攻撃の威力はすさまじく、デヴィンケンズィアはオオナマケモノ類や大型齧歯類などの哺乳類を襲っていたと思われます。

当時の生態系において、強大なデヴィンケンズィアは頂点捕食者の一角でした。猛スピードで走って様々な種類の大型動物を狩り、ときには他の肉食動物から強引に獲物を奪うこともあったかもしれません。背の高いデヴィンケンズィアが本気で威嚇すれば、哺乳類たちは恐れをなして逃げていったことでしょう。
たとえサーベルタイガーと遭遇しても、デヴィンケンズィアの巨体とパワーならば十分に対抗できたはずです。ダチョウがライオンを蹴り倒すように、デヴィンケンズィアのキックならサーベルタイガーを撃退できたと思われます。強力な大型フォルスラコス類たちの姿には、中生代の恐竜たちの面影が重なります。

恐るべき強さを有するデヴィンケンズィア。実は、猛者だらけの恐鳥類の中には、本種と肩を並べる捕食者が存在しています。南米の地を闊歩した究極の捕食者の実像に、どんどん迫っていきましょう。
ケレンケン ~俊足かつ強靭! 肉食恐竜のごとく猛る究極捕食者~
時速50 km以上の猛スピードで大地を走り、必殺のクチバシと爪で大型の獲物を仕留めるスーパーハンター。そのイメージを強く体現している種類が、太古のアルゼンチンに生息していた大型恐鳥類ケレンケン・グイルレルモイ(Kelenken guillermoi)です。本種の化石は約1500万年前の地層から産出しており、当地の高校生の方によって発見されました。
ケレンケンの頭骨の長さは71.6 cmにも達しており、鳥類の中でもトップクラスの大きなクチバシの持ち主です。推定される体高は約3 mもあり、間違いなく当時の生態系の上位に立つ捕食者でした。


ケレンケンの頭骨は頑丈で力強く、クチバシの打突攻撃で大型動物を倒せたと思われます。そして、脚の構造からケレンケンはかなりの高速で走行できたと考えられており、素早い獲物を追跡して仕留めることも可能でした。スピードと攻撃力を併せ持つケレンケンは、まさしく南アメリカ大陸の覇者なのです。
当時の南アメリカ大陸にはボルヒエナ類などの肉食哺乳類も存在していたものの、体格ではケレンケンの方がずっと大きく有利でした。生存競争においては、大型フォルスラコス類に対抗できる種類は少なかったと思われます。ケレンケンの強さと威光は、哺乳類を圧倒していたのです。

祖先である肉食恐竜の強さを受け継ぎ、地上で猛威を振るった超強力なフォルスラコス類たち。彼らは数々の哺乳類や爬虫類と戦い続け、見事に繁栄を続けてきました。恐竜たちの魂は、新生代になっても強く輝いていたのです。
そして、植物食性の鳥類からも、とてつもない大型種が生まれていました。彼らの中には、「神話上の鳥ロック」のモデルになった巨鳥もいます。次回は、鳥類史上最大最重クラスの植物食性の陸鳥たちについて考察していきたいと思います!

【前回の記事】
【参考文献】
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我孫子市鳥の博物館の解説キャプション
東武動物公園の解説キャプション
特別展「ヨコハマ恐竜展2026~恐竜の食卓大図鑑~」の解説キャプション
