ヘルシンキ中央駅 / Eliel Saarinen - 01
フィンランドを訪れる旅行者の多くが、空港を出たあとに最初に目にする建物がヘルシンキ中央駅です。フィンランド人建築家、エリエル・サーリネンによるこの駅舎について少し書いてみたいと思います。
(本文は筆者が サーリネンとフィンランドの美しい建築展 に寄稿した解説文に修正を加えたものです。)

国内外から多くの旅行者が訪れるヘルシンキ中央駅は、線路とプラットフォームを囲む終着駅らしいU字型の駅舎と、その東側に付随する管理事務棟によって構成されています。

画像上方が西向き
Bruno Granholm, Public domain, via Wikimedia Commons
U字の底辺には東西の屋外広場を結ぶコンコース と、その中央に直交するように配されたエントランスホール、エントランスホールの両脇には待合ロビーとカフェが置かれかれています。
(待合ロビーとカフェは、現在は別の機能に置き換わっています。)
建物の象徴であるエントランスホールは鉄筋コンクリートで作られたフィンランドで最初の公共建築物であり、ヴォールトの天井と照明、そして装飾とが一体となった空間です。
細やかな装飾は壁や天井とともにベージュ色で統一されているため、それまでのサーリネン建築の装飾と比較してとても控え目な印象に見えますが、それゆえに、ヴォールト自体の形状や空間を際立たせる陰影として装飾が作用しています。

設計コンペにおいて中世のお城や教会を思わせるようであったナショナルロマンティシズム的外観は、実施に至るまでに近代合理主義の影響から簡素化され、エントランスホールのヴォールト形状がそのままファサードに表れる表現に変更さてれています。
19世紀後半の急速な都市化と利用者の増加による必要性から、新しい中央駅の設計コンペが開催されたのは1903年。そこから建物が完成する1914年までの期間はフィンランドの独立(1917年)の前夜にあたる期間です。
「フィンランドらしさ」と「世界の潮流」、そうした国の状況と符号するように、ヘルシンキ中央駅はサーリネンの、そしてフィンランドの建築の、ナショナル・ロマンティシズムから近代合理主義への移行を予感させる建物です。
