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老後の海外移住は本当に幸せなのか?──中田敦彦さんの帰国が話題の今、シニアが知るべき「8つの海外移住の現実」!?

2026年7月、オリエンタルラジオの中田敦彦さん一家が、約5年間のシンガポール生活を経て日本へ帰国したことが話題になりました。理由として本人たちが挙げたのは、子どもの教育や家族のライフステージの変化。一方でネット上には「収入が高いときは税負担の軽い国へ、減ったら日本へ戻るのか」といった、いわゆる"節税移住の限界"を指摘する声もあがりました。

節税効果を狙ったということは、それももちろんあるでしょうが、真相はさておき、この一件が示しているのは、海外移住は「始めること」より「続けること」のほうがずっと難しい、という現実です。
そしてこれは、有名人の話に限りません。私の知り合いも何人か海外移住した人もいますし、成功している人も、失敗して戻ってきている人もいます。

「物価の安い国で、のんびりと第二の人生を」——老後の海外移住は、こんな理想とともに語られます。本当に物価は安いのか???実際、東南アジアには日本の2〜3分の1の生活費で暮らせるエリアもあり、年金だけで悠々自適という話も聞こえてきます。

でも、本当にそうでしょうか。

しかも注意したいのは、中田さんのような現役世代・富裕層の移住と、「年金生活を前提とする老後移住とでは、直面する課題がまるで違う」ということです。中田さん一家がぶつかったのは主に「子どもの教育の出口」でした(おそらく)が、老後移住で重くのしかかるのは、物価・為替・医療・生活費・税金といった、もっと生活に直結するはるかに大きな問題です。

憧れのイメージだけで踏み切ると、数年後に「こんなはずじゃなかった」となりかねません。今回は、東南アジア(タイ・マレーシア・フィリピン・ベトナムなど)への老後移住を例に、判断する前に必ず押さえておきたい現実を整理します。

1. 物価──「安い」のは一部だけという落とし穴

東南アジアの物価が日本より安いのは事実です。屋台の食事、ローカルの交通機関、現地の家賃などは、日本では考えられない金額で済みます。

ただし、注意すべきは「何もかもが安いわけではない」という点です。しかも、ずっと安いわけではない。

日本食材、輸入品、家電、日本と同等の医療サービス──こうした「日本人が快適に暮らすために欲しくなるもの」は、むしろ割高になることが少なくありません。現地の人と同じ暮らしをすれば安いけれど、日本の生活水準を持ち込もうとすると出費は一気に膨らむ。「暮らしのレベルを選べる国」とはよく言われますが、裏を返せば「快適さにはそれなりのお金がかかる」ということです。

さらに、東南アジア各国は経済成長の途上にあり、「物価は上昇し続けています」。「今は安い」が、10年後もそうとは限りません。生活費を抑えるために移住したのに、現地の物価上昇で生活が苦しくなる──このリスクは常に頭に入れておくべきです。

2. 為替──円で受け取り、現地通貨で使う「最大のリスク」

これが、老後移住における最大の落とし穴かもしれません。

日本の年金は「円で支給」されます。しかも、日本で税金が控除されます。それを現地に送金し、「現地通貨で生活する」。つまり、家計は為替レートに丸ごとさらされることになります。

たとえば月20万円の年金を受け取る場合、

  • 1ドル95円なら → 約2,100ドル

  • 1ドル110円なら → 約1,818ドル

同じ20万円でも、円安が進むだけで使えるお金が1割以上減ってしまうのです。

近年のような円安基調が続けば、「移住したときは十分だった年金」が、数年後には「まったく足りない」という事態も起こり得ます。物価が安いはずの国が、円安によって「割高な国」に変わってしまう。年金という固定収入で暮らす高齢者にとって、この為替リスクは軽視できません。

3. 言語──日常会話より「病院と役所」が壁になる

観光旅行なら、片言の英語やスマホの翻訳アプリで十分楽しめます。しかし「暮らす」となると話は別です。

とりわけ厳しいのが、「病院と行政手続き」です。

体調を崩して病院にかかるとき、自分の症状を正確に伝え、医師の説明を理解し、治療方針を判断する──これを外国語で行うのは、若い人でも簡単ではありません。役所での在留手続き、銀行、不動産契約、トラブル対応なども同様です。日常会話ができても、専門用語が絡む場面では通用しないことが多いのです。

そして、加齢とともに新しい言語を習得するハードルは上がります。言葉の壁は、やがて「社会的な孤立」につながります。現地に溶け込めず、日本人コミュニティの中だけで過ごし、結局「日本にいたほうが自由だった」と感じる人も少なくありません。

4. 医療・介護──高齢期にこそ重くのしかかる問題

老後の暮らしで、避けて通れないのが医療・介護です。年を重ねるほど病院との付き合いは増えていきます。だからこそ、移住先の医療環境は最重要の検討項目です。

押さえるべきポイントは3つあります。

「① 公的医療保険が使えない」 たとえばマレーシアには日本のような国民皆保険制度がありません。病気やケガの治療は、民間の医療保険に加入するか、「全額自己負担」になります。日本で住民票を抜いて移住すると、日本の国民健康保険からも外れます。一時帰国して日本の病院にかかっても、その保険は使えません。

「② 海外旅行保険・医療保険には年齢と持病の壁がある」 70歳以上でも入れる海外旅行保険はありますが、高齢になるほど保険料は高くなります。さらに大きな壁が「持病」です。通院中・治療中・服薬中の場合、加入を断られるケースが多いのが実情です。健康なうちは問題なくても、持病を抱えてからでは保険に入れず、医療費をまるごと自己負担せざるを得ない、という状況に陥りかねません。

「③ 医療の質と言語対応」 現地のトップクラスの私立病院は設備も整い日本語対応があることもありますが、費用は高額です。一方、費用を抑えようとローカルの医療機関を選べば、言語や医療水準の面で不安が残ります。「安く、質が高く、言葉も通じる」医療を求めるのは、なかなか難しいのが現実です。

5. 生活費──「見えているコスト」だけで判断しない

最後に、生活費の総額です。家賃や食費が安いことばかりが強調されがちですが、老後移住の本当のコストは、そこに現れない部分にあります。

見落とされがちな費用には、次のようなものがあります。

  • 「医療費・医療保険料」(上でみた通り、高齢期は大きな負担に)

  • 「為替変動による目減り」(円安分は「隠れた出費」)

  • 「日本への帰国費用」(家族の冠婚葬祭、自身の通院などで往復が増える)

  • 「二重生活のコスト」(日本の家や口座を残す場合の維持費)

  • 「物価上昇分」(年々じわじわと効いてくる)

倹約型の生活なら年金だけで暮らせる可能性はあります。しかし、快適さや医療、旅行、日本との行き来まで含めると、「年金収入だけでは足りない」というのが多くのケースです。預貯金や投資収入など、為替と物価の変動に耐えられる「余裕」を持っておくことが、安心して暮らす条件になります。

6. 税金──「移住すれば節税」という思い込みは危険

意外と見落とされがちなのが、税金です。「海外に住めば日本の税金から解放される」というイメージを持つ人は少なくありませんが、実際はそう単純ではありません。老後移住で押さえておくべきは、「所得税」と「相続税」の2つです。

所得税──年金には日本と現地、両方の可能性

海外に移住して「非居住者」になっても、「日本国内で生じる所得には日本で課税されます」。年金もその一つで、原則として支払い時に源泉徴収されます。

ただし、移住先が日本と「租税条約」を結んでおり、その条約に年金条項がある場合は、「租税条約に関する届出書」を提出することで日本での源泉徴収の免除を受けられることがあります。注意したいのは、「タイのように、租税条約はあっても年金条項がなく、この免除が使えない国もある」という点です。移住先次第で扱いが変わります。一方で、移住先の国でも課税されることがあります。多くの国は「その国に年間183日(国によっては180日)以上滞在すると居住者」とみなし、居住者には所得税が課されます。たとえばタイでは、居住者になると国外源泉の所得を国内に持ち込んだ場合に課税対象となる扱いがあります。二重課税は租税条約や外国税額控除で調整されますが、「手続きは煩雑で、自分で管理する必要があります」。さらに、日本の固定資産税などの納付書は海外には届きません。日本に不動産などを残す場合は、「納税管理人」を選任しておく必要があります。

相続税──「移住して10年」が分かれ目

富裕層の相続対策として海外移住が語られることがありますが、老後移住を考えるうえでも仕組みは知っておくべきです。

ポイントは「10年ルール」です。かつては5年でしたが、平成29年の改正で10年に延長されました。ざっくり言うと、

  • 「被相続人(財産を遺す人)と相続人(受け取る人)の双方が、10年を超えて日本国外に住んでいる」こと。加えて「財産も国外にある」こと。この両方を満たして初めて、国外財産が日本の相続税の対象から外れます。

  • どちらか一方でも日本に住んでいれば、原則として「全世界の財産」に日本の相続税がかかります。

  • 「日本国内にある不動産や預金は、居住地に関わらず課税対象」です。

つまり、「移住すれば相続税がかからない」という理解は誤りです。節税を意図するなら、家族ぐるみで10年超の海外居住を続け、かつ日本の財産を国外に移す必要があり、老後移住の現実にはそぐわないケースがほとんどです。しかも、日本の資産を海外へ動かす際には、有価証券等を1億円以上持つ人にかかる「国外転出時課税」(含み益への所得税)という別の壁も存在します。

税制は複雑で頻繁に改正され、移住先の国ごとに扱いも異なります。老後移住を「節税」の観点で考えるのは、専門家(国際税務に強い税理士)への相談が必須と考えてください。

7. 終活──「最期をどこで、どう迎えるか」という一番大切な問い

老後移住を語るとき、最も見落とされがちで、しかし最も本質的なのが「終活」の視点です。移住は「始めること」に目が向きがちですが、老後移住は本来、「人生をどう終えるか」まで含めて考えるべきものだからです。

現地で最期を迎えると決めた場合でも、日本の家族や葬送を望む場合でも、避けて通れない現実があります。

「① 海外で亡くなると、家族に大きな負担がかかる」 移住先で亡くなった場合、現地の警察や病院から在外公館(大使館・領事館)を経由して外務省へ、そして日本の家族へと連絡が届きます。遺族は必要書類を揃えて現地へ向かうことになりますが、「航空券も宿泊も自己手配」が原則。手続きは国ごとに異なり、慣れない土地で、外国語の書類と向き合うことになります。

「② 遺体を日本に戻すには、高額な費用と時間がかかる」 現地で火葬せず日本へ搬送する場合、防腐処理(エンバーミング)を施したうえで空輸することになり、「費用はおおよそ100万〜150万円が目安」とされます。死亡診断書が外国語なら和訳の添付も必要です。「日本のお墓に入りたい」という願いも、実現には相応のコストと手間が伴うのです。

「③ 相続手続きが国をまたいで複雑になる」 海外に不動産や預貯金を残して亡くなると、その財産の調査・手続きは「現地の法律に沿って」進める必要があります。国によっては不動産の所在地の法律が適用され、日本の相続とは別建てで手続きが発生します。海外在住だと戸籍の附票や住民票に海外住所が記載されないなど、日本側の手続きにも思わぬ手間が生じます。遺された家族が、言葉も制度も違う二つの国で相続処理に追われる——これは決して珍しい話ではありません。

こうした負担を減らすには、元気なうちからの準備が欠かせません。具体的には、

  • 「エンディングノートや遺言書」で、最期を迎える場所・葬送・遺体の扱いの希望を明確にしておく

  • 「財産の所在(日本・現地)を一覧化」し、家族が把握できるようにしておく

  • 日本に「納税管理人や連絡役」を立てておく

  • 「現地の日本人コミュニティや在外公館」との接点を持ち、いざというときの相談先を確保しておく

「元気なうちの移住」だけでなく「動けなくなったとき」「最期のとき」を具体的に想像できるか。そこまで描けて初めて、老後移住は現実的な選択肢になります。

8. 「一人残されたとき」──夫婦移住の最大の盲点

老後の海外移住は、多くの場合「夫婦二人で」始まります。二人なら、言葉が不自由でも支え合える。片方が体調を崩しても、もう片方が付き添える。心細さも半分になる。だからこそ成り立っている——それが夫婦の海外移住です。

しかし、ここに最大の盲点があります。「二人が同時に人生を終えることは、まずありません。」 どちらかが先に逝き、どちらかが「一人残される」。この現実に、移住を決める前にどれだけ向き合えているでしょうか。

一人残されたとき、これまで見てきたリスクが「一気に、すべて重くのしかかります」。

「① 言葉と手続きの壁が、二人分そのまま残る」 これまで配偶者が担っていた病院、銀行、行政、契約ごと——そのすべてを、残された一人が背負うことになります。「夫が語学は得意だった」「妻が現地の人付き合いを担っていた」。その役割分担が、片方を失った瞬間に崩れます。しかも、配偶者を亡くした直後の、最も気力が落ちている時期にです。

「② 孤立が、命に関わる」 異国で頼れる人が少ない状況で一人になると、孤立は一気に深まります。話し相手もなく、体調の異変に気づいてくれる人もいない。高齢の単身生活は日本でも大変ですが、言葉も通じない異国では、そのリスクは何倍にもなります。

「③「日本に帰りたくても帰れない」ことがある」 残された側が「日本に戻ろう」と思っても、その頃には日本の住まいを引き払い、人間関係も薄れ、心身も衰えて、「帰国そのものが大きな負担」になっていることがあります。移住した年齢では軽かった帰国のハードルが、10年後・20年後には越えられない壁になっている——これは十分に起こり得ます。

だからこそ、移住を決める前に、夫婦で必ず話し合っておくべきことがあります。

  • 「どちらか一人になったとき、現地にとどまるのか、日本に戻るのか」——その基準をあらかじめ決めておく

  • 「残された側が一人でも手続き・生活が回るか」(語学、運転、金銭管理などを二人とも最低限できるようにしておく)

  • 日本側の「帰る場所」を完全には手放さない(住まい、家族との関係、行政上のつながりを残す)

  • 「子や親族と、いざというときの役割を共有」しておく

「二人で楽しく」の裏側にある「一人になったらどうするか」。この問いに夫婦で答えを出せていないなら、移住はまだ早いのかもしれません。逆に、そこまで話し合えた夫婦なら、どんな選択をしても後悔は少ないはずです。

それでも、移住が幸せになる人・ならない人

ここまで厳しい現実を並べましたが、海外移住そのものを否定したいわけではありません。実際に、現地で豊かなセカンドライフを送っている人は大勢います。

「幸せになりやすいのは、こんな人です。」

  • 年金以外に、為替・物価の変動を吸収できる十分すぎる資産の余裕がある

  • 健康で、持病による保険加入の不安が小さい

  • 語学や異文化への適応を「楽しめる」性格である

  • 現地に友人やコミュニティ、頼れる人脈をつくれる

  • 「合わなければ日本に戻る」という選択肢を残している

  • 最期をどこで迎えるかまで見据え、家族と共有できている

  • どちらか一人になっても暮らしが回るよう、夫婦で備えができている

逆に、「日本より安いから」という理由だけで、退路を断って移住するのは危険です。物価も為替も医療費も、自分ではコントロールできない要素だからです。

まとめ

老後の海外移住は、「憧れ」で語られる一方で、「物価・為替・言語・医療・生活費・税金」という、どれ一つとして軽視できない現実を伴います。

大切なのは、理想のイメージではなく、これらの現実を一つずつ具体的な数字と自分の状況に落とし込んで検討することです。可能なら、いきなり永住を目指すのではなく、まずは数か月の長期滞在で「暮らし」を試してみる。それが、後悔しないための一番の近道かもしれません。

冒頭の中田さん一家の帰国も、まだ中田さんも若いし、見方を変えれば「合わなければ戻る」という柔軟な判断だったのかもしれません。移住を始めることより、続けるか・戻るかを冷静に選べることのほうが、ずっと大切なのです。

海外移住は、ゴールではなく手段です。「どこで暮らすか」より「どう暮らせば幸せか」から逆算して考えたとき、その答えが海外にあるのか、日本にあるのか──。
まずはそこから、じっくり向き合ってみてはいかがでしょうか?僕も海外移住を考えていた時期もあるけど、改めて考えてみると、本当に壁が多い。。。海外に住むのか、田舎に住むのか、都会に住むのか、いろんな選択肢があると思いますが、自分たちのライフスタイルや資産ときちんと見比べて判断する必要がありますね。

梅木智史(うめきさとし)

1978年、大分県大分市生まれ。20歳の頃より「まず修行、そして経営者へ」という明確なビジョンを胸に、キャリアをスタートさせる。本間ゴルフの経営企画室を皮切りに、光通信の社長室・人事本部へ。約7年半にわたり経営の最前線で研鑽を積み、複数社の監査役も歴任。その後、長谷川ホールディングスにて取締役管理本部長に就任し、銀行融資・第三者割当増資を合わせた約90億円の資金調達を牽引するなど、財務戦略の実務家として従事。続いてリグア(現・東証グロース上場)にて営業本部長・マーケティング部長を歴任し、上場達成に貢献。10社のターンアラウンドも手がけた。
2022年6月、AXIAを設立し、独立。現在は財務戦略・資金調達、売上向上体制の構築、組織開発・階層別研修、マーケティング、ビジネスモデル設計など多岐にわたるコンサルティングを展開。防衛省、医療系、店舗系、IT系をはじめとした幅広いクライアントを支援している。年間8,000〜10,000名へのセミナー登壇を重ね、累計受講者数は約50,000名に上る。
「何をするかではなく、誰とするか」「365日24時間営業」を信条に、企業の成長と社会課題の解決を両立させるべく、今日も全力で走り続けている。

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