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テレパシーは存在するか ~量子エンタングルメントと超感覚的知覚~

 以前の記事では、バージニア大学の教授であったイアン・スティーブンソンの著書「Children Who Remember Previous Lives(邦題:前世を記憶する子どもたち 笠原敏雄=訳」に掲載されている前世記憶を語る子供の事例について紹介した。
 同書には、生まれ変わりだけでなく、テレパシーとしか言えないよう事例についても掲載されている。今回はスティーブンソンの著書の事例を引用して、テレパシーの存在について考えてみたい。


1.超感覚的知覚

 私達は通常、既知の感覚器官を通して、情報を知覚する。例えば、文字を読んだり、物を見たり、音を聞いたりすることによって情報が意識に到達する。しかし、そのような通常の情報伝達手段を通した知覚とは考えられない体験・出来事が存在する。五感による作用でも、筋力による作用でも説明できない場合、その体験は「超常的」と表現され、超常的な感覚体験は「超常的知覚」と呼ばれている。テレパシーや予知、透視などは超常的知覚と言われている。

2.テレパシーとは何か

 テレパシーは、心と心の間に起こる伝達であり、思念伝達や読心術とも呼ばれている。スティーブンソンは世界中の超常現象といわれるような事例を2000件以上にわたって調査を行う中で、テレパシーとしか言いようがない事例に出会った。以下でいくつかの事例を紹介する。

3.ハンス・ベルガーのテレパシー体験

 イェーナ大学の教授・学長を務めたハンス・ベルガーは、19歳の学生時代に軍事訓練中、大事故に遭ったが、遠方にいた姉がその事故を察知したという。その出来事について本人が報告を書いており、以下に引用する。

『ヴュルツブルク付近で軍事教練中、大事故に遭い、九死に一生を得たことがあった。切り立った峡谷の縁を道路が走っており、そこを通過中に馬が棒立ちになってひっくり返り、そのため私は道に倒れ込んで砲架の車輪のほぼ真下に入ってしまった。その大砲は六頭の馬で引っ張っていたが、間一髪のところで止まってくれたので、 恐ろしい思いをしたことを除けばかすり傷ひとつ負わず、車輪の下から這い出すことができた。』
『その日の夕方、私は、父から電報を受けとった。無事を問い合わせる電報であった。あとにも先にも私はこの時以外、そのような問い合わせをもらったことはなかった。常日頃、特に仲よくしていた長姉が電報を打たせたのだった。私が事故に遭ったのはまちがいない、といきなり父に向かって口走ったためだという。当時、私の家族はコーブルクに住んでいた。これは、偶発的テレパシーの一例である。あやうく死にかけるほど危険な目に遭って、まちがいなく死ぬ、と思った瞬間私は思念を送り、特に仲のよかった姉がそれを受け止めてくれたのである。』

イアン・スティーブンソン「前世を記憶する子どもたち」

 ベルガーはこの体験に大きな影響を受け、天文学者になる夢をあきらめ、心と物質の関係の研究に生涯をささげる決意をし、その後、脳波の発見という偉業を遂げた。

4.L・L・ワシリエフのテレパシー体験

 次に、レニングラード大学で生理学の教授であったL・L・ワシリエフの事例を紹介する。以下にワシリエフの言葉を引用する。

『当時、私は12歳で、高校2年に進級したばかりだった。私はブスコフからあまり離れていない山小屋に出かけた。重い肝臓病をもつ母は、カルルスパートまで父と湯治に出かけており、私は弟妹とともに叔母たちのもとに預けられていったのだった。私たち子どもは、ふだんよりも行動の自由が与えられ、その自由を満喫していた。ある日の夕方、木に登って洪水を逃れたというグラント将軍の息子たちをまねした冒険ごっこをやろうということになった。よじ登る木には、川の上にせり出した岸辺の大きな柳を選んだ。私がパガネルの役をすることになったが、役になり切ったあまり、パガネルと同じように木から川に落ちたのだが、泳げないため溺れ始めた。かろうじて枝をつかんだおかげで、切り立った岸にようやくの思いで辿りついた。弟と妹は、この出来事を木の上から凍りついた面持ちで眺めていた。叱られることはまちがいないので、そのことが私たちには特に心配の種だった。この冒険を叔母たちに隠し通すことはできなかった。私はずぶ濡れなっていたし、白いひさしのついた真新しい学帽が――誇りと愛着の対象が―― 川に流されてしまったからだ。家に戻ると、若い叔母たちは同情して、この件についてはカルルスパートに知らせないことにしてくれた。』
『ところが、母はやって来るなり、この出来事の一部始終を物語り、例の柳の木を指差したうえ、学帽が堰まで流されたことなどをことごとく言い当てた。その時の私たちの驚きや狼狽ぶりはご想像いたるであろう。母は、カルルスパートでことの一部始終を夢で見て、とり乱し、涙を流しながら目を覚まし、子供たちの無事を問い合わせる電報をすぐに打ってほしいと父に頼んだ。』

イアン・スティーブンソン「前世を記憶する子どもたち」

 ワシリエフの体験も、ハンス・ベルガーの体験と同じく、生命の危機を感じた際に、遠方にいる肉親に思念が伝わったという事例である。

5.テレパシーと量子エンタングルメント

 以前の記事で量子もつれについて紹介した。量子エンタグルメントとも呼ばれる、この現象は一度ペアになった粒子どうしは、どんなに引き離されても、瞬時にコミュケーションをとれる現象をいう。ここでいうペアになった粒子とは、もともと同じ原子核の周りを回っていた2つの電子が叩き出されて、違う方向に飛んでいったペアなどのことである。広大な宇宙の反対側に引き離されても、原理的には結びついており、そこで一方の粒子に何か作用を加えると、もう一方の粒子が瞬時に反応する。量子もつれはノーベル賞科学者のアラン・アスペらの実験によって科学的に証明された現象である。 
 量子エンタグルメントは、常識からは信じ難い、テレパシーのような量子の相互作用である。それでは、量子エンタグルメントを根拠にして、上述の人間同士のテレパシー現象を説明できるのであろうか。現時点では答えは否であり、量子エンタグルメントを根拠にした人間のテレパシーの存在証明はなされていない。
 しかし、量子エンタグルメントを根拠に、テレパシーの証明ができていなくとも、量子力学の発展は、テレパシーという超常現象を考える上での示唆を与えてくれている。私達は現在、通信技術の発達により、電話やメール、SNSなどでリアルタイムで他人とつながることが可能であるが、それはケーブルや電波という媒体を通じて情報伝達されているため、完全なリアルタイムではなく、わずかなタイムラグが発生している。しかし、量子エンタグルメントでは、全くのタイムラグ無しに、瞬時にお互いの粒子の状態が認識できている。例えば、ペアの二つの光子は、上向きと下向きだったとした場合、そのペアの二つの光子を、引き離して実験すると、測定結果ではペアをなす二つの光子には瞬時に相関が発生する。一方の光子が上向きだと、もう一方は下向きになり、一方の光子の向きを逆転してやると、他方の光子の向きも瞬時に逆転する。アインシュタインの相対性理論によると、光の速度より速く動くものは存在しないとされているが、量子エンタグルメントでは光の速度よりも速く情報伝達されているのである。量子エンタグルメントでは、古典物理学が物質と認めたもの以外の何か、つまり非物質的な何かが情報伝達しているのであろう。上述したようなテレパシーという現象は科学的実験による証明がなされたとは言えないが、事実としては発生しているのであり、量子エンタグルメントと同様に、古典物理学が物質と認めたもの以外の、非物質的な何かによって情報伝達されているのであろう。

「前世を記憶する子どもたち」イアン・スティーヴンソン (著)、笠原 敏雄 (訳)
「量子テレポーテーションのゆくえ」アントン・ツァイリンガー (著)、大栗 博司 (監修)、田沢 恭子 (訳)
「THE UNIVERSE IN A BOX 箱の中の宇宙」アンドリュー・ポンチェン (著)、竹内薫 (訳)
「量子力学で生命の謎を解く」ジム・アル-カリーリ、ジョンジョー・マクファデン (著)、水谷 淳 (訳)
「われわれは仮想世界を生きている」リズワン・バーク (著)、竹内薫 (監修)、二木夢子 (訳)
「量子超越: 量子コンピュータが世界を変える」ミチオ・カク (著)、斉藤 隆央 (訳)

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