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量子の神秘的な作用① ~2つの現実は同時に存在できる~

 現在の物理学は、アイザック・ニュートンによる運動・力学・重力の法則をもとに飛躍的な発展を遂げたとされている。しかし、ニュートンの決定論的な物理学では全く説明できないミクロの世界が存在することが明らかになっている。量子の世界である。そして、量子力学とは、万物を形成する原子や、その原子を形づくる粒子の性質を数学的理論として説明するものである。今回は、我々の常識に反する、神秘的ともいうべき量子の性質について考察する。


太陽のエネルギー放出のメカニズム

 地球上の全ての生命は、太陽によって養われている。太陽がエネルギーを放出する仕組みにも量子の神秘的な作用が関わっているが、まず太陽の性質について以下に簡単にまとめる。

【太陽の性質】
■天文学の分類
太陽は「恒星」である。
※恒星とは、自ら熱と光を出し、天球上の相互の位置をほとんど変えない星のこと。

■太陽の大きさ
直径は約139万キロメートル、地球の100倍以上と考えられている。

■太陽のエネルギー放出の仕組み
太陽は約70%が水素で構成されており、核融合というエネルギー反応によって、水素ガスを燃焼させ、熱と光を放出すことで光り輝けると考えられている。

■太陽のエネルギー放出量
1秒あたり4.3×10の26乗ジュール
これは、1秒間に月の質量の10倍もの石油を燃やした場合に出てくるエネルギー量に匹敵する莫大なエネルギー量。

太陽のエネルギー放出を可能にする量子トンネル効果

 以上のとおり、太陽は巨大な核融合炉のようなものであるが、量子トンネル効果という、驚くべき現象がなければ、核融合できない。量子トンネル効果とは、粒子が壁をすり抜けることである。ここで、まず太陽の核融合反応の過程を説明するが、太陽の核融合反応とは、水素の原子核である陽子がヘリウム原子核になることであり、以下の順で陽子が性質変化する。

【太陽の核融合反応のプロセス】
 陽子(水素)→  重水素  →  ヘリウム3 →  ヘリウム原子核

 太陽を含む恒星がエネルギーを放出できるのは、二個の水素原子核が融合し、電磁気放射という形態でエネルギー放射されるからであるが、二個の水素原子核は極めて接近しないと、融合ができない。しかし、二つはどちらも正の電荷を持っていて、同種の電荷は反発するため、近づくほど互いの反発力が高まる。融合するのに十分な距離に到達するためには、素粒子の壁が障壁になるのである。学校で習ったニュートンの物理学では、物体がレンガ壁をすり抜けることなど絶対に不可能なのだが、何と原子核は壁をすり抜けて融合してしまうのである。幽霊がコンクリートの固い壁をすり抜けるように、エネルギー障壁を通り抜けてしまうのだ。

宇宙に元素を発生させた量子「重ね合わせ」

 このように量子トンネル効果によって、太陽エネルギーが発生するのだが、それでは、太陽はどのようにして生まれたのだろうか。実は、宇宙を構成する元素の発生にも、また量子力学的効果が関わっている。量子には、トンネル効果よりも、さらに神秘的な性質がある。それは、量子の重ね合わせと言われる現象である。「量子重ね合わせ」とは、量子が同時に2通り、あるいは100通り、1万通りの振る舞いをすることができる現象だ。例えば、一つの量子が、タンゴのダンスを踊ると同時に、ワルツのダンスも踊っているという現象だ。つまり、二つの現実が同時に存在する。これは、我々が学校で習った古典物理学の常識には完全に反するものである。しかし、宇宙の元素の発生には、この量子の手品が関与しており、量子の重ね合わせという現象がなければ、宇宙を構成する元素ができず、現在の動物も植物も生まれることが不可能であった。
 ここで、宇宙の誕生時からの物質の生成過程を説明する。宇宙誕生から現在までの物質の生成プロセスは以下のように考えられている。

【物質の生成過程】
1)宇宙の誕生
 宇宙の誕生時には空間に一種類の原子しか存在していなかったと考えられている。
 存在していたのは、陽子・電子一個からなる、もっとも単純な構造の水素。
2)重元素の発生
 炭素、酸素、鉄といった、もっと重い重元素が発生。
 重元素は、水素で満たされた恒星で生まれたと考えられている。
3)生物の発生
 重元素が発生後、生物を構成するに至った。
 
 重元素は、水素で満たされた恒星で生まれたとされているが、それでは、その出発原料である重水素(重陽子)はどのように発生したのだろうか。重水素は、二個の水素原子核、すなわち陽子が接近し、結合することによって発生するとされており、発生プロセスは以下のとおりである。

【重水素の発生プロセス】
1)二個の水素原子核の接近
上述のように量子トンネル効果によって二個の水素原子核、すなわち陽子が十分に接近する。

2)ベータ崩壊
 全ての原子核は、陽子と中性子という粒子で構成されているが、どちらか一方の粒子が多すぎると、陽子・中性子の変換という調節が発生する。すなわち、ベータ崩壊というプロセスによって、陽子が中性子に姿を変え、中性子が陽子に姿を変える。二個の陽子の複合体は存在できないため、二個の陽子が一緒になるとベータ崩壊が発生する。そうすると、残った陽子と新たに生成された中性子が結合して、重陽子という複合体が生まれる。

 そして、ベータ崩壊の後に、重陽子がさらに核反応を起こして、炭素や窒素、酸素などの元素に含まれる、複雑な原子核を生み出している。
 ここで重要なポイントは、重陽子が発生できるのは、量子重ね合わせによって二つの状態を同時にとることが可能だからである。陽子が結合する際、それらの陽子の間に働く力が強くないため、通常なら結合できないところ、量子重ね合わせという現象によって、陽子と中性子をくっつけるための原子核の糊が十分に強くなり、結合が達成される。先の例えで説明するならば、もし陽子・中性子がタンゴのダンスを踊ると同時に、ワルツのダンスも踊っていなければ、つまり二つの現実が同時に存在していなければ、陽子と中性子をくっつける原子核の糊が十分に強くならず、陽子が結合できないのである。そのことは、多くの実験施設で何度も繰り返し確認されている。

新しい時空概念の探求

 私達を含む、全ての動植物が生きていけるのは、このような神秘的な量子の作用のおかげで、太陽が光り輝くからであり、重元素が発生したからである。粒子が壁をすり抜けるトンネル効果や、複数の現実が同時に存在できる量子重ね合わせなど、古典物理学では考えられなかった現象によって、宇宙が成立したということが判明した今、従来の西洋科学の時空の概念は崩壊したと言ってもよいだろう。今後は新しい時空概念が探求されていくことを期待したい。
次回の記事へ続く

※参考文献
「量子テレポーテーションで人間は転送できるか?」二間瀬敏史
「量子で読み解く生命・宇宙・時間」吉田 伸夫
「神の方程式 『万物の理論』を求めて」ミチオ・カク (著)、斉藤 隆央 (訳)
「量子力学で生命の謎を解く」ジム・アル-カリーリ、ジョンジョー・マクファデン (著)、水谷 淳 (訳)

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