身につける短編小説 #1|Strength

雑貨が並ぶ本屋は、いつ来ても少しだけ気分が上がる。
「ねぇ、見て!これかわいくない?」
友達の声に笑いながらうなずく。
おしゃれな文房具。
アンティーク調のマグカップ。
小さなアクセサリー。
かわいいものは昔から好きだった。
店の奥に並ぶ本を眺めていると、一冊の雑誌が目に留まる。
『おしゃれな人の部屋』
ページをめくるたびに、好きなものだけに囲まれて暮らす人たちの部屋が並んでいた。
「かわいい。」
思わず小さくつぶやく。
でも、そのあとに浮かんだ言葉は違った。
「でも、私には似合わないか。」
スタイルがいいわけでもない。
特別美人でもない。
好きなものはたくさんあるのに、それを堂々と好きと言えたことは、あまりなかった。
彼氏にも。
本当はもっと好きなものがある。
でも、「そんなの好きなんだ。」って笑われたらどうしよう。
そう思うと、少しずつ隠してしまう。
私が本当の私を見せていないのだから、彼が私を好きでいてくれる自信なんて持てるはずがない。
仕事も長続きしない。
友達は専門学校を卒業して、それぞれ好きな仕事を頑張っている。
私は今も実家暮らし。
休日は友達と遊んで、それなりに楽しい。
でも夜になると、決まって思う。
「私、このままでいいのかな。」
本棚に戻そうとしたとき、一冊の本が目に入った。
質問だけが並んでいる、不思議な本だった。
何気なく開いたページに書かれていた言葉。
「お金が余るくらいあったなら、あなたはどう使いますか?」
くだらない質問。
そう思った。
どうせ、お金なんてないし。
それでも、その本を買って帰った。
その日の夜。
ベッドの上で本を開き、ペンを持つ。
「かわいい本屋さん。」
書いた。
「カフェ。」
「花屋さん。」
「ジェラート。」
「アクセサリー。」
「本を読む人が集まる場所。」
「かわいい制服。」
「……かわいいビル。」
手が止まらなかった。
ページは、あっという間に文字で埋まっていく。
私は何もない人間だと思っていた。
何の取り柄もないと思っていた。
でも違った。
何もなかったんじゃない。
ずっと、自分に質問をしてこなかっただけだった。
その夜、生まれて初めて思った。
私は、自分のことをもっと知りたい。

BOUNDARIES
Amulet Series「Strength」から生まれました。




