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「感動した」はなぜ名言なのか

本の感想を書くときに、「感動した。ありがとうございました。」と書くことがある。

私にとっては最高級の賛辞のひとつで、至福の時間をくだすった作者に感謝するほかない時に使う。

でもこの言葉を使う時、いつもふと小泉元首相の顔が思い浮かぶ。

「感動した!おめでとう!」は、2001年の夏場所で、怪我を押して優勝した貴乃花に小泉首相が贈った言葉だ。当時大いに話題になった。いわゆる名言だ。

でもこれってなんで名言なんだろう。

感動した。

普通のフレーズだ。オリジナリティのかけらもない。

「天は人の上に人を作らず⋯」とか「人民の人民による人民のための⋯」とか「生きるべきか死ぬべきか⋯」なんかが、掛け値なしの名言というもののはずだ。

なのになんで「感動した」が名言になったんだろう。私だけかもしれないが、「感動した」は普通のフレーズであるにも関わらず、©がついている感じがするのだ。

他には例えば、いちいち説明はしないが、「地球は青かった」とか、「チョー気持ちいい」とか、「もう、やめて〜」などがあるが(なんだかいろんな意味でバラバラだが)どれも普通の言葉なのに©がついてしまっている感じがする。無許可で使ってはいけないことはないけど、フラットには使えないのだ。

この妙な感じは、英訳してみるとわかる。

I was moved. Thank you.
The earth is blue.
It feels amazing.(注1)
Stop it.

いかがだろう。中学生の英語の教科書の例文みたいではないか。無味乾燥この上ない。

逆に、英語で「なんでこれが名言なんだろう?」というものもある。

その代表格が、 I'll be back. だ。

ご存じない方のために説明すると、映画『ターミネーター』(1984)で、警察署に保護されているヒロインとの面会を断られたシュワちゃんが使う。引き上げたふりをして、警察署に車で突っ込んで、警察官たちを皆殺しにするのだ。

後年、シュワちゃんがシリーズ新作のプロモーションか何かで、この言葉をキメキメのドヤ顔で言っているのを見たこともある。革ジャン・グラサンでモノマネしている人も何人も見た。

でも当時から、そして今でも不思議なのだ。なぜこれが名言なのか、と(注2)。

シュワちゃんのルックスとか口ぶりとか、映像表現や特殊効果の見事さとかと相まってのことだろうとは思う。でも「また来る」とか「すぐ戻る」みたいな言葉を名言にしちゃっちゃあ、みんな困らない?と。

今まで普通に「すぐ戻る」って言ってた人が、なんだかシュワちゃんの真似をしていると思われないか気になって、使いにくくなったりしていないのだろうか。言いたくないのに無理に I'll return. って言ってみたり、とか。

あるいは I'll be back. って、フレーズとしてはシンプルだけど、日常生活ではあまり使われない組み合わせなのだろうか。例えば普通の大人が日常生活で「チョー気持ちいい」などとは言わないように。

ちなみに私の好きなこれ系の名言は、シェイクスピアの「ブルータス、お前もか」である。ブルータスは結構強めの言葉だけど、名前だからいいとして、「お前もか」だけで名言になっているのはすごい。

ちなみのちなみに、私の大好きなダジャレのひとつは、誰が考えたか知らないが「ブルータス、お前モカ。俺ブルーマウンテン」である(注2)。

あと、「ちなみのちなみに」は、斎藤清六さんの名言である。 というか、持ちギャグだけど。


注1. この訳はcopilot に出してもらったものだが、最初グーグル翻訳にかけたら、It's super good. と出た。こんな英語はないが、だからこそ原文のちょっとバカっぽい(失礼)ニュアンスをうまくとらえているとも言える。意図しているのなら(AI にそのような心理作用があるのかは知らないが)、グーグルすげえ。

注2. カイル・リースの Come with me if you wanna live. の方がカッコいいし、ジェームス・キャメロンも流行語大賞をねらっていたに違いない。でも当時まだちゃんと英語をしゃべれなかったシュワちゃんの何でもないひと言 I'll be back. の方が有名になってしまった。人生とはそんなものかもしれない。これはNASAがその総力を挙げて開発したとされる(?)「一人の人間にとっては小さな一歩だがうんぬん」が、名言としては「地球は青かった」の足元にも及ばなかったのに似ている。

注3. もちろんここで言うブルーマウンテンが好きな「俺」とは、今まさにブルータスに殺されようとしているカエサルである。最後の最後までユーモアを忘れない懐の大きな英雄の生き様を見事に表現している(?)。無粋かもしれない、というか深読みのしすぎかもしれないが、ここまで読み取ってた上でのおかしみが、このダジャレにはある。

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