見出し画像

【南インド旅行記②】 人生初の“手食”の洗礼

先生と私たちは、シンガポールからチェンナイ国際空港に降り立った。すぐさまチャーターしたワゴンバスに乗り込み、西へ180km先のティルヴァンナーマライを目指す。この先、何が待っているのかも想像できず、4時間の道のりに心だけがはやる。
途中で立ち寄ったレストランで、初の“手食”を経験することになった。密かに携行しているスプーンは、スーツケースの中だった。



注文と支払いを簡単にするため、「ミールス」と呼ばれる定食を全員でオーダー。ターリーと呼ばれる大きな円形トレーにバナナの葉が敷かれ、十個ほどの器(カトリ)に盛られたカレーやスープ、炒め物や和え物がずらりと並ぶ。中央には、全粒粉だろうか、ロティー(釜焼き)とチャパーティー(鉄板焼き)。そこへ給仕がやって来て、インディカ米をどっさりと盛った。

左手は“使わない”のが作法、頼りは右手のみ。最低限のマナーだけを頼りに、カレーで汁だくになったご飯を、見よう見まねで親指・人差し指・中指にまとめ、口へ運ぶ――はずがない。
ぱらぱらとこぼれ落ちる米がなんともうらめしい。蕎麦をすするように吸い寄せると、軽いインディカ米は気管へ一直線。むせる、むせる。

隣のテーブルのインド人を、しばし直視する。なんとも自然に、指先が口元へとご飯を運んでいく。目の前の汚れた小指から手のひら全体を見つめ、自分の不器用さにひそかに恥いる。

帰国してから調べてみると、テーブル上の共用のチャパーティーや器を取るときには左手を使ってもよく、禁じられているのは「食べる行為に左手を使うこと」だという。
どうこう言っても付け焼き刃の知識など、現場では何の役にも立たない。インドへ来る前に、もう少し学んでおくべきだった。


さて、腹ごしらえを終えると、一路ティルヴァンナーマライへ一直線。アルナーチャラ山の南麓にある「ラマナ・アーシュラム」を目指す。

いいなと思ったら応援しよう!