15歳のわたしへ
中学校、卒業おめでとう。
やっと義務教育終了だね。高校受験、お疲れさまでした。第一志望ではなかったけれど、公立高校に合格し、両親を安心させられて、ホッとしているところかなと思います。
今日はね、あなたを労いたくて筆を取っています。おつかれさま。本当に、よくがんばった。受験だけじゃなくて、いろいろ大変だったよね。きっと、学校に行きたくないなって思った日も、たくさんあったと思う。ちょっと他人事みたいに言ってみたけど、学校に行きたくない日も、あったよね。
急にお腹が痛くなって休んだ日もあったし、お母さんに怒られて、渋々、家を出て、泣きながら学校に行った日もあった。
始まりは、小学五年生の春。
東京から福岡に越してきたあなたは、胸を弾ませて学校に行ったよね。少し緊張しながら、初めて通る通学路をキョロキョロして歩いたことを、今でもハッキリと覚えています。狭い路地。慣れない風景。右も左もわからない街。初めての転校。とにかく緊張してた。新しい友達がたくさんできるといいなと思いながら、教室に入った。角の教室。少し古めかしい、焦げ茶のフローリング。大きな白いカーテン。転校生をじっと見つめる、たくさんの瞳。ハキハキとした挨拶。
自己紹介ができたと、胸を撫で下ろすあなた。
そこまでは、よかった。
上手くいくように願った転校。滑り出しはよかったんじゃないかな。でも、なかなか上手くいかなくて。思うようにいかなくて。
いつだったっけ。言葉遣いをからかわれたのは。
小学五年生にもなると、もう仲の良い友達は固まっていて、転校生のあなたには、なかなか友達ができなかった。東京から越してきたばかりのあなたは、もちろん博多弁なんか喋れなくて。標準語を話してたら「超〜〇〇じゃん」って話すのをバカにされたんだっけ。福岡だと「バリ、〇〇やん」。言葉って、難しい。急には変えられなくて、ホントに困った。それで、博多弁の練習したんだっけ。
小学生の頃さ、寝る時間が9時だったでしょ?
みんなは大抵、10時とか11時まで起きてて。なのにあなたは、9時に寝ちゃうから、みんなが見てる人気のテレビ番組が全然見れなかった。昨日見たテレビの話で、クラスのみんなが盛り上がってるのに、あなたはその話題に入れなくて。みんなの話を、じっと黙って聞いてるしかなかったんだよね。音楽番組も見ない家だったから、流行りの音楽の話にもついていけなくて。そのうち、それも、からかわれるようになった。
教室で座ってたら、あなたの周りでみんなが手紙を回してた。あなたは俯いて、茶色い机をじっと見てるだけ。そしたら、誰かの視線が頭に刺さって。視線の方に顔を向けたら、クラスメイトがあなたのことを見てて、くすくす笑ってた。どうしたのかなって思って様子を見てたら、折り畳まれた小さい手紙を、別の子に渡してるのが見えて。受け取った子は、またくすくす笑って。それがあなたの悪口が書いてある手紙だってわかった時、悔しかったし、悲しかったよね。それ以外にも、上靴を隠されたり、仲間外れにされたり。なんでそんなことされるのかがわからなかったし、悲しかったと思う。
お母さんにも、先生にも言えなくて、一人で考えながら耐えてさ。本当によく乗り切った。
いつだったか勇気を出して、「もっと遅くまで起きたい。見たいテレビがある」ってお母さんに相談して、あっさりダメって断られた時、すごくショックだったのを覚えてる。ダメな理由がよく分からなかったし、「お母さん、それは厳しすぎる」って、正直むかついた。その気持ちはよくわかる。だって共通の話題ができたら、みんなの仲間に入れると思ったんだよね。でも、それすら許されなくて、どうしようもなくて、悲しくて悔しくて。でもさ、実はね、9時に寝てたのは、お母さんが厳しすぎただけじゃなくて、ちゃんと理由があるんだよ。
今はまだ、知らないかもしれないから、ここだけの秘密にして欲しいんだけど。あなた、一歳の時に、かなり危ない状態になったんだって。結核だったらしい。生後半年で肺結核に罹患して、高熱を出したって、大人になってからお母さんに聞いた。めちゃくちゃ高い熱を出して、お母さんがおぶって病院に連れてって、そのまましばらく入院して。とにかく大変だったんだって。
ほら。見たことあるよね? 赤ちゃんのあなたが、病院にいる写真。あれは入院中の写真なんだって。私、その話を聞いた時にね、「へー。私って、生死を彷徨って生き返ったんだね!」みたいなことを冗談で言ったんだけど、そんな簡単な話じゃなかったらしくって、お母さんにマジで怒られた。そんなことがあったから、あなたの体を心配したお母さんが、元気にちゃんと育つまでは早寝早起きをさせて、健康な体を手に入れさせたいと思って、厳しくしてたんだって。今のあなたがそれを聞いたって、「元気だし、大丈夫だよ。心配しすぎ」って笑うだろうけど。親って、子どもの成長が心配な生き物だからさ。そのうち、お母さんの気持ちがわかるようになるよ。
ちなみに、安心してほしい。私は、今も元気です。手紙を書いてる私は、実は44歳なんだけど、大きな病気もせず、大好きなお酒も楽しめる健康体です。ほんと、両親には感謝してる。親孝行はできるうちにしないとね。ずっと元気でいてほしい。
大人になってから、お母さんに「実は小学校の時、いじめられててさ」って話をしたらね、「相談して欲しかった」って言ってたよ。ああ、そうなんだって思った。悲しそうな顔してた。でもさ、あの時は、なんて言っていいかわかんなかったし、自分でなんとかしたかったんだよね。お母さんを悲しませたくないって思ってたし。でも今はね、相談するのも大事だなって思うようになった。一人で抱え込むと、大変なことっていっぱいあるからね。頼れる人がいるって、ありがたいなって思う。これからは何かあったら、ちゃんと相談してください。大丈夫。みんな、受け止めてくれるから。安心して相談していい。
五年生の時は、そんな感じで、会話には入れないし、グループに馴染めなかったけど、六年生になったらちゃんと友達ができたよね。グループに馴染めない子は、自分だけじゃなかったって、安心したっけ。
今思えば、中学校もそんな感じだったかもしれない。なんだろうね、グループで行動するのって苦手だよね。でも、実は、大人になった今でも、相変わらずそんな感じです。
気を遣うのが、苦手なのかな。わがままなのかも。もう十分大人なのに、未だにそれは課題です。こうしたら上手くいくよって教えてあげられなくて、ごめん。でも、大人になるにつれて、そんなあなたのことを受け入れてくれる人が増えるから、そんなに心配しなくても大丈夫。
中学校の時もいろいろあったよね〜。なんだろうね、あの不思議な空気感。グループで一体になって行動しないとダメな感じ。リーダー格の子が右って言えば、右みたいな。それに恋バナが多くない? カッコイイ先輩の話とかさ。漫画の話とか誰もしてなくて、話題がズレてたら空気読めないやつに認定される的な。好きなものは好きで、苦手なものは苦手なあなただから、興味がない話題にノるのが苦手なんだよね。今でもそれは変わんないけど笑。20代前半まで、好きな四字熟語は四捨五入だったし。もっといい四字熟語、いっぱいあると思うんだけど。例えばね、あれ? すぐには思いつかないな。ちょっと考えるから待っててね。最後におすすめの四字熟語、教えるから。
でも、中学校の時は、小学校より喋れる人がいっぱいできたよね。部活もあるし、塾もあるし。面倒なこと言ってくる人はもちろんいたけど、世界が教室だけじゃないって分かったのは、安心できた気がする。そうそう、中学校の時って、毎日、日記書いてたでしょ。あれ、大人になったらインターネット上に書くことになるから。みんなが読んでくれる日記。すごくない? 世界って広いし、いろんな人がいる。自分の悩みなんて、ちっちゃいなって思える日が来る。絶対に。世界はすごいぞ。
そんなこんなで、あんまり楽しくない小学校高学年と、中学校生活だったと思います。でもね、高校以降は、結構楽しいと思う。高校生の時は、ダルダルのルーズソックス履いてコンサートに行ったり、カラオケ行ったり、インスタントカメラで写真撮ったり、プリクラ撮りまくったり。あ、思い出した! おねだりしてポケベル買ってもらうんだけど、家族で川遊び行った時に、ポケットに入れてたら水没させちゃうから、気をつけてほしい。もったいなかったな、あれ。
楽しい高校生以降の生活を過ごせたのも、嫌だった学校にあなたがちゃんと通って、勉強もしてくれたおかげだと思っています。ありがとう。ちなみに今は、しっかり社会人してるよ。実は、お母さんもしてる。大人って、いいよ。大変なこともあるけど、私は大人になってからの方が楽。生きやすくなった。楽しみにしててください。
長くなったので、このぐらいで。
マジで、中学校卒業おめでとう。本当に、お疲れさまでした。今はまだ、思い返したくないことばっかりだろうし、まだまだ振り返れないとは思うけど、自分を諦めずに踏ん張ってくれたこと、本当に感謝してます。ありがとね。
最後に、44歳の私からおすすめの四字熟語を。
焼肉定食、定時退社、昼呑最高。
それと、笑門来福。どんな時でも、笑顔を忘れずに。
こちらは、もうすぐ桜が咲きます。
満開の桜の下で、大切な人たちと美味しいものに舌鼓を打つ人生を選べたのは、あなたが歯を食いしばって、立ち続けた日があったから。不器用だけど、負けず嫌いなあなたのことが、私は大好きです。
そちらも、もうすぐ桜が咲きそうですか?
桜はね、千年も花を咲かせることもあるそうです。散ってもまた、来年も咲く。何度でも、何度でも、立ち続ける限り、ずっと。
