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あなたの画角に収まるのは、私だけでいい。

デート中に見せられた写真。

二つ折りの携帯電話に表示された、画質の荒い小さな画像。真ん中に写っているのは、私の知らない女の人。言っちゃ悪いけど、私より全然可愛くない。なんで、この子が彼の携帯の写真に写ってるの? 私は露骨に、口をムッと一文字にした。

「何その写真?」と彼に尋ねる。

「これ、仕事中に撮ったんだけど、コイツ、めちゃくちゃウケるのよ。めっちゃ不細工だろ? この顔」

彼は私に写真を見せながら、職場で爆笑した出来事を、楽しそうに語った。どんな話だったかなんて、もう覚えていない。他の子の話なんて、興味ないもん。でも、すごく楽しそうに話す彼の顔は、キラキラしてて可愛かった。それが余計にムカつくんだって。それにさ、彼はその場にいないと面白くない話があるってことに気づいてないみたい。私には、その話、全然面白くないんですけど。ホントに、笑えない。

「面白いのはわかったけど、わざわざ、変な顔を写真に撮らなくてもよくない? かわいそうだよ。相手は女の子なんだし。不細工だとかバカにして、写真に撮るなんて」
私はさらに口を尖らせた。

「何怒ってんの? 本人は嫌がってなかったし、アイツもウケてたよ。写真もちゃんと見せたし」

アイツ?
何、その距離感。まじでムカつく。デート中にする話じゃないよね。私、他の女の子の話とか、聞きたくないんですけど。それより私、今日おしゃれしてきてるし、メイクもバッチリなのに。まずは「かわいいね」って言うのが先じゃない? そっちに触れないとか、ありえない。

「ふーん」
とりあえず私は、つまんなさそうに返事をした。

可愛くない女の子にヤキモチを妬いて怒るのは、私のプライドが許さない。だから、はっきり怒ったりはしないけど。でも、面白くはないんだよね。知らない女の子の顔を見て、「面白いね」って笑えるだけの心の広さなんて、ごめんなさいだけど、持ち合わせてないの。心の狭い彼女でごめんね。

彼は、私の機嫌を損ねたのがわかったのか、「はいはい」と、携帯電話をポケットにしまった。


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ソファに座っていた彼が、スマートフォンをポケットから取り出した。二つ折りだった携帯電話は、20年の時を経て、大きなスマートフォンへと変化した。恋人だった私達の関係にも変化があった。今では彼は、私の夫。

ソファーの後ろから夫に目をやると、手の中の待ち受け画面が、ちらりと見えた。

あの頃とは比べ物にならない大きな画面には、今日の日付と現在時刻。そして、夫の推しメンの笑顔の写真。解像度が高いのに、毛穴の一つも見えないキレイな肌。私は横目で一瞥し、夫の推しメンの顔を確認した。心の中で、ふーんと呟く。私のタイプじゃない。かわいらしい女の子。私は綺麗系の女子がタイプだから、夫と女子の好みは合わないな、と思う。

夫の携帯電話の待ち受けに収まる女の子の顔を見て、昔、知らない女の子に嫉妬したことを思い出した。私は、夫のスマホの暗証番号を知らない。もしかすると、待ち受け画面以外にも、もっとたくさんの女の子の写真がスマホの中にあるのかもしれない。

待ち受け画面は、推しメンのスクショだったから許せたけど。これが、夫がカメラを向けて撮った写真だったら許せないかもしれない。私の知らない女の子を撮った写真が、夫のスマホのカメラロールに収まっていたら、きっと私は夫のスマホを折りに行く。ガラケーみたいに二つ折りに。そんなことを考えながら、知りたくないことは知らないままでいいと、静かに自分を説得した。「その子だれ?」とも聞かないし、夫のスマホには指一本触れたりしない。

でも、あなたの画角に収まる女は、ずっと私だけにして欲しい。私は、夫のつむじをじっと見つめた。









池松潤さんの #嫉妬祭り  に参加しています。
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斉藤ナミさんの婦人公論のエッセイを拝読して、嫉妬ってかわいい!という謎のムラムラを発症して、自分の中の嫉妬エピソードを探し出して書いてみました。

嫉妬をあんなに可愛く書けるって、すごい! 
書いてみたものの、私の嫉妬は全然可愛くなかった。人間性の違いだな。結局、あの時の嫉妬心は、夫の画角に収まった子が、メイクもしてなくて、オシャレにも気を遣ってなくて、なんであの子が写真撮られてんの!っていう嫉妬心だったんだなぁ。女心というのか、なんと言うか。

正直、あまり嫉妬はしない方かもと思ってたけど、掘り下げてみたら、案外してるかもしれない。今回、改めて嫉妬に向き合ういい機会になった気がする。でも、正直、嫉妬って面倒臭い。気にする時間がもったいないから、嫉妬したとしてもそれ以上考えないように、目線を別のことにシフトしてる気がしてる。

嫉妬と向き合って、ちゃんと消化して前に進んでる人は、かっこいいし、健気で、なんだかかわいいのかなって思ったりした。




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