外身と中身がとんとんになる
25歳の時、私の精神年齢は15歳だと言われてしまった。
ある週末、友人の家に遊びに行くと、彼女のワンルームに座り切れるのか心配になるほどの女性たちが集まっていた。友人が友人を呼び、その友人がまた友人を呼び、という具合に、10人ほどが集まっていた。その中の一人が、「面白いサイト見つけたんだ」と紹介したのが、精神年齢を診断するサイトだった。
さっそく一人ずつ、質問に答えていく。ほとんどの人たちの精神年齢は実年齢と同じ20代の半ばだったけど、たまに30代の人がいたりして、「大人だねー」なんて盛り上がった。みんなが診断し終わりパソコンを離れた頃、私も一人で試してみた。
質問を読み、直感で素早く答えていく。全ての質問が終わり、私の精神年齢が診断される。結果、15歳、と出た。この部屋にいるほとんどの人たちは、実年齢とほぼ同じかそれ以上の「社会人年齢」なのに、私だけまだ「中学生」。まずい。恥ずかしい。私は証拠隠滅ですぐに自分の結果を消し、最初のページへと戻し、キッチンにいる皆の中に混ざって、もとから居たかのように食事の準備を手伝った。
「ねー、精神年齢15歳って出てるんだけど、だれー?」
からかうような声で、誰かが部屋中に聞こえるように言った。みんなぞろぞろとパソコンの周りに戻ってくる。私も後からついていく。心臓が早くなっている。汗が全身の毛穴からじわじわと這い出てくる。犯人を探すように、誰もが周りをキョロキョロと見回している。私も同じようにキョロキョロしてみる。気づけば足の裏まで汗をかいている。靴下は履いてるけど、汗の跡が床に残ったらどうしよう。
しばらくたっても誰も名乗りでないので、しらけた空気が場を満たしつつあった。その時、キッチンに残っていた一人が「ご飯の用意、できたよー」と明るい声で叫んだ。気づくとおいしそうな匂いがキッチンからただよっている。一瞬にしてまた楽しげな空気が戻り、私はこっそり、詰めていた息を吐いた。ついでに、床に残った汗の後も足で消した。
あれから20年以上経った。恐ろしいのは、あの時15歳と判断された私の精神年齢は実年齢と共に上昇するわけではなく、むしろ下がりつつあることだ。
こんなことがあった。小学生になったばかりの姪とその友だち数人と公園で遊んでいた。落ちていた棒切れを拾い上げて近くにいた子どもたちとチャンバラを始めた私を、姪とその友だちが止めた。「ぼうをふりまわしちゃダメなんだよ。あぶないでしょ」と。正論だ。小学生に正論で説得されるとは。棒を捨てさせられ、しょんぼりと歩く帰り道。車が来ないことをいいことに、車道をふらふらと歩く私の手を取って姪が言った。「あぶないでしょ、ちゃんとこっち歩いて」。歩道へぐいっと引っ張られた。7歳の子に注意され、心配される私。精神年齢は一体何歳になっているのだろう。
このままおばあちゃんになったら、中身は乳児になっているのかもしれない。もう精神年齢が上がるのを期待するのはやめよう。外から見たらただのおばあちゃん、しかしその実態は乳児。上等だ。こうなったらボケてもボケなくても、大して違いはない気もする。ちょっと楽しそうだな、なんて思ったりする。
