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幽霊、2026年4月の仕事。

2026年4月の仕事はZAITENの連載コラムと、特集コメントがひとつ。

ZAITEN『時代観察者の逆張り思考』

2026年5月号は「瀕死の出版業界に倫理なき山師が集う」

「ZAITEN」5月号

第103回。
まだ出張中なので今月も見本誌を見ていないが、コラムのほうは、小学館マンガワン問題。

……とは言っても、事件自体は巷であまりにも言及されすぎているから、今更、言及すべきことはない。
小学館の企業体質とか、書こうと思えばいくらでも書けるのだが、経済誌の話題としては優先順位が低く、誌面では特集を組まないから、コラムで触れておいてください、という流れなので、小学館も含めた大手出版社での非正規雇用とそれに伴う編集現場のコストカットと治安悪化の話題になっている。
早い話が全方位爆撃。

「ZAITEN」5月号目次

しかし、作家への説明会など、事件の後始末に奔走しているマンガワンの新編集長、前任のガガガ文庫で、がおう問題(人気イラストレーターが未成年淫行を暴露系配信者に告発され、カバーデザインまで上がっていた新人賞作品が発売延期になった)の後始末が終わってようやく異動したら、今度はよりひどい性加害事件なので、ウド編が終わったらクメン編になっていたキリコ・キュービィー感がある。

サイゾー『過熱する過激表現か 脱マンガ不況の救世主か 「残酷表現」の現在地』

2026年5月号の「マンガ界を席巻する残酷表現」という特集記事で、珍しくコメント仕事をした。

「サイゾー」2026年5月号

取材に来た記者が若くて、いつもの調子で答えるとまずいことになりそうだったので、サブカルチャー的に話を盛って面白いことを言うより、訊かれたことに真面目に答えた。
本来は残酷表現大好き人間なのに、なんでこんな真面目で抑制的なコメントをしているんだ? と思ったが、自分も世代的に、この手の特集で常識的なコメントをする役回りになったのか、と。

以下は、取材を受ける前に、漫画の残酷表現の流れを整理するため、個人的に作ったメモ
深夜の現実逃避も兼ねて2時間で作ったので、細かいところは間違っているし、抜けている作品も多いはずだが、そのまま貼っておく。

「残酷表現でエポックメイキングな漫画作品」メモ

■70年代
さいとう・たかを、白土三平などのハードな劇画が残酷表現で人気を博し、少年漫画誌にも進出。
ギャグ漫画でも残酷表現が頻発し、こちらも問題となった。
▼ジョージ秋山『アシュラ』
→少年マガジン連載。平安時代末期、飢饉による地獄絵図からの人肉食描写で、神奈川県で有害図書指定された。
▼永井豪『あばしり一家』
→少年チャンピオン連載。初期の永井豪は人肉食や死体損壊などの残酷表現が頻発するギャグ漫画を得意としていた。
→デビュー当時、赤塚不二夫がその作風に苦言を呈していたが、その赤塚も70年代に入ると残酷ギャグ漫画になっていく。
▼古谷三敏『ダメおやじ』
→少年サンデー連載。残酷ギャグ漫画化した赤塚の影響下で描かれた、ドメスティック・バイオレンスが題材のギャグ漫画。

■80年代
青年誌からヤング誌が派生し、少年漫画誌の延長線上で暴力描写が過激化していく。
後半にスプラッターホラーブームが到来する。
▼武論尊・原哲夫『北斗の拳』
→少年ジャンプ連載。人体破壊描写が強烈な格闘漫画。
→80年代前半のジャンプは荒木飛呂彦『バオー来訪者』、巻来功士『メタルK』など、エログロバイオレンスの強いカルト作品が多く、後のスプラッターブームを準備した。
▼楳図かずお『神の左手悪魔の右手』
→ビッグコミックスピリッツ連載。スプラッターホラーブームに対する大御所の回答。
→このブームでホラー専門誌も多く創刊されたが、90年代に入るとエロ漫画と並んで有害コミック規制の対象になっていく。
▼岩明均『寄生獣』
→アフタヌーン連載。永井豪『デビルマン』以来のスプラッターホラーSFの大ヒット作。

■90年代
バブルが崩壊した中盤、「心の闇」と結びつける猟奇殺人ブームが本格化する。
▼山本英夫『殺し屋1』
→ヤングサンデー連載。青年誌のスプラッター残酷描写とアウトローものが本格的に結合していく。
▼沖さやか(山崎紗也夏)『マイナス』
→ヤングサンデー連載。サイコスリラー風ギャグ漫画だが、人肉食描写で掲載誌回収という事件が起きた。
→この時期、残酷表現はヤングサンデーが突出していたが、少年サンデーから来た編集長の手でそうした作品が排除され、結果、休刊に至った。
▼郷田マモラ『きらきらひかる』
→ミスターマガジン連載。女性監察医の人情ものだが、スプラッターな死体描写が頻発する。
→作者は2013年、女性アシスタントへの強制猥褻と傷害で逮捕。懲役3年、執行猶予3年の有罪判決となった。
▼大塚英志・田島昭宇『多重人格探偵サイコ』
→少年エース連載。緻密でスタイリッシュな絵柄の残酷表現で人気を博した、猟奇殺人ブームの大ヒット作。

■00年代
演出技術や描写力が底上げされるが、社会の貧困化と残酷表現が結びついた、陰惨な作品が増えた。
『進撃の巨人』など、少年誌のファンタジーやSFでも残酷表現が頻発するようになった。
▼真鍋昌平『闇金ウシジマくん』
→ビッグコミックスピリッツ連載。闇金が題材だが、猟奇的な暴力描写が頻発する。
▼南條範夫・山口貴由『シグルイ』
→チャンピオンRED連載。60年代に小説や映画でブームになった残酷時代劇のリメイク。封建社会の抑圧と苛烈な人体破壊を描いた。
▼諫山創『進撃の巨人』
→別冊少年マガジン連載。「人間を食べる巨人」と戦うダークファンタジー。

■10年代以降
漫画ジャンルの細分化とweb・アプリ化で、青年誌系にホラーサスペンスやクライムサスペンスが増える。
一方、残酷表現自体を主眼に置くエキセントリックな作品は減っている。
▼渡邊ダイスケ『善悪の屑』『外道の歌』
→ヤングキング連載。私刑代行の「復讐屋」を描くクライムサスペンス。
→猟奇的な残虐描写が多く、東京都から不健全図書に指定された。
→2019年に映画化されたが、主演の新井浩文が強制性交容疑で逮捕され、作者は即日公開中止を決定した。
▼二宮正明『ガンニバル』
→漫画ゴラク連載。限界集落(因習村)のカニバリズムを描く、ホラーサスペンス。
▼水谷健吾・蔵石ユウ・イナベカズ『食糧人類-Starving Anonymous-』
→eヤングマガジン連載。人肉食が合法化された世界を描くディストピアSF。
▼山本章一『堕天作戦』
→裏サンデー・マンガワン連載。残虐描写が頻発するダークファンタジー。
→作者は2025年、教え子の女子高生への性的行為強要で1100万円の賠償命令を受けた。

なお、取材を受けた次の日に、小学館マンガワン問題が大炎上した。
最悪のタイミングである。

附記徒然。

前回の月報以降もずっと忙しい。働かざるもの食うべからずだが。
サイゾーの特集記事が漫画の話題だったので、ふと思い出したのが、STUDIO VOICEの週刊少年ジャンプ特集号だ。

「STUDIO VOICE」vol.386/2008年2月号

STUDIO VOICEで週刊少年ジャンプの特集? しかも、80~90年代の黄金期メイン……?
元・編集長の西村繁男氏のインタビュー本企画に関わり、文化庁メディア芸術祭のサイトで荒木飛呂彦インタビューもしていたので、その流れだと思うが、何故か企画が通ってしまったのだ。

当たり前だが、編集長はそれほど詳しくはなかったので、編集会議の時点から筆者が差配することになったのだが、これがまたきつかった。
会議に来たライターが全員ジャンプ嫌いのサンデー好きだったからだ。
なんでそんなことになるんだよ、と思ったが、手配した編集長いわく「それなりに名のある漫画系ライターを集めたら、こうなってしまった」と。

『ジャンプ+』創刊以前……2008年当時はまだ、そういう時代だったのだ。マニアはジャンプを俗悪な雑誌と嫌い、衰退の一途を辿っているサンデーこそが正しい少年誌だと思い込んでいた。

なので、メイン記事の大半を一人で考えることになってしまった。
集めた以上は作業を振らないといけないので、できるだけ本筋ではないところは他の人に頼んだが、書評とかで選んでくる作品がジャンプ的でない(サンデーっぽい)ものばかりだったのでキレて、選び直す羽目になった。
あと、どの作品とは言わないが、サンデー的な少年愛が過ぎてジャンプでは速攻で打ち切られた愚作が紛れ込んだときは「おまえの特殊性癖なんて関係ねえんだよ!」とブチ切れていた。

当たり前だが、こんなことをやっていたら作業量はパンクするから、サブカル雑誌とはまったく無縁の担当作家や知人を片っ端からアシストに召喚して、対談記事やインタビューを作る無茶苦茶な事態に。

まあ、そんな苦労の結果、面白いものにはなったと思う。
企画書に書いて実現しなかったのは、徳弘正也先生インタビューとアニメ・ゲーム関連のいくつかだけで。
そして、作業量が多すぎたので、雑誌特集のレベルではない原稿料が振り込まれたのだが、二度とやりたくはないな、と思った。

あと、不愉快だったのは、実現しなかったアニメ・ゲーム関連の記事企画をあるライターが持ち出して、後に別の媒体で「STUDIO VOICEの特集は自分が考えました」と言わんばかりにやっていたことだ。
その記事で取材を受けた方から「まったく同じ内容をスタジオ・ボイスのときに更科くんから見せてもらったけど、どういうことなんだい?」と訊かれて判明したのだが。

雑誌の特集記事は集合知で作らなければならないし、サブカルライターの世界はそういう仁義なき世界だ、特にジャンルライターは既得権益を確保するため足の引っ張り合いだ、ということも分かっているが、これでつくづく嫌になった。
実際、翌年から体調不良で休業に入ったのだが。

そして、さっきのメモを公開したのはそういうことの防止、という意味合いもある。
世知辛い世の中だ。

附記徒然。そのに。

雑誌と言えば、たまたま、昔、関わっていたエロ雑誌について、ずいぶんといい加減な歴史語り記事を見てしまった。

その雑誌は休刊号で不祥事(?)があったのだが、不祥事が原因で休刊したのではない。
休刊号にワンマン社長の横暴による休刊への経緯を克明に書かれたので、版元が不祥事扱いにして喧伝したのだ。
普通は校了前に総務部が止めるはずなのだが、社内のチェック機構が機能していないことを暴露してしまったのだから、確かに会社にとっては不祥事だったのだろうし、実際、数年後、社長の杜撰な経営が祟って無惨な形で倒産している。
末期は狸穴町のロシアンバーで出会った実業家と意気投合して健康食品を売っていたが、あんなとこ昭和の頃から国際諜報員の巣窟だろうが。

そして、故郷の地方テレビ局の株を10%持っているとかなんとか自慢していた元社長も数年前、哀れな死を遂げたのだが、死んでくれたおかげでこうして書くこともできる。
長生きもたまには悪くない。

現在も続いている看板連載の移籍にしても、移籍先の雑誌の編集長が手を差し伸べたのではなく、休刊誌の編集長と移籍先の編集長が元同僚で、その人間関係から移籍先へ打診していた。
休刊誌の編集長は移籍先の編集長以外の元同僚とは不仲だったから、他に選択肢もなかったし、休刊の心配がない程度に売れている雑誌は当時、それくらいだった。
もっとも、その後、会長の息子がオンラインカジノを開帳していた件のついでに、警察の見せしめ的なガサ入れを喰らって休刊してしまったのだが、連載自体は兄弟誌へ移っていたので難を逃れている。

よって、ライターの悪意で因果がすべて逆になっているのだが、マニア界隈はいつもそういう悪意が事実より優先されるものなので、それ自体は特に思うこともない。
どちらの編集長も現在はそのジャンルから消えているので、情報源の段階でバイアスがかかっている可能性も高いだろうし。
二人とも、他の同僚たちからは蛇蝎の如く嫌われていたからね。
編集者でもないのに、編集者よりも出版社の事情に詳しいと信じて疑わない半可通が編集者に騙されるのもよくあることだ。

とはいえ、捏造された歴史が定説になるのは不愉快である。

サイゾーの連載はサブカルチャーの話題が多かったが、その連載が終わり、経済誌であるZAITENだとやっぱり政治経済の話題が多くなるので、たまにサブカルチャーそのものの話題を書く場所が欲しくなる。
興味で書くこともあれば、降りかかる火の粉を振り払うこともあるからだ。
しかし、そのたびに嫌なロビイストが跋扈する世界だと思い出して、だったら経済誌の門外漢でいいか、と思い直している。

金にならないマニアの世界は、自己顕示欲が肥大化した物好きしか書かないので、嫌なロビイストも跋扈する。
同じように金にならなくても、誰が読んでいるかも分からない、もっと薄っぺらい世界で孤高に書いているほうが、たぶん幸せだ。
そう思って、コラムニスト復帰後の11年を過ごしている。

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