書いていたら、ぶどうジュースが好きだった祖父にもう一度会えた気がした
最近、時間を見つけてはZINE(自作の小冊子)を書いている。地元のクリエイターさんと一緒つくる、貴重で初めてのチャレンジだ。お声がけいただき、とてもありがたいなぁと思う。
山口県内のクリエイターさん達や、地元で場をつくっている方達と出会うことも増えてきて、単純にうれしく思う。
日中は、ライターとして仕事している。
いろいろと書きながら思うのは、ライターの仕事では、インタビュー記事など他者の経験を書くけれど、ZINEでは自分の経験から書く点が違う。だからなのか、「これって読んでいて、どうなのかな?」などと考えることが少し増えていると感じる。
他者のエピソードについて書く際は、自然と客観的に捉えて書けるけど、自分のエピソードはそうでもなくなる気もする。だから、ふと筆が止まって考えることが多い。
でも、昨日久々に自宅に来た母が何気なく言った言葉で、少し肩の力が抜けた。
夏休み期間で「家族にご飯作るのも大変でしょ」と、複数の冷凍食品を持ってきてくれた母。本当に、ありがたい極まりない。経験者だからわかることなんだろうな、と心の中で手を合わせる。

久々に昼からたくさん食べた気もする。
母に、何気なくZINEを作っていることを話すと「ああ、昔から日記とか書くの好きだもんね。着眼点がおもしろいから、いいんじゃない」とも言った。「着眼点がおもしろい」は、たぶん良き意味だろうと受け取っておいた。
たしかに、普通の出来事を書くのが好きだったな。日々の何気ない会話や風景、出来事からアイデアが浮かぶ。アイデアといっても、特別なことではなくて、感じたことや共有したいこと、というイメージだ。
今書いているZINEは、「山口県、地域」をテーマにしている。地元の本屋さんには、ほかの方々がそのテーマで書いているZINEもあり、個性豊かに地元について表現されている。面白い。
一方で、生まれ育った山口県について、実はそんなに詳しくないかもしれない私。意外と近くのことって知らないものだな、と書こうとして気づいたのだ。
なので、年齢や立場が変わるにつれて地元の捉え方が変わっていく様子を、エッセイでストーリーにしてみようと思い、書き進めている。幼少期から大人になるまで、地元の山口県に対する感じ方の変化をそのまま書いている。
ZINEにすれば、少しクローズドになるからか、ニッチな地名やエピソードなどを書くハードルが下がる感じもある。地元で販売するから、おそらく地元の人がメインで読むことになるだろうし。これがまた、書いていて楽しい。
そんなことも母と話し、私が忘れている幼少期のことや、母が山口県や故郷の福岡県に感じていたこと、母の父である、祖父のエピソードを聞いた。ZINEを書くためのインタビューだな、とも思いながら、遠い記憶の中の自分や祖父と再会する。
その中で、私が学生時代、お盆に福岡へ帰省していたときに、祖父と私の両親、妹でバイキングに行った時のエピソードを聞いて、久々に大笑いした。「ここのぶどうジュースは美味しいから!」と、祖父が私たちに紹介してくれた店での出来事を。
祖父は、バイキングの食卓からぶどうジュースを注いで席に向かって歩いていたが、手元のジュースに気を取られていたのか席を間違えて、うっかり別の団体の席に座ってしまったというエピソードだ。
当然、その席に座っていた女性は驚いていた。(当時は祖父がびっくりさせてしまい、申し訳なかったです)
無理もない。いきなり見知らぬじいさんが隣に座ってきて、ご機嫌にぶどうジュースをゴクゴク飲みはじめるものだから。見つけた妹がすぐさま、「おじいちゃん!こっちだよ!」と叫んでいて、慌てて席に戻ってきた祖父と、私たち家族は大笑いした。
あのとき、少しギョッとしていた女の人の表情は今も忘れられないよねー、と母はゲラゲラと大笑いしていた。多分、当時のように。
そんなことがあったんだな、と私ももう一度大笑いした。そんなにたくさん笑ったのに、いつのまにか自分は忘れていたんだな、とも。
居酒屋を経営していた祖父は、普段はしっかりしていたけど、たまにうっかり抜けていたところもあった。
数十年の時を超えて、リビングで再び沸き起こった大笑いがおさまり、「亡くなってから、よくお父さんのことを思い出すもんよねぇ……」と、しみじみつぶやいた。母の言葉がやたらと印象に残った。
ドラマか本だったかな。昔、「死んだ人は目の前にいなくなっても、覚えている限り、生きている人の心の中で生き続けるんだよ」という言葉を聞いた。
その意味が、当時はピンと来なかったけど。こういう瞬間のことなのかなぁと、今少しだけわかった気もする。
きっと誰もが、誰かの心の中で生き続けるのだろう。そのときに残るのは、やっぱり言葉なのかな。それってすごいことだよなと思う。きっとそれは、「偉人だから、すごい人だから届く」のではない。
自分の言葉も、ふと他者に思い出される言葉があるのかな。だったら、なるべくなら良き言葉を、行動とともに残せたらいいなと思った日だった。
(祖父みたいに、大笑いされるエピソードでもいいけどね)
こんなささいなエピソードも、ZINEに書いてもいいのかなぁ。でも書くのは楽しいな。私っぽいし、普通なら疲れるはずなのに元気が出る。
……などと、考えるこの頃だ。ひとまず、今は楽しんで書いていこう。
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