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予測不能な運動嫌いの無職脱出計画

僕は基本的に「未来は予測できない」という考え方を持っており、これはナシーム・ニコラス・タレブの『ブラック・スワン』を読んだ影響が大きい。

株式投資の本ではあるが、人生においても非常に重要な示唆を得られる一冊なので未読の人はぜひ読んでみてほしい。

この本の帯に書かれているコピーは「ありえない、なんてありえない!」と印象的なものであり、世の中の歴史を振り返っても、自分の人生を振り返っても、やっぱりありえないことがたくさん起こっていることを痛感する。

僕にとって最初の「ありえない」は就職活動を始めたばかりの時にリーマンショックが起こったことで、その次が東日本大震災が発生したことだった。そしてその4カ月後に、僕は23歳にして胃がんの告知をされてしまった。

世界でもトップクラスに安定した経済大国である日本に住み、危機感を持たずにのうのうと暮らす若者だった僕は、この3つの「ありえない」を経験したことで極めて現実的な考え方を持つ様になる。「人生は困難の連続だ」と。そうしないと生きていけない気がしたのだ。

社会が急速に変わりつつあるなか、手術で胃を全摘出した僕は結局のところ会社を辞めてしまい、長い闘病期間に突入する。禁酒禁煙で食事も摂れない、それでいて無職なのだから有り余るほど時間を使える状況にあった。

そんな極めて異例とも言える状況において、僕はジョギングを始めた。暇だからと言うのもあるが、運動をすると少し体調が上向いたことと食事量がほんの少し増えたことが大きな理由だ。当時の僕は完全インドア派であり、汗と涙がキラキラ輝く体育会系の青春物語を嫌悪しているほどだったから、人生わからないものである。

禁酒禁煙で食事をしない、無職で運動嫌いな若者がジョギングを始めると、酒でもタバコでも食事でもなく、走っている時に短時間訪れる強い快感に依存するようになるらしい。いわゆるランナーズハイという現象だ。

それからはあれよあれよいう間に走行距離が延びていき、一年後にフルマラソンを完走してしまった。時間は6時間7分と相当遅いが、完走は完走である。

そして「フルマラソン完走」というのは、健康と挑戦のシンボルのような側面があり、無職だった僕が社会復帰をする時の採用面接において大いに役に立ってくれた。病気で前職を退職していると現在の体調を必ず質問されるが、今はもう元気でありフルマラソンも完走したと伝えると、一定の信頼を得られるうえに面接での話題も盛り上がるようになる。こうして僕は内定を勝ち取り、何とか正社員としての社会復帰を果たしたのである。

思えば、胃がんの告知をされた時には、そもそも未来を予測することなどできなかった。死んでしまうと思っていたからだ。

そう思うと、こうして生きているだけで「ありえない」わけで、ましてや、運動嫌いだった自分がフルマラソン完走を通して会社員をしているのも「ありえない」。

タレブが『ブラック・スワン』で書いている通り、人生は「ありえない」の連続だと思う。これからも気を引き締めて生きていきたい。


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