【日本が貧しくなった本当の理由】第57章:「芝生の上のため息」
第57章:「芝生の上のため息」
接待ゴルフ。
社交の場。
取引先と、同じ方向を見て歩く時間。
クラブを振りながら、
仕事の話を、少しだけやわらかくする。
月に一度。
四カ月に一回。
それくらいの、小さな楽しみ。
空が広い。
芝がやわらかい。
風が、顔をなでる。
日常の数字から、少しだけ離れられる。
贅沢だと言われれば、そうかもしれない。
でも。
それは、豪遊じゃない。
ただの、人付き合い。
ただの、息抜き。
ただの、関係づくり。
「この前の件、よろしくお願いしますよ」
冗談まじりの会話。
カートの中での、ささやかな本音。
ラウンドを重ねるうちに、
距離が、少しだけ縮まる。
契約書では作れない、空気。
それでも。
精算のとき。
さらっと、数字が乗る。
ゴルフ場利用税。
気づかないように。
当たり前のように。
静かに。
一打一打、芝を打つ。
そのたびに、
心は少し軽くなる。
でも、
レシートを見ると、
また少し、重くなる。
息抜きくらい、いいじゃないか。
仕事のためでもある。
関係をつなぐためでもある。
ただ、少し整えるだけ。
それなのに。
また、削られる。
自分のお金が。
でも、それ以上に。
「贅沢だから仕方ない」と、
まとめられてしまうことが、
少しだけ、心を削る。
あなたは、悪くない。
怠けているわけじゃない。
仕事を円滑に進めるために、
関係を大切にしているだけ。
それだけなのに。
芝生の上では、風が優しい。
でも、現実は優しくない。
スコアカードの横に、
また、数字。
ため息が、
風にまぎれる。
それでも、また行く。
また笑う。
また、働く。
その繰り返し。
だからこそ。
ほんの少しだけ、
胸が、うるっとする。
