【日本が貧しくなった本当の理由】第55章:「ほろ酔いの数字」
第55章:「ほろ酔いの数字」
お酒が体に良くないことは、知っている。
飲み過ぎは、だめだ。
翌朝、少し後悔することもある。
それでも。
人間は、理屈だけでは生きられない。
飲み会。
普段は言えない本音。
少し砕けた言葉。
笑い声。
あの瞬間だけ、上下関係がゆるむ。
距離が、ほんの少し縮まる。
仕事の歯車じゃなくて、
人間に戻る時間。
今日も、残業がきつかった。
上司の言葉が、胸に刺さった。
締切に追われて、呼吸が浅くなった。
やっと終わった。
家に帰る。
コンビニに寄る。
小さな缶を、ひとつ。
ほろ酔い。
飲み過ぎない。
酔いすぎない。
ただ、少しだけ。
心を整えるための時間。
それだけで、明日も頑張れる気がする。
レシートを見る。
そこにも、数字。
酒税。
さらに、その上に、消費税。
税金に、税金。
どういうこと?
意味が、少し分からない。
難しい言葉では、二重課税。
違法じゃない。
制度上は、問題ない。
でも。
違法じゃないからといって、
胸が、すっと納得するわけじゃない。
ほろ酔いの裏で、
静かに、数字が重なる。
一口ごとに。
一杯ごとに。
少しずつ。
贅沢しているわけじゃない。
逃げているわけでもない。
ただ、今日を終えるための儀式。
ただ、明日へ進むための、小さな潤滑油。
また、削られる。
使えるお金が。
でもそれ以上に、
「整える時間」にまで、
数字がついて回ることが、
少しだけ、心を削る。
あなたは、弱くない。
ただ、人間なだけだ。
人間には、
少しだけ、緩む時間が必要だ。
その時間の片隅に、
また、静かに数字が乗っている。
それを知ったとき、
胸の奥が、うるっとする。
