超掌編小説「一日に二時間だけの恋」#なんのはなしですか

「一日に二時間だけの恋」
仕事の関係上、どうしても深夜に帰宅する日々が続いていた。誰も
「おかえりなさい」
とは言ってくれない家。
ひんやりとした人けのない部屋で、私はスマホに手を伸ばす。少し酔ってはいるけれど、それでも一日の中で一番楽しい私の極上な時間を過ごすために。
酔い足りない日は冷蔵庫のチルド室でキンキンに冷やした缶ビールを開ける。肴はベビーチーズかキムチ。それでも350の缶ビールを空けるには充分過ぎる贅沢な肴だ。
私はお気に入りの作家の記事を読みながら、その言葉に恋をする。時には賛美のコメントを書き、返信をもらえると心が喜びに震える。
そして、私は自らも拙い小説を書き始める。あっという間に時は経ち、時間は二時間と十分を過ぎていた。
「しまった!」
そう思った時は遅かった。闇を裂くようなサイレンの音を響かせながら、パトカーが我が家の前に止まった。
「ああ、これで何度め?」
私はチャイムの音がする玄関の扉を開いた。
「二時間以上スマホを使いましたね。連行します」
制服の警官に従いながら、私は今日もパトカーの中の人になるのだった。
2025年、愛知県 豊明市で可決したスマホ二時間以上使用禁止条例は2030年に法律に変わった。それを破った者は即座に逮捕監禁される。
私は今度こそ、引っ越しを決意した。恋と創作の自由を得るために。
了
あくまでもフィクションです(笑)
愛知県 豊明市で可決されたスマホ条例に寄せて。
確かにスマホ依存症の人々は増えている。でも未だに精神科医からの実例は上げられていない。眼科医はスマホの使い過ぎによる視力低下を呼びかけてはいるが、それはパソコン、勉強のし過ぎでも表れる症状でも同じだ。だが、スマホに寄る交通事故が絶えないのは事実だ。もちろん人の命より尊いものはないと私は思う。
でも、もしかしたら、この時間制限のせいで、かえってゲームへの課金が急激に加速するかもしれない。
家族との団欒のため?一人暮らしの人は?スマホで親族、友人、知人とコミュニケーションをとっている人達は?
「個人情報」「プライバシー」が叫ばれている日本で、自己責任に任せる事は出来なかったのだろうか。
市長さんが、ご自分が一日にどれくらいスマホを使っているか答えられなかった市なのに?(苦笑)

みんないい
