義両親へのご挨拶 #マスクドnote2 _5

咲へのプロポーズが、結婚への最大関門のはずだった。しかし、咲の実家へ初めて出向いたとき、それは覆された。
ぐるりと囲まれた高い塀。
切れ目のない監視カメラ。
瓦屋根付の鋼鉄の扉。
そしてこちらを睨みつけるスーツの男。
表札には「今藤」の文字。
え、えぇ!?
マップの住所はここだ。
苗字も合ってる。
大きい家だと思っていたけど、この玄関。
どうみても、8・9・…
「失礼ですが、そこの方」
急に呼び止められた。振り向くとスーツの男のひとりがこちらに歩み寄ってくる。
「は、はぃ…」
「今藤家に何か御用でしょうか?ご回答によっては、それなりの措置を取らせていただきますが?」
言葉遣いは丁寧だが、目は全く笑っていない。
本物だ。下手なウソをつくよりも、本当のことを話すしかないだろう。
「こ、今藤咲さんとお付き合いさせていただいている、中川翔と申します。ご両親に挨拶に伺ったのですが…」
男が一瞬驚いた表情を見せた。
これはただでは帰れない。
すると、男は急に柔和な表情を見せた。
「ああ、咲お嬢の!お待ちしていました。伺っています。さぁ、中へどうぞ」
ガガガ…
鋼鉄の扉がゆっくりと開く。
「中川様、ご到着です!」
「ようこそ、おいでなすって!」
20人ほどの屈強な男達が母屋へ続く道の両サイドで、直立不動で並んでいる。その先には、にやにやしながら待つ咲の姿があった。
「ちょっと、どういうこと?」
「見ての通りよ、さ、こちらへどうぞ」
やはり。
とんでもない子にプロポーズしてしまった。
しかもひとり娘だ。婿養子になった暁には、ってえぇぇ!?
混乱する俺を咲が両親のもとへ案内した。
体格のいいお義父さんと、咲似のスラっとしたお義母さん。
「やぁやぁ、お待ちしていました。はじめまして。今藤巌です。こちらは妻の幸。以後お見知り置きを」
「は、はじめまして!中川翔です!」
俺は声を裏返しながら頭を下げた。横で咲が笑っている。
「ハハハ、まぁそう緊張なさらず。どうぞお座り下さい」
俺はカチコチになりながら席につく。
咲が横でクスクス笑って、お義父さんに目配せをした。
「ほう、勘違いさせたかね」
「な、なんのはなしですか?」
「私の正体のことだよ。実は、建築業なんだ」
「…へ?」
「外にいたのはうちの職人。娘の彼氏を見たいと集まったんだよ。でも、しっかりした真面目な青年だな。今後とも咲をよろしく」
それを聞いて腑抜けた俺を、咲は声を上げて笑うのだった。
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