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ありがとうジャポニカ。

先日、残念なニュースを目にした。

生き物や草花の写真でおなじみのジャポニカ学習帳が、表紙を一新し、昆虫の写真を掲載するのを取りやめるという。

理由は「昆虫が苦手な子どもや保護者の方も手に取りやすいように」とのこと。



このニュースは、丸山宗利さんのXで知ったのだが、丸山さんといえば学研の図鑑『昆虫』を監修した方でもあり、わが家にとってはヒーローのような存在である。

丸山さんが監修されたこちらの図鑑はすごい。
昆虫を生きたまま撮影し、掲載しているのである。


それがどんなに大変なことか、想像してみてほしい。歩く、飛ぶ、跳ねる。わずかな接触で羽根が痛む、中には1mmにも満たない小さなものもいる。

それら全ての昆虫を生きたまま撮影するなんて、これまでの昆虫図鑑からは考えられなかったそうだ。それまでの昆虫図鑑は『昆虫標本』、つまり死んだ昆虫の写真によってつくられていた。

でも丸山さんは「昆虫が一番きれいに見え、手にとった印象で調べられるように」との想いで、生きたまま掲載することにこだわったそうだ。


その奮闘や舞台裏については丸山さんの著書からも伺い知ることが出来た。


この図鑑が発売されてすぐ、息子は嬉しそうに、ずっしりと重い宝物を抱えるようにして書店を出た。わが家にある図鑑の中でもナンバーワンの厚みと重みを誇っているのがこの昆虫図鑑である。


カブトムシやカマキリ、カミキリムシにセミ。
大好きな昆虫のページを繰り返し繰り返し開いた。

どれも鳴き声が聞こえてきそうなくらい生き生きとして、カマキリの瞳の色なんかはこれから狩りをするかのように鋭く光っている。

「昆虫の中には死ぬと色が変わるのがいるんだよ」
 と息子に教えてもらった。丸山さんの想いと息子の想いが繋がっているようで、昆虫好き同士に通じるものがあることを嬉しく思った。



息子の夏は、昆虫に始まり昆虫とともにある。

セミの声が聞こえてくるよりもずっと前から、玄関には虫かごによる昆虫マンションが建設され、夏中スイカやゼリーの甘い香りが漂う。虫取り網をかまえて散歩に出かけては様々な昆虫を捕まえて、図鑑を広げて種類を調べるのがわが家の夏の風物詩となっている。


昆虫たちの蠢きが一番盛んな時期を過ぎ、大事に育てていたカブトムシやクワガタが死んでしまった後は、図鑑に書いてあるやり方を参考にして昆虫標本をいくつも作った。

息子が昆虫にそそぐ視線は愛情深く、ワクワクの塊みたいなものだった。




だからこそ。

ジャポニカ学習帳の昆虫が表紙のノートは、親子共にとても嬉しいものだった。文房具店の棚からノートを引っ張り出し、それが昆虫だったら当たりくじをひいたような気持ちになれた。

写真家の山口さんが撮影された昆虫の写真はいずれも、自分が昆虫の仲間になったみたいに、リアルでダイナミックだった。

近頃は花の写真のものが多く、実は昆虫が表紙になっているノートは探すのに苦戦していた。


私も息子も、昆虫写真の表紙があったらそれを選ぶ。
だけど花の写真しかなければ花のものを選んでいた。


では逆の立場ならばどうだろう?


昆虫が苦手な親子がノートを買いに来て、昆虫表紙のものしかなかったら?
……きっとその日は買うのをあきらめるか、別のメーカーのノートを選ぶだろう。


ジャポニカ学習帳の表紙がイラストに変わり、昆虫の写真が消えることもしかたがないと納得せざるを得ない。その方が、たくさんの子どもたちが手にとりやすいんだろうな、と思う。

だから、「昆虫の写真をなくさないで!」というつもりはない。



それよりも。
これまで長きにわたって息子を楽しませてくれたジャポニカ学習帳と、写真家の故・山口進さんに、ありがとうを伝えたい。


息子の大好きなものにずっと寄り添ってくれて、どうしても集中できない授業の合間に、昆虫の世界を垣間見せてくれたノートに、母としてお礼を言いたい。


興味がない人にとっては、知らない間に消えてなくなるだろう昆虫表紙のジャポニカ。消えたところで困ることもないかもしれない。

でも、わが家にとってはワクワクの始まりを予感させる大好きなノートだった。



息子が大きくなった時、「ジャポニカの表紙って昔昆虫の写真だったよね?」なんて、同じような仲間と思い出話に花が咲くといい。

それを聞いた誰かが「いやいや花の写真だったよ」なんて言うのかもしれない。

令和生まれの誰かが「ジャポニカの表紙って昔写真だったの?イラストじゃなくて?」と言い出したら、きっと楽しいだろう。




最後に、昆虫の魅力をたくさん教えてくれて、このニュースをXでシェアしてくださった丸山さんに、感謝の気持ちを贈ります。




▼図鑑についてはこちらでもご紹介しています


▼昆虫マンションや捕まえた昆虫たちのレポ



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