明けにぎり、夕むすび #マスクドnote企画 _17

なんとか全員追い出した。
コンビニを出ると、空の端が氷みたいな薄青になっていた。夜明け前の街をとぼとぼ歩いていく。
ひとりきりだった19歳の誕生日。
22時過ぎたころ、同じ学部の女の子から「今日誕生日やんね? 今からお祝いに行っていい?」とメールが来た。すぐに快諾した。
集まったのは学部の陽キャな男女8人ほど。
ほぼ話したことがないザッキーがコンビニのケーキを買ってきた。サトリナがろうそくを刺し、かっちんが部屋を暗くする。13畳のワンルームにバースデーソングが響く。友だちに祝ってもらうなんてはじめて。感動してた。──あのときまでは。
「マジよかったわぁ。今日、泊まるとこないかと思った」
ザッキーが笑ったとき、わかった。わかってしまった。お祝いなんかじゃない。泊まる口実だったんだ。
夜明け前に全員を起こした。文句を言われたが「急いで実家に戻らないといけなくなった」と嘘をついた。
いくつも乗り換えをして、飛行機に飛び乗った。
コンビニで買ったおにぎりは、海苔がぱりっとしていた。
突然帰ったわたしに両親は驚いていたが、深く理由を尋ねられることはなかった。友だちに会おうという気も起きず、近所の公園をぼんやり歩いた。七竈の実が房になって落ちている。近くに住んでいる子がほぼおらず、いつもこの公園でひとりで過ごしていた。
あのときからわたしは、何も変わっていないのだ。
あっという間に帰る日になった。飛行機が離陸する。ふるさとの暗い夜が、少しずつ遠くなっていくのを見ていたら、視界がじゅわりと滲んだ。
となりに座った男性がサンドイッチを食べている。母におにぎりを持たされたのを思い出した。アルミホイルで包まれたおにぎりは海苔がふにゃりとしていた。硬めに炊かれたお米が甘い。
中身はわたしの好物ばかりだった。
「早く着替えて!」
炊飯器に残ったごはんに乾燥わかめと自家製の鮭フレークを混ぜ、おにぎりメーカーのくぼみに詰める。ぎゅっと蓋で押し込んで、皿の上にぱかっとひっくり返すと、同じかたちのおにぎりが、ころんと6つ、顔を出した。
「ママのおにぎり、おいしいねえ」
手でつかんでぱくぱく食べる子どもたちに手拭きを配っていたら、そう言われた。毒気が抜ける。にぎったのでもなく詰めただけでなんだか申し訳ない気持ちになる。
子どもたちを追い立てるようにして、家を出た。習いごとの開始時刻まであと10分。
西の空が、焼き鮭みたいにおいしそうだった。
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