レモンスカッシュは恋の味
せりふ三題噺の企画参加作品
まえがき
勇気を出すタイミングは、人それぞれ違う。
でも、その一歩が遅れたとき、恋はどんな味になるのだろう。
これは、少し遠回りした恋の物語。
新幹線に乗り、僕は東京へと向かっていた。
昨日、勇気を出して思い人を公園に呼び出した。
告白するつもりだった。けれど、結局その言葉は口から出なかった。
彼女は少し怒ったような顔で言った。
「行ってませんね。」
あの教授の講義のことだ。
彼女が熱心に通っていた講義に、僕は一度も顔を出していなかった。
僕なりの理由はあった。
でも、それを伝えるより先に、彼女との間には見えない距離ができていた。
桜の花びらが風に舞っていた。
その光景を見ながら、僕は思った。
――ああ、四年間の想いも、こんなふうに散ってしまうのか。
新幹線の中で、僕はレモンスカッシュを買った。
ひと口飲むと、甘さの中に、きゅっとした酸味が広がる。
まるで恋みたいだ。
少し甘くて、少し苦くて、そして、どこか切ない。
そういえば――
彼女が見送りに来ていた気がする。
気のせいだと思っていたけれど、足元に置いた紙袋が目に入った。
いつの間にか渡されていたらしい。
中を開けると、帽子が入っていた。
昔、「似合うね」と笑ってくれたことのある、あの帽子だった。
帽子を手に取ると、ひらりと一枚の手紙が床に落ちた。
拾い上げて読む。
――あんた、ばかじゃない。
四年間も待ってたのに。
告白もしないで東京に行くなんて。
もう、知らない。
今度帰ってきたら、あの桜の木の下に来て。
ちゃんと、やり直しなさい。
……待ってるから。
胸の奥が、じんわりと熱くなった。
僕はもう一度、レモンスカッシュを口に運ぶ。
さっきよりも、その味は――
ずっと甘く感じた。

あとがき
遠回りしてしまった恋でも、終わりとは限らない。
少し遅れても、言葉にできなかった想いが届くこともある。
レモンスカッシュのように、
甘さと酸っぱさが混ざり合うからこそ、
恋は忘れられない味になるのかもしれない。
せりふ三題噺のお題に書かせて頂きました。
期限が過ぎましたけど、素敵なお題でしたので書いてみました。
お題をありがとうございます。
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