君の見つけたもの
せりふ三題噺の企画参加作品
【まえがき】
子どもの頃、図鑑を開きながら、
「ほんとに恐竜っていたんかな…」
そんなことを考えたことはありませんか?
今回のお題は、
「ほんとにいたんだって!」
長靴、ネモフィラ、骨。
青い花が咲く裏山で、
ひとりの青年が夢を追いかけます。
【本文】
僕は毎日、裏山へ登って発掘作業をしている。
なぜこんなにも骨に惹かれるのか、自分でもよくわからない。ただ、土の中に埋もれたものを見つけるたびに、胸の奥が熱くなるのだ。
昨日の雨で道はぬかるんでいた。僕は長靴を履き、裏山へ向かう。
道の脇にはネモフィラが咲いていた。淡い青色の花が風に揺れている。その美しさに思わず足を止め、スマホで写真を撮った。
裏山に着くと、僕はいつものように土を掘り返した。
石、木の根、小さな欠片。
何時間掘っても成果はない。
ふっと顔を上げると、太陽は真上近くまで来ていた。
もう昼か。
僕は木陰に座り、母の作ってくれた弁当を広げた。卵焼きを口に入れた時だった。
おしりの下に、ごつっとした感触があった。
僕は慌てて身体をずらし、土を払った。
――骨だ。
それも、かなり古い。
僕は弁当を横に置き、その骨を慎重に眺めた。
これは、もしや……。
恐竜の骨では……。
胸が高鳴る。
今までの苦労が報われた気がした。
いや、まだ結論を出すのは早い。
研究室へ戻り、教授にも見せなくては。
僕は母の弁当をほとんど残したまま、大学へ向かった。
研究室の扉を開ける。
教授は、なぜか僕が来ることを知っていたように微笑んだ。
「で、君の見つけたものは?」
僕は白い包み紙に大切に包んだ骨を差し出した。
教授の目が、一瞬だけ鋭く光る。
そして、にやりと笑った。
「これは、もしや……」
教授は骨を手に取り、静かに言った。
「“ほんとにいたんだって!”という君の仮説を、この骨が裏付けることになるかもしれない」
僕は思わず息を呑んだ。
教授は続ける。
「そして、君の通うあの裏山には、まだ多くの恐竜の骨が眠っている可能性がある」
僕は拳を握りしめた。
だが、その直後だった。
「……だが、残念だ」
教授は小さくため息をついた。
「あの場所は、世界的に有名なネモフィラの聖地として登録されたんだよ」
僕は言葉を失った。
教授は静かに骨を見つめていた。
僕はスマホを取り出した。
そこには、風に揺れるネモフィラの写真。
しばらく見つめたあと、
僕はその写真を静かに削除した。

【あとがき】
夢を追いかけることと、
大切な景色を守ること。
どちらも間違いではないからこそ、
人は時々、立ち止まるのかもしれません。
もし、あなたなら――
ネモフィラを守りますか?
それとも、骨を探しますか?
せりふ三題噺のお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。
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