金髪に染めた日
せりふ三題噺の企画参加作品
タイトル 金髪に染めた日
僕はいつも引っ込み思案で、おどおどしている。
牛丼を頼む時も、「ねぎ多めで」と心の中では叫ぶのに、口には出せない。だから僕は、一度も“ねぎ多め”で食べたことがない。
こんな僕から脱皮したい。
そう強く思った。
ネットで「自分の殻から抜け出す方法」を検索すると、“見た目を変える”という言葉が目に飛び込んできた。
服装。髪型。髪を染める――。
僕は決意した。
「金髪にしよう」
いつもの美容院ではなく、遠く離れた田舎の美容院へ行った。
「金髪にしてください」
僕が小さな声で言うと、初老の美容師さんは少し驚いた顔で、
「本当に、金髪にしていいんですね」
と聞いた。
「は、はい。お願いします」
鏡の中で、少しずつ髪が染まっていく。
今までの僕が変わっていくような気がした。
「どうですか?」
美容師さんにそう聞かれ、僕は鏡の中の自分に向かって、小さく言った。
「はじめまして」
美容院を出て振り返ると、店の看板の下に、小さな文字が書いてあった。
“人生も髪も変わる”
僕の人生、変わるかな。
帰りの船のデッキで、風に吹かれながら、僕は少しだけ変われた気がした。
夕焼け色の空に、金髪の髪が揺れていた。

せりふ三題噺のお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。
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