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雀荘の夜

毎週ショートショートnoteの企画参加作品

まえがき
運に見放された男が、ひと晩だけの幸運を掴む。
けれど、その夜の勝利は何をもたらしたのか——
“女かタイ風”という謎の選択をめぐる、昭和の香り漂う一篇です。


本文
サラリーマンの今垣は、雀荘にいた。
最近の今垣はついていない。
妻からのこづかいも底をつき、もう後がない。

——今夜こそ勝って、妻に誕生日のプレゼントを買いたい。
その一心で、牌を握っていた。

雀荘のマスターが言った。
「今夜は“女かタイ風”か、選んでくれ。」

「女かタイ風? それってどういう意味なんだ?」
今垣は首をかしげた。

マスターの話では、
最近ひいきにしているスナックのママに頼まれたという。

今垣は笑って言った。
「俺には待ってる妻がいるから、当然“女”だろ。」

マスターはニヤリとして言う。
「おいおい、真面目に言ってるのかい?」

今垣は軽く笑い返した。
「じゃあ、“タイ風”にしとくよ。」

その夜、つきが回ってきた。
負けを取り返し、少し余裕ができた。
——欲をかかない方がいい。

そう判断した今垣は、
夜の街をあとにした。

ネオンの灯りが消えかけた路地を、
ひとり歩いていく。

手には、「タイ風」を持って。
(389字)


あとがき
“タイ風”が何を意味していたのか、誰も知らない。
でも、今垣の背中には、不思議な風が吹いていた。
——それは、
ほんの少しだけ人生の“運”を取り戻した男の、
静かな夜風だったのかもしれない。
※この物語はフィクションです。

毎週ショートショートnoteのお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。


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