砂の光
🍊第25回 3つのお題
🎈お題①:「透明な朝の音」
🐾お題②:「明日へ歩く影」
⏳お題③:「消えない砂時計」
【まえがき】
3つのお題——
「透明な朝の音」「明日へ歩く影」「消えない砂時計」。
どれもむずかしいはずなのに、
言葉をそっと並べた瞬間、
ひとつの世界が静かに動きはじめました。
フランソアとおばあちゃんの、
小さくてあたたかい魔法の物語です。
心のどこかに、静かな光が灯りますように。
【本文】
透明な朝の音が、そっと一日のはじまりを知らせた。
起きなきゃ。学校に遅れちゃう。
フランソアは、目の見えないおばあちゃんと二人暮らし。
お父さんとお母さんのことは、物心つく前から知らないままだった。
でも、おばあちゃんはいつも朝ごはんを用意してくれる。
目玉焼きの柔らかさまで、毎日まったく同じ。
それがフランソアの小さな自慢だった。
「おばあちゃん、おはよう。
今日は“消えない砂時計”の魔法のテストなの。
できるかな……。最近ずっと失敗ばかりで、ちょっと不安なんだ。」
おばあちゃんは、ほほえみながら言った。
「フランソア、自分の力を信じるんだよ。」
どうして目が見えないのに、
こんなにやさしい味を作れるんだろう。
フランソアはいつも不思議だった。
「おばあちゃん。
“消えない砂時計”の魔法が使えるようになったら、
自分の過去も呼び戻せるんだって。
もしできたら……おばあちゃんの目が見えていた頃に、戻したいな。」
おばあちゃんは、少しだけ寂しい笑顔を浮かべた。
「そうかい。ありがたいけど……あまり嬉しくないね。」
「え?どうして?」
「人にはね、思い出したくない過去というのがあるものなんだよ。
それより、自分のことに魔法を使いなさい。」
「自分のこと……。
私ね、お父さんとお母さんに一度でいいから会ってみたいの。」
おばあちゃんはこくりとうなずいた。
「いつかきっと、あなたを迎えに来てくれるよ。」
「ほんとう? ……でも、来ないかもしれない。」
フランソアの足もとには、
“明日へつづく影”がゆっくりのびていた。
学校へ向かう道で、空から
砂の光がきらきらとふりそそぐ。
(私のお父さんとお母さん、いつ迎えに来てくれるんだろう。
おばあちゃんの“思い出したくない過去”って何だろう……。)
そんなことを考えていたら、
いつのまにか学校へ着いていた。
教室では、みんながテストに備えて魔法の練習をしている。
床には、なぜか蛇やカエルやアヒルがうろうろ。
黒板ではチョークが勝手にラブレターを書いていた。
今日は、“消えない砂時計”の魔法のテスト。
フランソアはうまくできるだろうか。
そして、魔法が見せてくれる“消えない時間”とは、いったい何なのか。
窓の外では、今日も静かに——
砂の光だけが降りそそいでいた。

【あとがき】
3つのお題から生まれた世界は、
フランソアという少女の心の中にやさしく広がりました。
親を知らずに育った子どもの不安と願い。
おばあちゃんの過去にある、そっと伏せられた記憶。
そして、“消えない砂時計”が見せてくれる時間の魔法。
いつか、この物語の続きをまた書く日が来るかもしれません。
その時は、今日ふりそそいだ“砂の光”が、
またフランソアの道を照らしてくれるはずです。
読んでくださり、ありがとうございました。
※この物語はフィクションです。
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