見出し画像

木魚の気持ち

毎週ショートショートnoteの企画参加作品

お題「木魚感想文」から生まれた物語です。
少し不思議で、でもどこか心に残る「木魚の声」を描いてみました。



本文
大きなお寺の住職が木魚の注文にやってきた。
「少々値がはってもいい」とのこと。
それならと欅で作ってもらいたいと注文を受けた。
久しぶりの大口の注文に、職人の口元がほころぶ。
欅は扱いにくいが、仕上がりは満足できるものになるだろう。
納期は一か月後。その間にあと複数の注文があれば、今月も赤字から抜け出せる――。
ちょうどその時、電話が鳴った。
今度は家庭で使いたいという依頼で、白木の木魚を勧めた。
安価で軽く、日常に寄り添える一品だ。
作業場には、さまざまな種類の木魚が並んでいる。
その中に、ひときわ存在感を放つ桑の木魚があった。
値段は到底一般の人が手を出せるものではない。
バブルの頃に特別注文されたが、バブルがはじけ、代金を支払えないまま引き取られず、今もそこに鎮座している。
桑の木魚は、長い沈黙を破って心の奥でつぶやいた。
「私は高価すぎると言われ、誰にも叩かれずにここにいる。
でも、私の価値をお金だけで決めてほしくない。
叩いたときの響き、手に伝わるぬくもりで判断してほしい。
まだ私の音は眠っているのだ。」
その声はやがて「木魚感想文」として形を取り、人々に届くようになった。
「価値とは何か」「心に響く音とは何か」――。
木魚のつぶやきは、読んだ人の胸に沁み、涙を誘った。
やがて、作業場の片隅に「木魚感想文コーナー」ができる。
訪れた人はそこで、木魚たちの声に耳を傾け、心を揺さぶられるのだった。
(589字)

イラスト:ChatGPT

あとがき
「価値」とは何で決まるのか。
木魚の声を借りて書いてみると、人の生き方にも重なる気がします。
読んでくださった方の心にも、ほんの少し響けば嬉しいです。

毎週ショートショートnoteのお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。


いいなと思ったら応援しよう!

片桐 みかん よろしければ応援お願いします😊これからも続けていく”未来の種”になります。よろしくお願いします。(❁´◡`❁)