私、どろんします
アマノ文筆クラブの企画参加作品
まえがき
かくれんぼは、
探す側より、隠れる側のほうが有利だと思っていた。
あの日までは。
私、どろんします
押入れの中で、
「私、どろんします」と息子に言って隠れている。
おかしいな。
かくれんぼをしているはずなのに、探しに来ない。
まさか、もう終わってる?
押入れの扉を、ほんの少しだけ開けた。
……いない。
また、ほんの少し開ける。
やっぱり、いない。
押入れの中から勢いよく飛び出すと、
「はい、お母さん、みーつけた。」
「あ、やられた……」
息子は、いつも知能犯だ。
私はいつも、息子に騙される。
おやつを食べながら言ってみた。
「なぁ、あんた、ずるいでー。
お母さんの心理を逆手にとって。」
息子は、何でもない顔で答える。
「僕、何も考えてないよ。
ただ、お母さんが出てくるのを待ってるだけ。」
そして、さらっと追い打ちをかける。
「それにしてもさ、
お母さんの作るパン、いつも固いね。」
話題を、パンにすり替えられた。
うーん……
我が息子ながら、あっぱれだ。
「お母さん、もうかくれんぼで押入れは、
僕の記憶回路に習得済みやから。
次は、健闘を祈るよ。」
……完敗である。

あとがき
かくれんぼは、
いつの間にか、立場が逆転していた。
子どもは、
親が思っている以上に、
よく見ていて、よく待っている。
今日も私は、
押入れの中から、
一つ賢くなった気がする。
……次は、どこに隠れようか。
アマノ文筆クラブのお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。
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