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携帯電話川に落としたよ

アマノ文筆クラブの企画参加作品

まえがき

誰にでも起こりそうで、
でも起こってほしくない出来事。
寒い川と、冷えた視線と、
それでも続いていく音楽の話です。


本文

僕は川のほとりを歩いていた。
音楽を聴きながら。

小さな石ころに躓いて、ふらっとしたその時、
自転車が僕の手をかすめた。

その瞬間、
携帯電話が宙を舞った。

つかもうと手を伸ばしたけれど、
次の瞬間、
僕の身体と携帯電話は、
一緒に川の中へとダイビング。

頭からびしょぬれになりながら、
それでも僕は、
携帯電話だけを握りしめていた。

川辺で見ていた子どもが言った。
「携帯電話、川に落としたよ」

一緒にいた母親が、少し驚いた声で言う。
「なんで、こんな寒い日に川になんか……お気の毒さま」

そのやりとりが、
僕の耳には、なぜか悲しく響いた。

僕だって、
携帯電話を落としたくて落としたわけじゃない。

その時、
携帯電話から音がした。

……よかった。
壊れてないみたいだ。

音楽の音が、
だんだん大きくなる。

🎶
携帯電話 川に落としたよ
笹舟のように 流れていったよ
🎶

僕の心も、
あああ……


あとがき

落ちたのは携帯電話。
濡れたのは身体。
でも、いちばん冷えたのは、
人の視線だったのかもしれません。

それでも音楽は止まらず、
今日もどこかで流れ続けています。
※この物語はフィクションです。

アマノ文筆クラブのお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。


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