すすきの町
虹色創作部の企画参加作
まえがき
秋の海の中道海浜公園を歩いていると、
風に揺れるすすきがまるで語り合っているように見えました。
今日はそんな情景から生まれた、小さな秋の物語をお届けします。
本文
青い空の下に、すすきの町がありました。
すすきたちは、毎日やってくる風に話を聞くのです。
「今日はどんなことがあったの?」
風は得意げに言いました。
「今日はすごいことがあったんだよ。」
すすきたちは白い穂を揺らしながら尋ねました。
「何があったの?」
すると風は、ひとり眠そうなすすきに声をかけました。
「そこの君、聞きたくないの?」
「ごめんなさい、夕べお薬を飲んだら、まだ眠くて……」
「どんなお薬?」と他のすすきたち。
「うーん、なんだったかしら。思い出せないの。
でもね、袋に“若返りの薬”って書いてあった気がするの。」
すすきたちはざわめきました。
「それ、どこでもらったの?」「誰が作ってるの?」
質問があちこちから飛び交いましたが、
眠そうなすすきは首をかしげました。
「それがね……思い出せないのよ。」
すすきたちはがっくりと肩を落とします。
それを見ていた風が言いました。
「あ、それなら僕、知ってるよ。」
すすきたちは一斉に白い穂を風に向けました。
風は胸を張り、声を弾ませました。
「その若返りの薬はね——」
すすきたちは息をのんで次の言葉を待ちました。
ところが風は急に顔をしかめて言いました。
「あ、ごめん、急用が入っちゃった。また今度ね!」
そして、どこかへ吹き去ってしまいました。
すすきの町には、もやもやとした風の残り香と、
白い穂が揺れる音だけが残りました。
ほら、見えるでしょ……
秋の光の中に、すすきたちの笑い声が。

この写真からイメージして物語を作ました。
あとがき
「若返りの薬」は、もしかすると“夢”や“希望”のことかもしれません。
何かを信じて、今日も風にゆられながら生きていく。
そんなすすきたちの姿に、
どこか自分たちの暮らしが重なって見えました。
※この物語はフィクションです。
虹色創作部のお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。
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